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通信制高校、改めてそのありようを考える [障害者]

通信制高校、改めてそのありようを考える

先週の後半、私の長男の高校のスクーリングに同行しました。ネット環境は問題なかったのですが、思った以上にタイトなスケジュールだったため、みなさんのブログの巡回が十分にできませんでした。このブログをご覧になっている方の中でも、「うちもそこに行っていた」という同級生のご家庭もあるのではないかと思いますが、一応校名は伏せておきましょう。



一昨年このブログでは、支援学校高等部3校と、通信制高等学校12校について、訪問した記事を書きました。

その動機ですが、支援学校については、あまり知られていない障碍者療育についてご紹介しようと思い記事にしました。

一方、通信制高校については、大げさに述べれば、現在の学校教育のあり方を問う、ぐらいのつもりでご紹介しました。

というのも、従来の高校に対する評価は、まず「当たり前の進路先」として全日制があり、次に学力が足りない、家が貧乏、など「可愛そうな人」「落ちこぼれた人」が定時制に進み、さらに深刻な「ほしのもと」の生徒は一応高校に在籍したことにする位置づけで通信制に、ということになっていたと思います。

つまり、全日制>定時制≧通信制、という序列がはっきりしていました。

今も、それが完全に変わったわけではありません。

少なくとも、旧来の、「有名高校に入って有名大学に入って」という揺るぎないエリート主義を唯一無二の価値観とする親御さんから見れば、誰が好き好んで定時制や通信制に行く必要があるんだ、と思われるでしょう。

ただ、とくに通信制のあり方が、以前とはかなり変わったのではないかということも私は実感しているので、その点を今回一言しておきます。もちろん反論はあって構いません。

非全日制が「エリート」ではないとは限らない


そもそも定時制や通信制高校の中には、全日制高校を「エリート主義」の面でも凌いでいる学校があります。

たとえば、東京・後楽園にある中央大学高等学校という定時制の高校は、中央大学の付属ということもあり、合格者の平均偏差値はおそらく70に届くのではないかと思います。

偏差値70以上の人は全体の2.28%ですから、300人いる中学校なら学年で6番か7番以内の成績でないと入れない計算です。

まあ、クラスレベルでは1番でないとだめでしょうね。

同校の生徒は、定時制と言いながらも全日制同様に、朝から夕方まで授業を受けて3年間で卒業します。

私が高校の頃のン十年前にも同校はありましたが、その頃はいくら大学附属でも定時制は定時制、という感じで無印でした、今は見方が変わったのです。

通信制高校では、駒場東大前にある東海大学付属望星高等学校を、このブログでもご紹介したことがあります。

東海大学付属望星高等学校、障がい者の進路として検討できるか?

落ちこぼれの学校という評判もあるようですが、本人が希望すれば、他の付属校同様、東海大学に進学できるそうです。

いくら落ちこぼれだろうが、高校生活を頑張れば東海大学に進めるのです。

一方、いくら有名全日制高校に入ったって、東海大学の受験には失敗するかもしれません。

「定時制」「通信制」というだけでコバカにする道理は、この限りでもないはずです。

全日制よりも通信制!と間違いなく言えるのは次の2点


もちろん、こうした学校は、定時制や通信制だからといって、全日制よりも「エリート主義」で劣ると決めつけるな、という意味で例に出しているだけで、本来非全日制は、全日制と同じことを目指しているわけではありません。

全日制にはない通信制の良さを、大雑把に2点だけ述べます。

「無駄」がないのが通信制課程


はっきり申し上げると、全日制高校のカリキュラムには、見方によっては無駄なものがあります。

簡単に言えば、通信制は、その「無駄」を削り、効率よく必要なことだけを履修する課程といっていいでしょう。

在校生の登校日数は、生徒の事情や考え方に基づき、選択制で年間4日~200日まで様々です。

履修は、法律で決められている授業数と試験以外は、ネットを使った通信教育によるレポート提出を採用しているところがほとんどです。

といっても、ちゃんと法律に則った高校ですから、以前私が12校の記事を通してご説明したように、制服、担任、クラス授業、試験、行事など、学校生活の要件はすべてあります。

ただ、クラス授業の形態が違うだけなのです。

インクルーシブ教育や既成の教科書を使わない授業の実践


授業の内容的な違いとしていえるのは、おおむねインクルーシブ教育に前向きです。

ここでいうインクルーシブ教育というのは、障碍者が健常者と一緒に授業を受けることです。

「一緒に」といっても、お義理で教室の後ろに机を置かせてもらうのではなく、対等に授業に参加します。

現在、全日制高校で使っている教科書は、インクルーシブ教育用ではありませんから、インクルーシブ教育のためには、いきおい既成の教科書にとらわない授業にならざるを得ないわけです

もちろん、点数を取るための勉強しか考えていない人にとっては、価値を感じない授業になる可能性がありますから、そういう人は通信課程に入らず、有名大学の合格者数を自慢している高校に進めば良いのです。

以上のことから、通信制高校とは、スポーツ選手や芸能人など、全日制の「無駄」に付き合うよりは自分が研鑽する分野に時間を使いたい生徒、不登校や病気による長欠者、障碍のある生徒など、精神的、肉体的に全日制高校からはじき出された生徒などが在籍することが多い課程です。

通信制高校が注目されている背景


通信制課程が多様な立場を受け入れる場になったのは、大きく2つの背景があると思います。

ひとつは、インターネットの普及です。

インターネットは、Webコンテンツ自体が教材になり得たり、学校側からのテキストの提供や生徒側からのレポートの提出が、デジタル通信で処理できたりします。

それによって、わざわざ学校にいかなくても授業が成立するし、それは普段、ひとつの教室に集まれない全国各地に居住する生徒が「ひとつのクラス」になれるということです。

たとえば、北海道の人と沖縄の人が同じクラスになれるのです。

そして、インターネットのコンテンツで勉強できるということは、「有名大学に入るための予備校的な勉強」に囚われない自由な学習をできる素地にもなっているということです。

もうひとつは、戦後教育の「機会均等」という「民主的」な建前に対する、再考の契機になっているのでははないかとも思います。

戦後教育の「機会均等」が、「平準化」や「悪平等」を生み出しているのではないかと指摘する人は少なくありませんが、一方ではむしろ格差を再生産して、結果として「落ちこぼれ」・不登校者や障碍のある生徒を排除してきたのではないかという疑問もあります。

端折って述べれば、「みんなが同じことをしよう」というのが「機会均等」ですが、障碍者はできないんですから、ちっとも「均等」ではないし、一方で学校で最低限のことしかしてくれなかったら、学習塾などオプションをつけられる金持ちの子弟が勝つに決まっています。

もちろん、機会均等という理念そのものを否定しているのではありません。

実践内容に、矛盾や不十分な面があったことは否めないだろうということです。

そういう意味で、私は通信制高校に対し、その「矛盾や不十分な面」を克服し得る期待感を抱いているのです。

みなさんは通信制高校について、率直な所、どのようなイメージを持たれていますか。

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コメント 14

pn

前にも書いた気がしますが中卒の身としては定時だろうと通信だろうと学ぶ気持ちがある人って素晴らしいと思います。
今日日視力入力だって出来るんだから体か動かないとかそんなの関係なくいつでもどこでも学べる体制をもっと整えるべきでは無かろうかと。
by pn (2020-01-21 10:25) 

猫またぎ

定時制・通信制の高校は以前から
軟式野球を応援していますが、
近年その存在が見直されていますね。
by 猫またぎ (2020-01-21 10:26) 

扶侶夢

>そういう意味で、私は通信制高校に対し、その「矛盾や不十分な面」を克服し得る期待感を抱いているのです。
充分に期待できると思います。
丁寧な説明でとても理解しやすく、特に「インクルーシブ教育」に関する部分は説得力がありました。
by 扶侶夢 (2020-01-21 10:43) 

Boss365

こんにちは。
通信制高校、知り合いにいないので知識ないですが・・・
定時制に行けない「何らかの理由あり」なイメージです。
通信制大学卒業の友人はいました。
金銭的な面が通信制の理由でしたが、至って真面目で志が明確でした。
これからはフレキシブルで自由な学びの場・・・
通信制に限らず増えそうな気がします!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2020-01-21 12:45) 

ヤマカゼ

息子さん、これを契機に友人が増えるといいですね。沖縄とかに友人ができれば行くにも楽しみが増えそうでいいと思います。
by ヤマカゼ (2020-01-21 12:46) 

Rinko

通信制の高校のイメージはどんどん変わってきています。
それぞれに合った学び方ができるのはいいですよね!
by Rinko (2020-01-21 13:52) 

ヨッシーパパ

40年以上前には、定時制と言えば、経済的な意味合いで通学する生徒が多かったと思いますが、最近は多種多様なのですね。
by ヨッシーパパ (2020-01-21 17:42) 

kou

身内の息子が通信制の高校を卒業して東北では有名な大学に進学し今は立派に自立しています。
学ぶ気持ちが一番大事ですね。
by kou (2020-01-21 19:05) 

和

初めまして
私は40年ほど前に通信制の高校を卒業しました。(37歳)
中学校卒業時の進学率は13%くらい、私は貧しい家庭の方で・・・看護学校の方へ進学。
子育てが一段落した時に、心にポツンと大きな空洞ができ
「このまま中卒では、社会に置いてきぼりにされる」と感じて、たまらなくなり、家庭・職場・学校、みな一緒にやりました。
4年間で、卒業するには、相当な苦労がありました。
レポートは毎回小1の長男が郵便ポストに入れ、家族の協力もありがたかったです。
運動会には子供を連れて参加、家事家政の教科では子供用の机(工作)を作りました。
書道では、この実力では師範の力と教師におだてられて、
50歳で書道の学校に進学、師範の免許をいただきました。
通信制の高校では、入学時の3割くらいが卒業に至り、その後大学へ進学した人あり、私は正看の学校へ進学をしました。
通信制の高校では、良い友と、よい教育を受けさせていただいたと思っています。
by (2020-01-21 22:56) 

mau

友人の子供が、大倹資格は通信でとり、昼間は興味のある声優スクールに通ってました
by mau (2020-01-21 22:57) 

ナベちはる

今では学校も多種多様に変わっているので、「今までの序列は"思い込み"である」という風に捨て去った方が良いですよね。
by ナベちはる (2020-01-22 00:56) 

我流麺童

自分の息子は専門学校に通いながら5年かかって通信制大学も卒業しましたが就職には不利だったようです。
やはり、社会の見方は未だに学校名で格差をつけています。
by 我流麺童 (2020-01-22 12:43) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございます。
もちろん、全日制高校をやめてみんな通信制にしよう、という話ではなくて、ネガティブなポジションだった通信制が、全日制とは異なるベクトルで存在意義を高めているという話です。
by いっぷく (2020-01-23 02:02) 

風神様【毎日♪】

選択肢がある事は良い事ですね。
特定の価値観“のみ”で区別や差別や選別や評価を行うのは、
可能性の芽を潰す馬鹿げた事。
ましてやインターネットが普及したご時世なのだから、
正常な進化は認めてしかるべきかと。

俺は中学卒業後に全日制に進学しましたが馴染めず、
かなり頑張ったんですが退学して、
高卒資格を得る為に通信制に編入して、
卒業は23歳。

あれから30年ですが、
未だに
「中卒時に最初から通信制に進学してればなあ……」
と思う事があります。
俺はその方が
お勉強が出来たかもしれないので。
by 風神様【毎日♪】 (2020-01-23 07:22) 

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