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赤と黒 (原作/スタンダール、作画/バラエティ・アートワークス) [文学]

赤と黒 (原作/スタンダール、作画/バラエティ・アートワークス)

赤と黒 (原作/スタンダール、作画/バラエティ・アートワークス)をご紹介します。19世紀前半のフランスを舞台にした小説で、野心的な若者ジュリアン・ソレルの、社会的昇進と恋愛を描いています。




まんがで読破シリーズ(全59巻)の、第12巻として漫画化されました。

スタンダールの『赤と黒』は、木こりの息子であるジュリア・ソレルが主人公です。

彼は、高い身分ではないので、ナポレオン・ボナパルトの生き方にあこがれています。

ナポレオンは、貴族ではなく軍人でしたが、王政(封建社会)のフランスで、国家の近代化を実践。

ヨーロッパ各国に影響を与えた歴史的人物です。

ジュリア・ソレルは、高い身分でなくても、自らの努力と情熱で世界の頂点にたったナポレオンは、「人生は生まれや階級で決まらないということを示してくれた」と、尊敬しています。

本作のタイトル「赤と黒」とは、ナポレオン将軍の「赤い軍服」と、身分のあるものの着る「黒い服」のことです。

つまり、「赤」とは、身分社会を否定し、実力でのし上がる価値観を意味します。

王政復古した、つまり「黒」の時代に戻ってしまったフランスで、また「赤」としての立身を考えたジュリア・ソレルの野心、情熱を描いた心理的かつ社会的な小説です。

ジュリアン・ソレルの野心と挫折



物語は、ナポレオン・ボナパルトが没落し、フランスが王政復古、つまり封建社会の時代に戻ったところから始まっています。

材木業の息子であるジュリアン・ソレルは、端正な顔立ちで、学力も高い野心家の人物。

しかし、下層階級の出身のため、王政復古により武勲による立身の望みを失いました。

そのジュリアン・ソレルは、レナール町長の息子の家庭教師として雇われます。

ジュリアン・ソレルは、最初は乗り気ではアリませんでした。

神学校で僧侶になり、貴族と同等の扱いを受ける司祭を目指すつもりだったからです。

「『赤』の時代が終わったのなら、司祭の『黒』で頂点に立つ」と考えたのです。

ジュリアン・ソレルは、町長夫人とフリン関係に陥り、自分はイケてるんだと自信をつけます。

しかし、ジュリアン・ソレルを好きだった使用人がヤキモチをやき、2人の関係を密告したために、ジュリアン・ソレルは町長家にいられなくなります。

そして、当初の志通り、神学校に進みます。

その才智で成績はよかったのですが、校長が副校長との派閥抗争に敗れ、校長派だったジュリアン・ソレルも巻き添えを食らい将来の道が絶たれます。

その校長の紹介で、今度はパリのラ・モール侯爵の鞄持ちになりますが、やはり何が何でものし上がる、という意気込みが奏功したか、ラ・モール侯爵の娘のマチルドは、そんなジュリアン・ソレルに夢中になります。

そして、2人は関係。

ラ・モール侯爵は、爵位を手に入れ、婿であるジュリアン・ソレルに与えます。

ついにジュリアン・ソレルは、正真正銘の貴族になってしまいました。

しかし、ここでまたしても神学校の仕組んだ罠にかかり、トラブルを起こしてしまいます。

侯爵ですから、陪審員の買収も造作もないことでしたが、土壇場で彼はプライドからそれをひっくり返してショ刑されてしまいます。

要するに、個人の努力や能力が、社会的差別の壁や、他者の妨害などに負けてしまったという話です。

王政復古のフランスにおける身分社会の矛盾を描く


身分や階級社会という矛盾は、いつの時代も形を変えて人間社会に存在します。

紀元前のインドでは、ゴータマ・シッダールタ(釈迦牟尼)が、自分は安泰の身分(王子)なのに、当時の封建社会(カースト制度)に疑問を抱き、それが仏教開祖へとつながりました。

しかし、ヒンズー教の台頭で、結局現在のインドにもカースト制度は残りました。

弁護士だった、アメリカのエイブラハム・リンカーン大統領は奴隷社会に反対。「人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、われわれがここで固く決意することである」という民主主義の基礎を主張。

しかし、バイデン政権下でも、人種差別問題は依然としてアメリカ社会の中でくすぶっています。

日本では、下級武士の子弟として「士族階級の壁」に悩んでいた福沢諭吉が、アメリカの出自にとらわれない社会に触れ、「天は人の上に人を作らず」の名言を残し、明治維新以来の近代化に影響をもたらしました。


しかし、日本は1945年まで、華族と士族は戸籍にも記されて優遇され、現代は格差社会という、身分よりも狡猾なピラミッド社会が形成されています。

人と人の間の差別は、もう人類の永遠の課題なのかもしれません。

ということで、この「まんがで読破」シリーズ、これまでに、

レ・ミゼラブル、舞姫、破戒、古事記、阿Q正伝、平家物語、斜陽、学問のすすめ、おくの細道、明暗、西遊記、千夜一夜物語、罪と罰、銀河鉄道の夜、ヴェニスの商人……

など、もう和洋名作を10冊以上ご紹介してきました。

名作、名著といわれるものは、いずれも時代を超えた普遍的なモチーフであるため、現代の読者にも多くの示唆を与えてくれます。

人や社会へのものの見方を、より奥深いものにしてくれる、これら名作の原作はどのくらい読まれましたか。

赤と黒 (まんがで読破) - スタンダール, バラエティ・アートワークス
赤と黒 (まんがで読破) - スタンダール, バラエティ・アートワークス
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mm

この赤と黒は読みました。ストーリーはしっかり覚えていないのですが、赤と黒が階級を示していると言うことを感じた一冊でした。
by mm (2024-04-25 06:44) 

夏炉冬扇

畑に行くと、いつも鳴きます。来たぞ、と言ってるんでしょうね。夫婦仲いいですよ。道路で車にひかれた相方のちかくの側壁に、ずっととまっているのなぞ見ると胸が震えます。

by 夏炉冬扇 (2024-04-25 06:54) 

mayu

人間社会は、時代を経ても変わらないと感じます。
by mayu (2024-04-25 07:56) 

猫またぎ

人間に欲がある限り、
世の中大きく変わる事はないですね。
紹介された本ほとんど読んでいません。

by 猫またぎ (2024-04-25 11:10) 

pn

題名知ってたけど内容知らなかったf^_^;
身分や地位はあった方が良いんだろうけど責任がついてくると嫌だから平民でいいや(笑)
by pn (2024-04-25 12:10) 

ムサシママ

恥ずかしながら全部読んでいません
人は生まれた時から差別に晒されていると思っています
差別が酷いかそうでないかの違いで幸不幸が決まるのでしょう
by ムサシママ (2024-04-25 15:00) 

コーヒーカップ

差別、人種差別は聞いていて辛いです。
そういう自分もどこかで差別意識はあります。


by コーヒーカップ (2024-04-25 16:54) 

そらへい

高校生の頃、読みました。
ジュリアン・ソレルの燃えるような野心に
胸を熱くしたのを覚えています。
by そらへい (2024-04-25 20:19) 

tai-yama

今の時代だと身分の差よりは派閥の差が大きいかも・・・
もう少し待てばナポレオン3世の時代だったのに。
by tai-yama (2024-04-25 22:17) 

mau

差別、ありますね
by mau (2024-04-25 23:44) 

赤面症

ハッピーエンドでないのが現実的でイイ(-_-)
by 赤面症 (2024-04-26 00:54) 

ミケシマ

スタンダールの赤と黒、実家にありましたが読んだことがなかったです。
こういった名著がシリーズで家にあって、シェイクスピアなども読んでみましたが、自分には難しくて諦めてしまいました(;^ω^)
当時、中学生だったというのもあったのかも…
読みやすく訳されたものや、いっぷくさんが紹介してくださった「漫画で読破」から入ればよかったですね。
by ミケシマ (2024-04-26 01:25) 

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