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『津軽じょんがら節』江波杏子、織田あきら、西村晃、斎藤耕一 [懐かし映画・ドラマ]

津軽じょんがら節

『津軽じょんがら節』(1973年、斎藤耕一プロダクション/ATG)を久しぶりに観ました。『津軽じょんがら節』は、キネマ旬報ベストテン第1位となった、斎藤耕一監督の代表作といわれています。津軽の寒く寂しい漁村に帰ってきた、女と連れの男の話です。津軽の荒々しい波や寒風、さらにイタコの風習をイメージする神秘主義も加わったストーリーです。(画像は劇中より)



斎藤耕一監督作品は、先日、『小さなスナック』をご紹介しました。

藤岡弘と尾崎奈々
『小さなスナック』より

『小さなスナック』藤岡弘、尾崎奈々、パープルシャドウズ

その中で、藤岡弘尾崎奈々のデートのシーンが、小刻みなショットの積み重ねで描くという独自の演出をしており、同じ斎藤耕一監督作品である『津軽じょんがら節』を観てみようと思いました。

『津軽じょんがら節』は、先日ご紹介した『祭りの準備』同様、高校時代に入っていた映画研究部の鑑賞指定作品だっため、当時、部員たちで観に行ったことがあります。

確認していませんが、同作はオールロケ(すべて現地の撮影)かもしれません。

吹きすさぶ寒風や、荒々しい波が、常に背景や音に出てくる、津軽の寒々しさと暗さをリアルに描いた作品です。

ネタバレ御免のあらすじ


津軽の寂れた漁村に、イサ子(江波杏子)が若い男(織田あきら)を連れて戻ってきます。

津軽じょんがら節・江波杏子と織田あきら

男(織田あきら)はカタギではありません。

義侠心で人を刺したものの、誰もかばってくれず、イサ子(江波杏子)に誘われて津軽に身を潜めることにしたのです。

イサ子(江波杏子)は、漁師・塚本(西村晃)の息子と駆け落ち同然に村を飛び出した過去がありましたが、漁船で遭難した父と兄の墓を、保険金でたてる目的もあって戻ってきました。

しかし、父と兄の遭難が偽装であり、保険金支払の対象にならないと保険会社に言われます。

その上、僅かな所持金も盗まれ、塚本(西村晃)の息子の死亡も知り、「やっぱりここは呪われた村だ」と、故郷に帰ってきたことを後悔します。

一方、男(織田あきら)は当初、パチンコするにも片道2時間もバスに乗らないと行けない村にウンザリしていましたが、自分を「あんちゃ」と慕う盲目の少女(中川三穂子)と出会ったり、塚本(西村晃)の手伝いで漁に出たりしているうちに、村に愛着を覚えます。

結局、イサ子(江波杏子)だけが村を去ることになり、男(織田あきら)は少女(中川三穂子)と結ばれますが、殺傷事件の復讐に来たヤクザたちに刺殺されてしまいます。

要するに、男(織田あきら)は、イサ子(江波杏子)と一緒に村を出ないで、呪われた村にとどまり、呪われた娘とかかわったから刺殺されたという神秘主義的なモチーフです。

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厳しい自然や生活だから“春の香り”が欲しかった


斎藤耕一監督の意図はわかりませんが、ストーリーには、ちょっと疑問があります。

厳しい自然や生活をバックに、“冬の香り”の作品を描くのは、イメージ的には順当です。

そこをあえて、“春の香り”の作品を作れなかったのかな、と思います。

それと、無原則で不道徳な情事が日常茶飯に行われているように描くのは、ステレオタイプという気がします。

こういう描き方をされて、津軽の人々はどう思うでしょう。

祭りの準備』も性的シーンは目立ちましたが、『祭りの準備』の場合には、主人公の青年が、上京のきっかけを作るために、あえて故郷を青臭く否定しているという描き方であり、情事には愛嬌もありました。

それにひきかえ本作の情事は、近親相姦売春などが、背景もはっきりしないまま出てきます。

そして、津軽“らしく”、イタコの風習を思わせる「呪い」が作品のキーワードになっています。

劇中に盲目の少女が出てきますが、兄弟による近親相姦の子どもだから目が見えないとされています。

そして、父親は自殺したから呪われた一家だそうです。

こういう設定も、ステレオタイプという気がするのですが、どうでしょうか。

津軽のイタコの習俗」があるのは事実ですが、希望のない田舎の情事に「呪い」を加えたストーリーは、不幸と無原則な情事が、まるで宿命だといわんばかりの描き方になっており、救いが感じられません。

寒さが厳しく、仕事も娯楽もない。でもここで暮らしている以上、生きていくしかないのだ……という前向きな意思表示の結論であればよかったのになあと思いました。

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