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「異情」な人々(和田秀樹著、フォレスト出版) [社会]

「異情」な人々(和田秀樹著、フォレスト出版)

「異情」な人々(和田秀樹著、フォレスト出版)をご紹介します。「異情」とは、「人間の合理的思考を奪う感情」を表現した著者の造語です。「周囲の異情な人」に振り回されない、そして自分自身が「異情な人」に陥らないための対処法がまとめられています。



アメリカンフットボール部の違法薬物事件への対応を巡り、ガバナンス(組織統治)不全が指摘された日本大で、和田秀樹さんが、任期を半分残して常務理事を辞任しました。

実際には、林真理子さんから詰め腹を切らされたようですが、和田さんは問題の異常さに耐えきれずに去ったという見方もできます。

ということで、今日は、和田秀樹さんが書かれた「異常」ではなく『「異情」な人々』(フォレスト出版)をご紹介します。

以前、5年ぐらい前に記事の半分ぐらいのスペースを使ってご紹介したことがあります。

著者の和田秀樹さんが「異情」としているのが、「人間の合理的思考を奪う感情」です。

具体的に挙げると、

攻撃的になる
暴言を吐く
必要以上にキレる
思考停止

といったふるまいを指します。

職場や家族に潜む、感情コントロール不能の「困った人」というわけです。

といっても、そうした状態に陥る人々が「特別な人」なのではなく、売り言葉に買い言葉で、論点を逸脱して争ったり、攻撃的になったり、それがエスカレートすると暴力になったりする、一時的な「理性の喪失」状態のことを指すので、精神や人格に問題があるのではなく、人間誰にでもありえる弱さという前提で解説されています。

本書はそれを、「人の健全な状態の感情がいくらか損なわれた状態」と表現しています。

ね、身に覚え、ありますよね。人間なら、むしろ当然です。

しかし、決して侮れないふるまいです。

ネットの炎上、ユーザー同士の齟齬、リアルでの友人・知人との確執など、私たちの人間関係は、「異情」であっという間にその関係が壊れてしまうからです。

そこで本書では、「異情」な人にどうしてなってしまうのか、「異情」に陥らないためにはどうしたらいいか、ということが解説されています。

お互い自己愛に気をつけろ


本書では、発行当時の少し前に話題だった、国会の加計学園問題を例に出しています。

「下衆の勘繰り」と不規則発言をした安倍首相と、その言葉尻に乗っかって興奮した民進党(現在の立憲民主党と国民民主党と教育無償化を実現する会)、双方を「異情」と批判しています。

そして、「野党は勘ぐって追求するのが当たり前」なのだから、民進党は、いちいちそんなことで感情的にならずに、事実に基づいた追及を粛々と続ければよかったのだという意見を述べています。

つまり、何が論点かを踏み外さず、相手のペースに乗ってはいけないのです。

本書では、自分の判断が、そんなふうに感情に振り回されないためには、感情を一旦放置することを提案しています。

深呼吸、運動、好きなものごとを行うなど自分が快楽になる状態においたり、自分で自分の状態を客観的に見つめ直す「メタ認知」の状態にたったりして、冷静になることも勧めています。

程度の差もありますが、強い「異情」が何に根ざしているかというと、本書は明言こそしていないものの、私がいつも指摘する、自己愛に気をつけろ、ということが示唆されています。

誰でも、自己愛はあるだろう、と思いますか。

ここでいう自己愛とは、自分を大事にするとか、誇りを持つとかいう意味とは違います。

「自分は優れていて素晴らしく尊敬される存在でなければならない」と思い込み、ありのままの自分を愛することができず、「偉大な存在」とする自分のみを愛する、自己愛性パーソナリティ障害の「自己愛」のことです。

それはいきおい、自分への賞賛欲求が強く、一方で他者共感や、寛容の精神が希薄になってしまうわけです。

「障害」と書きましたが、法律違反をいとわないわけではないので、日常的には普通に暮らしています。

むしろ、ざんねんなから、多くの「普通」の人間には、そういう傲慢さが心のなかに潜んでいます。

人間の感情というのは、実に厄介ですね。

結局「逃げるが勝ち」なのか


このように、対人関係は相手のあることですから、自分の努力だけではどうにもならないときもあります。

本書の最終章では、「異情」な人に振り回されないようにする最終手段は、結局「逃げる」ことだとされています。

つまり、自分の「異情」は自分で気をつければいいけれど、相手の「異情」は相手次第。

しかも、それは「異情」ではなく、本物の「異常」の場合もあるからです。

私も若い頃は、「異情」な人に出会ったら、議論して正々堂々と決着をつけようなんて考えたこともありましたが、最近になってやっと、不毛なことかなと思うようになりました。


ただ、「逃げる」といっても、うまく逃げられればいいのですが、問題は、相手が「異情」を超えて「異常」な人であることをわかってから逃げても、もう遅いこともあるということです。

相手が怒りをエスカレートさせ、もし腹いせに、争点でっち上げの言いがかり裁判でも仕掛けられたら、こちらは嫌でも弁護士をつけて全部反論して相手にしないと、裁判は負けてしまうのです。

執念深い人の中には、自分が多額の弁護士費用をかけても、とにかく相手を困らせることができるならそれでいい、という捨て身の方針で、嫌がらせ訴訟を行う人はいるのです。

民事裁判の半分以上が「和解」といわれていますが、実はそのような「異情」な提訴が、ゴロゴロしていることも背景にあるのです。

つまり、先方さえその気なら、そういう人に捕まってしまったら、「異情」もとい「異常」な人からは逃げられないのが現代です。

私も、かつてそういう「逆恨みによるスラップ訴訟」にひっかかったことがあります。

いずれは書こうと思っていますが、先方はこのブログを読んでいる可能性があるので、具体的に書くことは控えますけど(汗)。

ですから、本書の「対策」には限界があり、「逃げるが勝ち」ということは、常に頭の片隅に入れておいたほうが良いということです。

みなさんは、「異情な人」との対人関係(コミュニケーション)に悩まれていませんか。

「異情」な人々 - 和田秀樹
「異情」な人々 - 和田秀樹
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赤面症

君子危うきに近寄らず
by 赤面症 (2024-03-22 01:22) 

starwars2015

現在サービス業に携わっていますが、「必要以上にキレる」お客様が
増えているように思います。開始時間に遅れてきて、書類不備で
確認のためお待ちいただくと、いつキレるかヒヤヒヤします。
by starwars2015 (2024-03-22 01:34) 

kame

かつてはいました。
アンダーグラウンドな世界での絡みだったので、『その筋』で片付けました。

by kame (2024-03-22 01:51) 

mm

異情な人とのコミュニケーション、悩んでいますが、むしろ、こちらが振り回されて異情にならないようにするのが厄介。ついこちらも感情的になったりしがちなので。
by mm (2024-03-22 06:54) 

mayu

相手次第でそうなるとか、状況によって一時的にそうなるとか、ありそうですが、
基本的に自己中なようにも思います。
by mayu (2024-03-22 08:00) 

Take-Zee

おはようございます!
なるたけ、トラブルに巻き込まれないよう・・
静かに生きてます (^-^)!

by Take-Zee (2024-03-22 08:50) 

pn

絡まれて逆にこっちが異常になる日もあるだろうからなぁ(^_^;)
by pn (2024-03-22 11:45) 

AKAZUKIN

ここ数年は「ややこしい人」を避けて暮らしています。
何かあっても平常心を忘れずに対応するのが一番良さそうですねー。。
by AKAZUKIN (2024-03-22 12:03) 

扶侶夢

確かに増えましたね。社会の考え方の変化によるものだと思っています。
by 扶侶夢 (2024-03-22 13:06) 

コーヒーカップ

元女房がそうでしたね。
うまく回ってるうちはいいのですが・・・
「金払っていれば何言ったって何したって良いんだ」という世の中の考えが良くないと思います。
by コーヒーカップ (2024-03-22 18:52) 

そらへい

こちらが悪いかどうかはともかくとして
話していてかみ合わない、通じないと思ったときは
それ以上無理はしませんね。

by そらへい (2024-03-22 19:41) 

夏炉冬扇

コメント欄まで。ありがとうございました。
by 夏炉冬扇 (2024-03-22 20:09) 

mau

他の人も使う用語にはならなそうな気持ち
by mau (2024-03-23 02:14) 

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