今日は、犬塚弘さん(1929年3月23日~)の91歳の誕生日です。おめでとうございます。クレージーキャッツの一員(ベース担当)として活躍しましたが、70年代以降は俳優として、山田洋次監督の『男はつらいよ』やテレビドラマなど、本格的に活動されました。(画像は左最上段が『飛び出せ!青春』右隣が『クレージーメキシコ大作戦』その下が『クレージー作戦 くたばれ!無責任』その下が『クレージー黄金作戦』より)
犬塚弘とは誰だ
ハナ肇とクレージーキャッツは、これまでこのブログで何度かご紹介していますが、1955年に結成したジャズ・バンドです。
それが、バラエティ番組で頭角を現したことで、1960年代は映画、テレビ、舞台など、音楽以外の活動によって一世を風靡しました。
最盛期には、ハナ肇、植木等、谷啓、犬塚弘、桜井センリ、石橋エータロー、安田伸の7名でグループを構成しました。
ただ、犬塚弘を含めて、メンバーは比較的育ちの良い方が揃っていて「ドタバタはあまり好きでなはい」ことと、そもそもお笑いが本職ではなかったことから、ピークと言えるのは1960年代までで、1970年代に入ると、メンバーは個別の活動にシフトしました。
その中で、犬塚弘は舞台俳優として一から出直してみたいと劇団の入団を希望。
それはかないませんでしたが、所属事務所はナベプロという大樹から離れ、舞台の仕事に実績を持つ小さな事務所に移籍しました。
山田洋次との出会い
『
最後のクレイジ-犬塚弘ーホンダラ一代、ここにあり!』(講談社)によると、俳優犬塚弘を育ててくれた人物として、『男はつらいよ』の山田洋次監督を挙げています。
実際に、『男はつらいよ』には準レギュラーで出演しており、渥美清存命中の最終作となった『男はつらいよ 寅次郎紅の花』では、最後の締めくくりシーンで、寅次郎をイヤイヤ乗せるタクシーの運転手として出演。
クレージー時代から巧い方でしたが、そこでも遠距離を嫌がる素っ気ない素振りを見せながらも、結局はのせてくれる実は気のイイおじさんにリアリティがあり、作品を盛り上げました。
犬塚弘が山田洋次監督と出会ったのは、ハナ肇主演の馬鹿シリーズです。
山田洋次監督は、『男はつらいよ』を撮る前は、ハナ肇主演で、『馬鹿まるだし』『いいかげん馬鹿』『馬鹿が戦車でやってくる』という、馬鹿シリーズ3部作を世に送り出しています。
ここでいう「馬鹿」というのは、愚直とか、打算や他人の評価などを計算しないなど「バカ正直」という意味ですが、犬塚弘はそのすべてで助演をつとめています。
馬鹿が戦車でやって来る
ネットのレビューを見ると、3部作の中では『
馬鹿が戦車でやって来る』(1964年、松竹)がいちばん評価が高いですね。
サブ(ハナ肇)は、発話障害で発達障害の弟・兵六(犬塚弘)と、耳の遠い母親・とみ(飯田蝶子)との3人暮らし。もともと小作でしたが、農地改革で自分の土地を持てました。
しかし、村人たち(小沢昭一、菅井一郎、田武謙三、小桜京子、天草四郎)は、特に悪気があるわけではなく一家を“汚れ物”扱いします。
イジメと同じで、誰かいじめられっ子を作っておくことで、自分がその立場になることから逃れているわけです。
地主だった仁右衛門(花澤徳衛)は、とみを騙してサブ一家の土地を巻き上げますが、腹の底から怒ったハナ肇は、旧陸軍のタンクを走らせ、村中の家屋を破壊。
復讐を遂げてスッキリしたサブでしたが、そんなとき、犬塚弘は鳥の真似をして火の見やぐらから落ちて死んでしまいます。
ハナ肇は犬塚弘を戦車に乗せてそのまま海に入り、姿は杳として知れない、という話です。
自己保身で、いわれのない差別をよしとする大衆。善良な“下々の人々”を相手にあくどいことをする地主。
現代においても、この構造は変わらないと思います。
この『馬鹿が戦車でやって来る』には、山田洋次イズムともいうべき風刺の精神がよく表現されていると思います。
このような深いモチーフの作品と出会い、犬塚弘は山田組における役者生活を求めるようになったのだと思います。
飛び出せ!青春
山田洋次監督ではないのですが、私の好きなドラマを再度ご紹介します。
『
飛び出せ!青春』第12話は、以前もご紹介しました。
音楽の教育実習生(水沢有美)が来る話です。
音楽教師(犬塚弘)は、オケの指揮者になりそこねたデモシカ教師でしたが、ガラクタ呼ばわりされていた落ちこぼれの生徒たちが、ギターをうまく弾けるようになったことに感極まり、「音楽とは音を楽しむものなんだ。これが音楽というものなんだ」と、自分も諦めず前向きに生きることを決意するストーリーです。
主題歌を歌う、青い三角定規も出演。『太陽がくれた季節』と『青春の旅』を歌っています。
『飛び出せ!青春』第12話より
『青春の旅』の最後の2小節は、いつ聴いても胸にぐーっと染み入って前向きな気持になれます。
すばらしいグループでしたね。
犬塚弘さんはすでに昨年引退宣言をされたそうですが、これからもずっとお元気で長生きしていただきたいと思います。
犬塚弘さん、覚えていらっしゃいますか。
最後のクレイジー 犬塚弘 ホンダラ一代、ここにあり! - 犬塚 弘, 佐藤 利明
馬鹿が戦車(タンク)でやって来る - ハナ肇, 岩下志麻, 小沢昭一, 東野英治郎, 山田洋次, 山田洋次
確か新仕置人にゲスト出演してたな、いずれ記事にします(笑)
by pn (2020-03-23 11:51)
『男はつらいよ 寅次郎紅の花』は観ていないんです。
どうしても若かりし頃の車寅次郎ではないので…。
自分の考えを見直して『寅次郎紅の花』を観てみようかな。
『馬鹿が戦車でやって来る』も観たくなりました。
by tsun (2020-03-23 12:31)
寅さんシリーズで良くお見かけした俳優さんですね。時代の流れの速さを感じます。
by ヤマカゼ (2020-03-23 12:54)
こんにちは。
犬塚弘さん、91歳!!誕生日おめでとうございます。名脇役ですが、クレージーキャッツメンバーイメージが強いです。「馬鹿が戦車でやって来る」の映画を観ていませんが、内容を読むと風刺以上の「悲しみあるラストシーン」と感じます。観終わって考えさせられる映画と推測です!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2020-03-23 15:12)
犬塚弘さん 雑居時代にも阿万里(杉田かおるさん)の父親という設定で出演してました。ドタバタ芸人のイメージがありますがシビアな演技もできるいい役者さんです。
by tomi_tomi (2020-03-23 16:04)
とても優しい小父さんのイメージでした。
by ヨッシーパパ (2020-03-23 19:20)
ひょうひょうとして独特の味わいのある方でしたね。
by そらへい (2020-03-23 19:56)
名前は覚えて無いのにああ、この方がと思う俳優さんです。
巧いからなんだろうな
by mau (2020-03-24 00:31)
一世を風靡した方が未だにお元気なところを見るのは、嬉しくなりますね。
by ナベちはる (2020-03-24 00:39)
名前は覚えてませんでしたが、良く覚えている方です。でもクレージーのメンバーは7人もいたんですね。
あらためて、よくこれだけの個性派人材が結集したな~と思ってます。
by kou (2020-03-24 14:00)