『にっぽん泥棒物語』松川事件、三國連太郎、鈴木瑞穂、山本薩夫 [懐かし映画・ドラマ]
『にっぽん泥棒物語』(1965年、東映)を観ました。三國連太郎主演、山本薩夫監督です。下山事件、三鷹事件とともに戦後史上「国鉄三大ミステリー事件」といわれている松川事件について、当時目撃された「9人の大男」を真犯人としたストーリーですが、ドキュメンタリータッチではなく、創作娯楽映画として作られています。(画像はいずれも『にっぽん泥棒物語』より)
先日は、松川事件をまさにドキュメンタリータッチとして作られた映画『松川事件』について書きました。
『松川事件』宇野重吉、宇津井健、下元勉、千田是也、山本學
今回は、同じ山本薩夫監督ですが、創作娯楽映画として松川事件を扱っています。
林田義助(三國連太郎)は、表の職業(?)は、歯科医だった父親の見よう見まねの無免許歯科医。
裏の顔は、土蔵に穴を開けて品物をリレーで運び出し、現金に代える“破蔵師”です。
所帯を持った相手の芸者桃子(市原悦子)のお里帰りに、持たせた手土産が盗品だったことから足がつき4度目の拘置所へ。
いったん仮釈放となった義助(三國連太郎)は、“仕事”に失敗して線路伝いに逃げたとき、9人の大男とすれちがいました。
夜が明け、駅付近で列車転覆事件(松川事件のこと)が起ったことを知ります。犯人はその9人の大男らしい。
懲役4年の判決を受けた義助(三國連太郎)は、福島刑務所で、列車転覆事件で収監された木村(鈴木瑞穂)ら3人と知り合います。
義助(三國連太郎)は、彼らが自分の見た大男たちとは違うので、列車転覆事件(松川事件)が冤罪であると気づきます。
義助(三國連太郎)は出所後、命を助けた縁で、高橋はな(佐久間良子)と結婚して落ち着いていましたが、彼とは旧知の安東警部補(伊藤雄之助)に、居所を突き止められてしまいます。
安東警部補(伊藤雄之助)は、義助(三國連太郎)の目撃談は、犯人は3人とする為政者・警察・検察にとって具合がわるいので、もし口外したら、時効であることを隠して昔の事件をタテに、女房に昔のことを話すと恫喝します。
一方、木村(鈴木瑞穂)らの弁護士(加藤嘉、千葉真一)や、彼らを応援する新聞記者(室田日出男)は、義助(三國連太郎)に、裁判で証言してほしいと何度も頼みます。
安東警部補(伊藤雄之助)に脅されて、それを断ってきた義助(三國連太郎)ですが、木村(鈴木瑞穂)と再会し、木村の息子を見ているうちに、やはり証言しようという気になります。
そして、クライマックスは法廷シーンです。
娯楽映画で大事件を描く
東北高等裁判所で義助(三國連太郎)は、洗いざらいぶちまけます。
検事(加藤武)は、証言の信憑性をイメージ的に損ねようと、彼が破蔵師であることを根掘り葉掘り質問するのですが、義助(三國連太郎)の説明がユーモラスで法廷は笑いの渦に。
それでいて、家族の話になると、シンミリさせて、もう法廷はすっかり義助(三國連太郎)の一人舞台。
裁判官(永井智雄)は、義助の証言を全面的に採用し、全員無罪となります。
閉廷して、はな(佐久間良子)や、木村(鈴木瑞穂)らが、義助(三國連太郎)にかけよるシーンは感動的です。
三國連太郎というのは、大変なパワーを持った役者ですね。
それとともに、山本薩夫監督が、ドキュメンタリータッチではなく、喜劇調の娯楽映画で、あの大事件を新たな角度からまとめたというのもすごいと思います。
出演者も多彩です。
前回の『松川事件』にも出演した人々も出ています。
西村晃(刑事→受刑者)
加藤嘉(高裁裁判長→弁護士)
永井智雄(刑事→差し戻し審の裁判長)
北林谷栄(冤罪容疑者の母→主人公の母)
また、今回は東映映画なので、東映ニューフェースから、千葉真一、室田日出男、緑魔子なども出ています。
また、日本共産党員であることを隠さなかった、花沢徳衛、鈴木瑞穂らも出演しています。
いずれにしても、ネットのレビューでは、邦画最高の法廷映画という賛辞を送る人もいるほど、見応えのある作品に仕上がっています。
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