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北林谷栄、おばあちゃん役一筋に60年余 [懐かし映画・ドラマ]

北林谷栄、おばあちゃん役一筋に60年余

今日は北林谷栄さん(1911年5月21日~2010年4月27日)の命日です。劇団民藝の創設者であり、30代から数多くの老け役を演じた「日本一のおばあちゃん女優」といわれています。過去の記事でご紹介した作品も含めて思い出します。(画像は上段左と下段右が『白い巨塔』上段右が『にあんちゃん』下段左が『にっぽん泥棒物語』より)

北林谷栄とは誰だ


北林谷栄は、1935年に初舞台ので主役を務めて以来、いくつかの劇団を経験し、宇野重吉や、信欣三とともに3人で演劇サークル「文殊会」を結成。

しかし、左翼的との廉で解散させられ、それでもまた戦後、宇野重吉や滝沢修らと劇団民藝を結団しました。

以来、満91歳まで現役で活躍しましたが(享年100歳)、そのほとんどは老婆役で、「日本一のおばあちゃん女優」(Wikiより)といわれました。

にあんちゃん



『にあんちゃん』(1958年、日活)は、安本末子作『にあんちゃん 十歳の少女の日記』の映画化です。

佐賀の在日朝鮮人兄弟(長門裕之、松尾嘉代、沖村武、前田暁子)が、両親を亡くし苦労しながらも、素直なこころと暖かい思いやりを忘れず生きる様子を描いています。

後に、ホームドラマやサスペンスドラマなどで活躍した松尾嘉代ですが、彼女の原点は同作にあると私は思っています。

松尾嘉代が、神戸のコリアタウンがある長田区が壊滅的打撃を受けた阪神・淡路大震災以来、現役から退いたのも、そのことと無関係ではないのでは、と勝手に想像しています。

北林谷栄は、近所の朝鮮人の婆さん役ですが、葬儀の香典は懐に入れるは、人身売買まがいのことをするは、その一方で、出棺の時は終始「アイゴー」と泣き叫んで悲しんでいるふりをするはの面白困った役でした。

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そこだけを切り取ると、今で言うヘイトな描き方になりますが、そうではないのです。

差別される側がしたたかに生きる姿を今村昌平監督は描きたかったのであり、またその要求に北林谷栄は応えている好演なのです。

北林谷栄は、その前年にも『オモニと少年』(1958年、製作 民芸映画社)という映画で、金というおばさんを演じています。

東京生まれの北林谷栄は、関東大震災時、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」等の流言で多数虐殺されながら、政府によって隠蔽されたという「関東大震災朝鮮人虐殺事件」を経験。

虐殺された朝鮮人の遺体が転がっているのを実際に目撃したそうで、それが左翼的なスタンスの新劇へ傾倒し、朝鮮人役のこだわりにつながっているのではないかと思います。

にっぽん泥棒物語



にっぽん泥棒物語』(1965年、東映)は、三國連太郎主演、山本薩夫監督です。

下山事件、三鷹事件とともに戦後史上「国鉄三大ミステリー事件」といわれている松川事件について、当時目撃された「9人の大男」を真犯人としたストーリーですが、ドキュメンタリータッチではなく、創作娯楽映画として作られています。

「邦画最高の法廷映画」とするレビューもあります。

偽歯科医の三國連太郎の裏の顔は、土蔵に穴を開けて品物をリレーで運び出し、現金に代える“破蔵師”です。

それが、「仕事」の帰りに列車を転覆させた9人の真犯人を目撃したのですが、フレームアップ(政治的弾圧を意図する冤罪)で捕まった日本共産党員(鈴木瑞穂など)を助けるには、自分が何をやっていたのかも白状しなければならない。

新婚の夫人(佐久間良子)にも“本職”の話はしていなかったので悩みますが、結局裁判で真実を打ち明け、鈴木瑞穂らを無罪にする感動のストーリーです。

にっぽん泥棒物語・法廷
『にっぽん泥棒物語』より

北林谷栄は、三國連太郎の母親役です。

朴訥として嘘をつかない誠実な母親の息子だからこそ、たとえ“破蔵師”であっても人としての良心を忘れなかった、という設定で重要な役どころでした。

(画像はいずれも『にっぽん泥棒物語』より)

白い巨塔



田宮二郎版テレビドラマの『白い巨塔』は何度かご紹介しました。

北林谷栄は、財前五郎(田宮二郎)とは全く接点はないのですが、里見修二の医師としての熱心なキャラクターを示す大切な役でした。

田宮二郎に不利な証言をしたため、田舎の大学に左遷され研究ができなくなって退職した里見修二(山本學)。

病理学時代の恩師の大河内清作(加藤嘉)の紹介で、近畿がんセンターで研究を続けることになりました。

検診車で奈良の十津川村に赴いた時に、胃の検査をしたのが北林谷栄。

当時の医学では、細胞診は5段階のクラス2(異型細胞は存在するが悪性ではない)でしたが、山本學は徹底的に調べて超初期の胃がんを発見。

病院嫌いで、手術も怖がっていたことから、つっけんどんな態度をとっていた北林谷栄は、最後は笑顔で山本學に礼を言う、というストーリーです。

このドラマが1978年でしたが、さらにここから30年近く、老婆役が続きます。



おばあちゃん役はアニメでも


田宮二郎との接点といえば、その2年前に制作された『高原へいらっしゃい』(1976年3月25日~7月15日、TBS)でも尾藤イサオに“ばっちゃん”と呼ばれるおばあさん役でした。

高原へいらっしゃい、心の裏表を巧みに描くホテルと人生再建物語
TBSチャンネルより

おばあちゃん役は、自らの芝居だけではありません。

『となりのトトロ』では、カンタのばあちゃんの声をあてていました。

同じような役が続くと飽きてしまうわないかと思いますが、半世紀以上にわたって、おばあさん役を演じ続けたのが北林谷栄さんです。


なにか記憶に残る映画やドラマはありますか。

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コメント 15

風太郎

「ビルマの竪琴」「にあんちゃん」映画を観た中で
この二本が印象に残っています。
by 風太郎 (2020-04-27 09:05) 

U3

いっぷくさん おはようございます。
お歳を召されてからの存在感が強く記憶に残る名女優でした。
by U3 (2020-04-27 10:31) 

pigumon

北林谷栄さん
私の中での ベストドラマ
『前略おふくろ様』
分田上の女将さん役が
とっても 印象的です
きっぷが良くて
男前なところ 良かったな〜
by pigumon (2020-04-27 12:44) 

旅爺さん

北林谷栄は渋い婆さん役ばかりですが良い味出してましたよね。懐かしく思い出しました。
by 旅爺さん (2020-04-27 13:12) 

koh925

北林谷栄さん、阿弥陀堂だよりが印象に残っています
赤坂東急ホテルで食事をしたとき、友人らしい人と
近くにおられましたが、おばあさんではなく綺麗な人でした
by koh925 (2020-04-27 15:13) 

こんちゃん

ドラマのタイトルは全く覚えていませんが、とにかく印象深い女優さんだったと記憶してます。
by こんちゃん (2020-04-27 15:18) 

坂の上の蜘蛛

いっぷくさん、こんにちは!
いつも懐かしい記事に見入っています。
そして古い貴重な資料の収集力に感心しています。
どこから出てくるんですかね。
ネタ元は勿論明かされませんよね(^_^)
by 坂の上の蜘蛛 (2020-04-27 15:40) 

kou

お名前も存じ上げませんでしたが、良く覚えている女優さんです。いっぷくさん、いつも有り難うございます。
by kou (2020-04-27 16:14) 

ヤマカゼ

写真の顔を見て、あっ、この人と思い出しました。
となりのトトロ、カンタのばあちゃん役でしたか、達者でしたね。
by ヤマカゼ (2020-04-27 16:15) 

ヨッシーパパ

私が物心ついた頃には、もう初老でしたので、可愛らしいおばあちゃんと言う印象しかありません。
by ヨッシーパパ (2020-04-27 18:34) 

pn

あのおばあちゃんの声の人とは露知らず(^_^;)
by pn (2020-04-27 20:46) 

mau

トトロしかわからない…
by mau (2020-04-27 22:19) 

ナベちはる

カンタのおばあちゃんの声優さん、ドラマでもおばあちゃん役が多かったのですね。

by ナベちはる (2020-04-28 01:00) 

Rinko

お顔はよく覚えています!老婆役がはまっていましたねー。
by Rinko (2020-04-28 08:02) 

そらへい

高校生の頃見た映画「橋のない川」の
北林谷江さん、印象に残りました。
by そらへい (2020-04-30 20:48) 

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