『南太平洋の若大将』高度経済成長時代の明るさとダイナミックさ [東宝昭和喜劇]
『南太平洋の若大将』(1967年、東宝)を今日はご紹介します。例によって、若大将こと加山雄三が、歌に、スポーツに、恋愛に学生生活を謳歌するストーリーですが、今回はとくに、高度経済成長時代の人気シリーズであることを思わせる、国内外の大掛かりなロケを敢行しています。(断りのない画像は劇中より)
若大将シリーズは、加山雄三の24~34歳に17本作られましたが、実は最初の3作(『大学の若大将』『銀座の若大将』『日本一の若大将』)で、ほぼストーリーは完結していました。
【若大将シリーズ関連記事】
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3作目の『日本一の若大将』では、スポーツや恋愛や趣味(楽器)など大学生活を謳歌してきた若大将(加山雄三)が、いよいよ大学卒業を控え、就職が内定するところまでストーリーは進んでいたのです。
東宝も、最初は若大将が大学を卒業する、その3作目で終わるつもりだったらしいですが、人気作品になったので、その後シリーズ化されたようです。
レギュラーメンバーとその人間関係の設定は同じで、だけど毎回のストーリーは『男はつらいよ』のようにつながっているわけではない、一話完結がその後も14作作られたわけです。
たとえば、若大将が、すき焼き屋の坊っちゃんで、青大将(田中邦衛)が同級生という設定は同じですが、作品によって、時にはヨット部だったり、時には柔道部だったり、時には水産大学だったり、時には商学部だったりします。
そして、本作(10作目)の『南太平洋の若大将』を含め、11作目まで、大学生のままなのです。
ストーリーも、前半はすみちゃん(星由里子)が、後半はせっちゃん(酒井和歌子)がヒロインで、青大将が横恋慕したり、対抗の女性があらわれたりしますが、必ず最後は所属するスポーツ部の大会に優勝して、ヒロインとの関係も正常化されます。
『日本一の若大将』より
そう、必ず、なんです。
それがいいんですね。
ストーリーにいちいちハラハラしないから、安心して登場人物の行動や、作品を通して描かれる「明るく楽しい」雰囲気を満喫できるのです。
国内外の豪華ロケとフレッシュな出演者
本作は、タイトルに「南太平洋」とついているように、ハワイ、サイパン、タヒチが舞台です。
そして、国内では、あの日本武道館を借りきって、客席を一杯にしてクライマックスシーンを撮影しています。
場所代もべらぼうにかかりますし、1万5000人のエキストラというのもすごい!
同時期、やはり東宝の屋台骨を支えたクレージー映画シリーズは、『クレージー黄金作戦』を上映しました。
こちらも、ハワイとラスベガスを舞台にし、何とラスベガスの大通りをストップさせて、クレージーキャッツが踊りました。
さらに、『クレージー黄金作戦』では、ハワイのシーンで若大将が出てくるという“遊び”もありました。
いずれも、高度経済成長時代の、右肩上がりの明るさがおもいっきり表現されている、今観ても気分が高揚してくるダイナミックな作り方です。
ストーリーは、若大将らが水産大学の学生。
若大将の夢は、鯨の牧場を作ることといいますから、これまたダイナミックです。
すみちゃん(星由里子)の今回の職業はスチュワーデス(客室乗務員、現C.A)。
ライバルの女性が、ハワイの日本料理店の娘、由美子(前田美波里)です。
前田美波里は、前年に資生堂のサマー化粧品キャンペーンガールに抜擢されたばかりで、人気絶頂だった頃です。
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スポーツは柔道。
アントン・ヘーシンクをもじって、ヘイスティングが対戦相手です。
若大将は、マネージャーの江口敏(江原達怡) の就職を、父親が社長である青大将(田中邦衛)に頼みます。
条件は、「すみちゃん(星由里子)に結婚したいと言って欲しい」とのこと。
すみちゃん(星由里子)は、由美子(前田美波里)にやきもちを焼いたこともあって、いったんは青大将(田中邦衛)の気持ちを受け入れます。
が、由美子(前田美波里)に、「雄一さん(若大将)が好きなのはあなた」と言われ、タクシーで日本武道館に駆けつけます。
そして、若大将はヘイスティングを破ってハッピーエンドです。
就寝前のひとときは、刺激の強いものではなく、若大将シリーズを鑑賞して、明るく楽しい余韻をもって床につくと、次の日はすっきりとした1日を過ごすことができるでしょう。
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