言ってはいけないー残酷すぎる真実ー(橘玲著、新潮新書)は、人間はみな平等、努力は報われるなど「綺麗事」に反証した書籍です。「知能は7~8割は遺伝」「犯罪者の子供は遺伝的に(環境とは関わりなく)犯罪者になりやすい」等々を論証しています。
みなさんは、人生は生まれつきの遺伝子で決まると思いますか。努力で作り上げられると思いますか。
人間はみな平等
努力すれば報われる
人種によるIQの違いはない
見た目は大した問題ではない……
それらを、データを元に否定しているのが、本書『言ってはいけないー残酷すぎる真実ー』です。
往々にして、努力は遺伝に勝てない。
知能や学歴、年収、犯罪癖も例外でなく、人種による違いもある。
美人とブスの「美貌格差」は約3600万円。ブスは美人に勝てない。
子育てや教育は、ほぼ徒労に終わる。
要するに、人生は遺伝子が大事で、努力でひっくり返せるほど甘くない
といったことが書かれています。
橘玲さんは、数々のデータから、人間の能力も人格も遺伝子が全てだから、無駄な努力なんかしないで、自分の遺伝子に応じた生き方をしたほうが幸せ、という主張を行っているのです。
なかなかおもしろい書籍です。
建前の綺麗事をデータで否定している、「厳しい現実」を突きつけている点で。
ただし、これは、すでに反論をご紹介しているんですよね。
でもまあ、売れているそうなので、レビューします。
IQが低いのに優遇している!?
ひとつ、引用が長くなりますが、興味深いくだりなので要約を書きます。
「人種とIQについてのタブー」というところです。
奴隷制の“負の歴史”を抱えるアメリカでは、黒人の学力が低いのは差別の歴史のせいなのだから、大学入学や就職において、差別を是正するよう黒人の特別枠を設けることは当然とされているそうです。
こうした政策が妥当なのか、『ベルカーブ』の著者たちは、同じIQの白人と黒人を比較することでアファーマティブ・アクションを検討。
たとえば平均的アメリカ人 (25歳)のうち、学士号取得者の割合は白人で27%、黒人で1%。これだけを見るとたしかに黒人に対する差別の影響のように思えますが、同じIQで比較すると、学士号を持つ割合が白人で50%の場合、黒人は68%と比率は逆転するそうです。
そのうえで彼らは、白人と黒人のあいだにはおよそ1標準偏差(白人の平均を100とすると黒人は56)のIQの差があり、これが黒人に貧困層が多い理由だと述べたといいます。
すなわちそれは、IQが同じであれば、白人よりも黒人のほうが学士号を取得しやすいということです。
要するに、逆差別になっているという話です。
つまり、本書は、
黒人のほうが白人よりIQが低いのに学位が取りやすくなっているが、低いIQで学位を取らせるのは本人にも酷だし白人に対する差別だよ、と言っているのです。
はっきり書けば、日本にも、マイノリティ枠はありますよね。
政治家だって、クォータ制といって、とにかく人数で女性枠を確保しようという考え方がありますが、それは結局、政治家の水準を下げるだけではないかと思います。
男女比が五分五分になるかどうかは結果であり、アファーマティブ・アクションを施すことによって、逆差別になっている可能性はあるでしょう。
遺伝とか人種とか、努力でどうにもならないところでの「差」を明らかにするのはタブーとすることで、逆差別を生んだり、本人に筋違いの苦悩を与えたりする非合理があるということが書かれています。
こんな調子で、往々にして、
努力は遺伝に勝てないという、厳しい現実が書かれています。
で、そうした「自分の遺伝子に応じた生き方」に対する反論として、YouTuberの
rの住人ピエロさんの動画を先日ご紹介しました。
遺伝子で決まったものを伸ばす方法はいくらでもある
rの住人ピエロさんは動画で、韓国の女性が化粧で別人になる動画をバックに、こう述べています。
努力は遺伝子で決まるが、遺伝子は穴だらけ。
よく、努力は遺伝子で決まる。
容姿は遺伝子で決まる。
ほとんどのことは遺伝子できまるというんですが、
そんな戯言は一言で論破できる。
「だからなんだ」
容姿に自信かないなら整形すればいい。
努力に自信がないなら努力の仕方を学べばいい。
遺伝子で決まったものを伸ばす方法はいくらでもある。
多くの人は勘違いしている。
遺伝子とは限界を示すものではなく、もともと持っている素養を示すもの
あっさりと、橘さんを論破しています。
「努力の仕方」というのは、「何を目標にどう努力すればいいのか」ということです。
たとえば、黒人が白人よりIQが低くても学位を取りやすい話ですが、そもそもIQが低いことが、果たして学者として致命的な欠格事項になるのか。
人の取り組んでいないテーマに道をひらけは、学者としては十分に仕事をしたことになります。
より高いIQの人が、その研究をより深掘りしたとしても……パイオニアがいてこその偉業ですから。
つまり、パイオニアになればいいのです。もちろん、これは一例ですよ。
野球のポジション争いで、私は面白い話を覚えています。
50年近く前になってしまいますが、プロ野球の巨人で、土井正三という2塁手のポジションに、現役大リーガーのデーブ・ジョンソンがあてられた。
土井正三はいい選手でしたが、2番や下位を打つ選手でありクリーンアップの器ではない。守備も体力も外国人には劣りフットワークはかなわない。つまり攻守でジョンソンにかなわなかったのです。
そこで、土井正三は、ジョンソンが不調の時、自分が起用されると、エンドランや犠打などジョンソンのできない小技を次々成功させて、王貞治や張本勲につなぐ仕事をしてポジションを奪い返しました。
結局、レギュラーポジションを失ったジョンソンは退団しています。
「何を目標にどう努力すればいいのか」が明らかになれば、IQで負けてもいい仕事はデキるし、パワーで負ける相手にもポジション争いで勝ててしまうのです。
では、それをどうやって知るのか。
もちろん自分で考えることですが、本を読むのもよし、同じ志の人と議論するのもよし、こうしてブログを更新してみなさんのブログを巡回する中で、きっかけがみつかるかもしれない。
アルキメデスが入浴中に、体格のいい人ではあふれ出るお湯の量が多く、体の小さい子どもなどではお湯が流れる量も少なくなることから「浮力の原理」を発見したように、どこに可能性があるかはわかりません。
結論ですが、本書は、現状の社会の価値観において、自分も発想を変えなければ、遺伝子というのは厳然たる事実ですから、著者の示す厳しい現実のとおりになってしまうと思います。
ただし、ピエロさんの言う通りに、遺伝は「今の時点での素養」に過ぎず、そこから自分が変わる努力をすることで活路は開き得る、と考えれば望みはあると思います。
……とまあ、私はピエロ説にたって、一応希望を持って生きていこうと思っています。
言ってはいけない―残酷すぎる真実―(新潮新書) - 橘玲
努力で可能性はあるけど、努力しないのも自由。本人次第ですね
by 赤面症 (2023-11-13 01:07)
IQ高い人がその知識知能を活かして生活してるのかも知りたいもんです。
by pn (2023-11-13 06:26)
伸びしろ運だと思います。漢字20文字暗記カードで、
漢字記憶不得手を、小学校4年のときに脱出した当方
は、そう思います。それが無ければ国語で私進学不能。
by df233285 (2023-11-13 07:31)
お早うございます、城崎温泉(極楽寺)に
コメントを有難うございました。
山門をくぐると、目の前には枯山水の石庭が
広がっていました。
努力するだけでは無理があります、楽しく生きる
ことを考えます。
by tarou (2023-11-13 08:31)
こんにちは^^
容姿に自信が無ければ成形すればよい・・・これはチョット付いて行けないなぁ~
容姿が何だ?ですよわたくしは^^ ほかの事で他人をしのげばいい、なら分かります。
遺伝子6割、努力4割、かな。
by mm (2023-11-13 11:13)
権利は平等であるべきだけど、才能は平等ではないですよね。だから世の中的にはそれで良いこともあるのでしょう、きっと。何でも言い方・伝え方でしょうし、何を信じるかも自由でしょうから。
by itomaki (2023-11-13 22:36)
優遇された遺伝子を持っていても努力をしなければ
結局同じと。多少のバイアスがあるぐらいなのかも。
by tai-yama (2023-11-13 23:04)
遺伝子の縛りは免れないかもしれませんね。
自分を見て歳を取ってくると
顔かたちだけでなく、生き方なども
父に似てきている気がします。
しかし育った時代や経験も違うので
同じというわけには行きませんね。
by そらへい (2023-11-14 20:17)