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『われら青春!』セリフが泣かせる青春学園ドラマ [懐かし映画・ドラマ]


『われら青春!』(1974年、東宝、日本テレビ)というドラマが、7日(6日深夜)からBS日テレで全話放送されます。生徒を無試験で受け入れる太陽学園に、大学新卒で赴任してきた沖田俊(中村雅俊)が、問題児たちのクラス担任とラグビー部部長として、失敗を重ねながらも生徒との信頼を深めていくストーリーです。中村雅俊の初主演作品。いわゆるテレビ映画と言われる、映画会社制作による青春学園ドラマシリーズの最終作です。




『太陽にほえろ!』『大都会』『あぶない刑事』など人気ドラマを手がけた日本テレビ・岡田晋吉プロデューサーが、66年からスタートさせたのが青春学園ドラマでした。

東宝で伸び悩みぎみだった夏木陽介を主演に、石原慎太郎原作の『青春とはなんだ!』をNHK大河ドラマの裏にぶつけて成功すると、竜雷太、浜畑賢吉、森田健作、村野武範など、当時は映画会社のニューフェースや新劇で無名だった新人を抜擢して作品をシリーズ化させました。

森田健作の『おれは男だ!』以外は東宝が制作していましたが、ちょっとハイソで明るく楽しい東宝の作風に貫かれた作品ばかりでした。

シリーズを通して、岩谷時子作詞、いずみたく作曲、布施明が歌う『貴様と俺』が使われ、抜擢された俳優たちはみな英語教師役。

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なんだかわからないけど、喧嘩したり泣いたり砂浜を走ったりするとすべて解決するストーリーは単純でわかりやすく、ドラマを見終わると、合理的な根拠も見通しもないけど、また月曜日から学校(会社)がんばろう、という気持ちになれたものです。

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そのシリーズのコンセプトにあっていると抜擢されたのが、慶応大学のESS出身、まだ宮城訛りの残る文学座研究生、中村雅俊でした。

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この作品の第1回の名シーンは、今もよく覚えています。生徒が、辞表を出して学校を去った沖田先生(中村雅俊)を駅まで追いかけ、生徒の坂口が反対側のホームからこう呼びかけます。

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「先生、好きなんだろう? 教師って職業が好きなんだろう? 好きなことはそう簡単に諦めるもんじゃねえよ」

標語として聞かされても何も感じないことが、ドラマのセリフだとぐっと心に迫ります。ネット的にいえば(脚本家の)鎌田敏夫「ネ申」ですね。

こんな感じで名台詞も多く、『われら青春!』は脚本もよく出来ていると思いますが、リアルタイムでは視聴率があまり伸びなかったようです。

舞台設定は、前作の『飛び出せ青春』を引き継ぎましたが、私が見る限り、作品自体は前作の方が出演者に華があったなあと思いました。

ただ、出演者は皆、「俊(中村雅俊の役名)をスターにしよう!」と盛り立てた、と何かの本で読んだことがあります。

岡田晋吉プロデューサーもその一人だったのでしょう。以後も『つくし誰の子』『俺たちの勲章』『俺たちの旅』『俺たちの祭』『青春ど真ん中!』と、立て続けに中村雅俊にチャンスを与え、中村雅俊という役者としてのブランディングが確立されていきました。

この青春ドラマシリーズは、当時のメンバーでその後も同窓会を開いているらしいですが、スターになった中村雅俊も、そのひとりとして必ず参加しているようです。

中村雅俊の俳優人生を見ていると、人間が成功するには、周囲が盛り立ててくれることが必要なんだなあと思います。

番組の放送日は、毎週火~金曜日4:00に2話ずつです。




放送当時は……


当時、日本テレビのゴールデンタイム春夏期はプロ野球中継があり、野球が中止されたり、巨人戦が後楽園球場以外だった場合にのみドラマが放送されました。

後楽園の日曜日は、4、5月がデーゲームだったのですが、それでも例年、26週中17回程度しか放送されません。

ところが、この年に限って記録的に雨天中止が多く、結局『われら青春!』は22話作られました。

つまり、いつもより5回も雨天中止が多かったのです。

これはドラマと関係ない話ですが、この記録的雨天中止のため、プロ野球は後半にダブルヘッダーが連日組まれました。

その強行日程が響いたか、レギュラーの平均年齢31歳だった巨人が、レギュラーの平均年齢26歳の中日に勝率がたった1厘及ばず、10連覇できませんでした!

とくに、当時38歳の長嶋茂雄さんはもう見るからにバテバテでした。クリーンナップを外れて1番を打つこともあり、見ていて気の毒なくらいでしたから、引退はやむなしだなあと当時思いましたね。

そして、長嶋茂雄さんの現役最後の試合まで雨天中止(翌日に順延)。V10ならずの涙雨、なんて言われました。

そんなこともあわせて思い出させてくれる作品です。

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青春ドラマ夢伝説―あるプロデューサーのテレビ青春日誌

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  • 作者: 岡田 晋吉
  • 出版社/メーカー: 日本テレビ放送網
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 単行本






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