『新幹線大爆破』(1975年、東映)が、草なぎ剛主演で“リブート” [懐かし映画・ドラマ]
今も根強いマニアによって語り継がれている『新幹線大爆破』(1975年、東映)が、草なぎ剛主演で“リブート”されることが決まり話題になっています。本作は、高倉健が東映時代に出演した初めての町工場経営者で事件の犯人役。同作にはギャラが通常の半額で出演したそうです。
まず最初に、私も初耳でしたが、リメイク(お色直し)とリブート(再始動)は、どちらも既存の作品を新しい形で再現するプロセスですが、その目的と方法が違うらしいですね。
リメイクは、過去に作られた映画やドラマなどの作品を、新たなキャストや技術で再制作すること。
リブートは、同じ原作やコンセプトをベースにしつつ、全く新しいストーリーや設定で作品を一から作り直すことだそうです。
つまり、元作品を、現代に合わせて翻案したもの、ということらしいです。
草彅剛「高倉健さんの気持ちを受け継ぎ全力で挑みます」と意気込み! パニック映画の金字塔『新幹線大爆破』がリブート決定|ムビコレ | 映画・エンタメ情報サイト https://t.co/RcXn8DxhmX
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) March 20, 2024
それはそうでしょうね。
1975年と2024年では、新幹線をとりまく技術や時代的価値観が全く変わっていますから、2024年版が「リメイク」ではストーリーが成り立ちません。
それだけでなく、映画界をとりまく事情も変わっています。
当時はまだ映画会社の自社配給が活発に行われていて、顔なじみの専属俳優が大勢いましたから、1975年版は、まさに主演から端役まで「東映オールスター」だったんです。
今は、映画のあり方も俳優の所属も様々ですから、「Netflixと共に映画化」とのことですが、ネットドラマのひとつと見たほうがいいのかなという気がします。
『新幹線大爆破』とはなんだ
佐藤純弥/新幹線大爆破(1975)観賞
— およじ (@oyojii) March 17, 2024
めちゃ最高だった。当時よくここまでスリリングな作品が作れたなと驚く。フォントかっこよすぎ pic.twitter.com/m5RbUSSu9w
では、1975年版のあらすじをご紹介します。
新幹線ひかり109号に、速度が時速80キロ以下になると爆発する、という爆弾脅迫事件が発生。
同じ爆弾を仕掛けたという北海道のSLは、本当に爆発しました。
計画したのは、倒産した計器製造会社の元社長(高倉健)と従業員(織田あきら)。
そして仲間の裏切りで脱落した元学生運動家(山本圭)。
それを聞きつけた爆弾の売り主・藤尾(郷鍈治)も、計画は知っています。
ただし、途中から話を聞き、弱みに付け込んでタカった郷鍈治は無視されたことで、有名な捨て台詞。
「みな、駄目にしてくれっかんな」
これは、結構ネットで使われましたよね。
郷鍈治は当日、微罪で逮捕され福岡まで送られますが、たまたま爆弾を仕掛けた新幹線に乗ってしまったために、「爆弾でドカンはヤダかんな」と、すべてをうたってしまいます。
もっとも、すでに新幹線は走っており、爆弾は動いています。
旧国鉄と警察は、前代未聞の事件の対応において、立場の違いで意見は別れます。
人命第一の生真面目な新幹線当局指令長(宇津井健)、短気で一本気な運転士(千葉真一)、身代金の用意を決断する国鉄総裁(志村喬)、内閣官房長官(山内明)、苦渋の選択で新幹線を田園地帯で止めることを命じる国鉄新幹線総局長(永井智雄)、乗客の安全や犯人の人権よりも逮捕ばかり先走る警察庁捜査第一課(鈴木瑞穂、青木義朗ら)や公安(渡辺文雄)らとの間で様々な葛藤が。
一方車内でも、乗客パニックや、産婦人科医(藤田弓子)がかけつけるも妊婦(田坂都)死産のアクシデント、鉄道公安官(竜雷太)と車掌長(福田豊土)との間で、事件を知らせるかどうかの方針の違いなど立て続けに騒動が勃発。
他の車両はもちろんすべて止め、上り線路に新幹線を横付けに並走させ、お互い100キロで走りながら、両車両間に板を渡して、爆弾の設置した板金を焼き切るためのプロパンガスボンベを移動させるシーンは圧巻です。
松竹の寅さんや、東宝の喜劇・文芸路線をずっと見てきた私は、「これが東映の迫力か」と、子供心に興奮しました。
ちなみに、救援車の運転士は千葉真一の実弟の千葉治郎。千葉兄弟で新幹線を走らせたのです。
その間、織田あきらや山本圭は、警察の追跡で命を落とします。
なんだかんだで、仕掛けた爆弾は無事止められ、主犯の高倉健も500万ドルを手に入れますが、その葛藤で疲れた宇津井健指令長は辞職を表明。
高倉健は、あと一歩で逃げられるはずだった空港で、別れた元妻(宇津宮雅代)と息子を見て動揺。
それが原因で面が割れてしまった高倉健は、警察庁刑事部長(丹波哲郎)の命令で無慈悲にも射サツされてしまいます。
大事なことは人を描けているか
ということで、追い詰めた犯人を射サツするのか、というラストほか、鉄道マニアから様々なツッコミが入りましたが、それは、本作が愛すべき作品だからこそ。
以前、本作について、『スピード』(1994年、米)のパクリか、なんてコメントもWeb掲示板で見かけましたが、
それ、逆ですからね。
なんでも洋画のほうが上である、という先入観を持っている日本人て、いまだにいるんだな、と思いました。
それはともかくとして、本作がどうしていまだに人気があるかといえば、息詰まるストーリーもさることながら、登場人物の設定が、役者のキャラクターとぴったりだから、リアリティがあって感情移入しやすい、ということもあると思います。
つまり、新幹線はひとつの道具で、要は人を描いているのです。
草なぎ版も、そこを大事にしてほしいな、と思います。
もっとも、私は最近の役者はよく知らないので、そういう意味での感情移入はむずかしいかもしれませんが。
『新幹線大爆破』は、ご覧になりましたか。
新幹線大爆破 - 高倉健, 千葉真一, 宇津井健, 丹波哲郎, 山本圭, 織田あきら, 田中邦衛, 渡辺文雄, 佐藤純彌, 小野竜之介, 佐藤純彌
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JRは協力してくれるでしょうか
前回は駄目だったみたいですが
by 赤面症 (2024-03-21 01:07)
映画で脅迫と言えば「天国と地獄」の世代のわたくし。
この映画は知らないです。
by mm (2024-03-21 06:20)
うん東映なら射殺だね(笑)
しかしスピードのパクリと言う人が居るとはなぁ、東映スパイダーマンの影響か?
by pn (2024-03-21 06:24)
おはようございます!
いっとき、こういう物騒な映画が流行りましたね!
by Take-Zee (2024-03-21 09:19)
新幹線の速度設定や救出方法がどうなるのかワクワクします。
特撮の出来ぐあいも注目されるでしょうね。
by starwars2015 (2024-03-21 10:21)
テロリストですね。
JRはあまりいい気持ちしないような気がします。
by コーヒーカップ (2024-03-21 16:44)
高倉健に千葉真一さらに丹波哲郎に宇津井健と
そうそうたるメンバーが。今の時代、このメンツで
制作したら人件費だけで終わりそう・・・
by tai-yama (2024-03-21 22:53)
みなさんコメントありがとうございます。
またしても説明不足でしたが、もともとは(旧)国鉄側から描くつもり(宇津井健主人公)だったのが、高倉健が、「ぜひ出演させてほしい。出演料は半額でいい」と申し出たことから、脚本を犯人中心に書き換えたというエピソードが伝わっているのです。
「網走番外地」だけではない、という実績を作ったことは、東映を離れてからの仕事の広がりにつながったのではないでしょうか。
by いっぷく (2024-03-21 23:12)
リブート、初めて聞いた用語です
by mau (2024-03-22 00:42)
懐かしいです、昔のバイクには速度警告灯と言う80km/h以上になるとランプが点灯する(車の100km/h以上になるとキンコンと鳴るのと同じ)ようになっていたのですが、それを悪用して作られた爆弾でしたね。
車両を並走させたり転轍機を制限を上回る120km/hで通過させたりとハラハラさせられる一方、反転フラップ式(いわゆるパタパタ)の行き先表示板等、今見ると懐かしい設備も楽しめますね。
by アコモ (2024-03-24 05:34)