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重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相 (佐々淳行著、SB新書) [社会]

重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相 (佐々淳行著、SB新書)

重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相 (佐々淳行著、SB新書)は、著者が関わりを持った事件を回顧しています。著者は、警備幕僚長として、東大安田講堂事件、連合赤軍あさま山荘事件などで危機管理に携わりました。



先日、重要指名手配容疑者が、末期がんで死亡直前に本名を名乗っことが話題になりました。

1975年4月に、中央区内の韓国産業経済研究所の入り口付近に爆発物を仕掛け発動させた、爆発物取締罰則違反容疑です。


マスコミでは、当時の事件を一部振り返る企画もありましたが、昭和40~50年代の事件について、警察庁キャリア、防衛官僚、防衛施設庁長官、初代内閣安全保障室長を歴任しながらそれらに関わってきたのが著者、佐々 淳行(さっさ あつゆき、1930年12月11日~2018年10月10日)さんです。

退任後は陣笠議員にはならず、フリーの危機管理評論家として著作・講演活動を続け、今回のような事件があると、テレビ番組にコメンテーターとして出演していました。

警察・防衛官僚ですから、日本の戦後史を語る上で欠かせない事件の語り部でもありました。

その経験をまとめた書籍です。

三島由紀夫「自決」事件の真相


本書の目次を見ると、これだけの事件を語っています。

日本国憲法公布・施行
東京裁判
公職追放
朝鮮戦争
サンフランシスコ平和条約
帝銀事件
二・一ゼネスト禁止事件
下山事件・三鷹事件・松川事件
昭電疑獄・造船疑獄
血のメーデー事件
安保闘争
浅沼稲次郎暗殺事件・嶋中事件
東大安田講堂封鎖事件
あさま山荘事件から沖縄ひめゆりの党事件まで
ライシャワー事件
三島由紀夫事件
沖縄返還時の密約報道、西山事件
金大中誘惑事件
ミグ25事件
宮永スパイ事件
ロッキード事件
リクルート事件
東京佐川急便事件
地下鉄サリン事件

個人的に興味深かったのは、1970年(昭和45年)11月25日、作家・三島由紀夫(本名・平岡公威)さんが、自衛隊に憲法改正の決起(クーデター)を呼びかけた後に、割腹自殺をした事件です。


ノーベル文学賞候補にも挙げられていた、昭和を代表する作家であった三島由紀夫さんは、自ら『楯の会』という民兵組織(軍隊的な集団)を結成しました。

その隊員たちを率いて、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地にある東部方面総監部を占拠。

総監・益田兼利陸将を人質にとりました。

そして、日の丸鉢巻姿で、バルコニーから自衛隊のクーデター蹴起を呼びかけたものの、Wikiによると自衛官たちからはやじや反論があっりました。

要するに、自衛隊の共感は得られませんでした。

すると、約10分の演説の後、「貴様ら、それでも武士か!」と怒鳴って総監室に消え、古式に則り割腹自決の上首をはねさせたのです。

著者は、三島由紀夫 さんとは家族ぐるみの長い付き合いがあったそうです。

三島由紀夫さんの妹さんは、著者のお姉さんと大学の同級生で親友。

外務省に入っていた三島由紀夫さんの弟さんは、著者の東大同期で交遊があったそうです。

自決で、もっと大きな混乱になることも予想されましたが、著者が警備第一課長として、機動隊の大量集中配備を命じたことによって、事態の早期収拾に成功していました。

三島由紀夫さんに対して著者は、「もうゲバ闘争は終わりです。あなたも文学の世界に戻られてはいかがですか」と説得したといいます。

三島由紀夫と介錯人・森田必勝のイ体に近づくと、足元の絨毯がおびただしい量の血液がしみこんで、踏み込むと「ジュクッ」と音を立てた。あの不気味な感触は、どれほど月日が経っても忘れられないでいる、と描いています。

文学座を割った喜びの琴事件


私は、三島由紀夫さんというと、新劇の文学座を割った出来事『喜びの琴事件』を思い出します。

三島由紀夫さんが文学座の舞台脚本を書いていたとき、『喜びの琴』という劇が、反共主義思想を信じる主人公として描かれていた政治色の強い作品であったために、キャスティングされた北村和夫さんがセリフの一部を拒絶しました。


そこで、杉村春子さんら幹部は上演中止とし、


三島由紀夫さんは退団。

すると、三島由紀夫さんに心酔していた大幹部の中村伸郎さんを筆頭に、知名度のある俳優が大量に離脱しました。


これは、左翼的立場にある杉村春子さんが、劇に政治を持ち込み三島由紀夫さんを切ったようにいわれますが、それは三島由紀夫さんの側にもいえる“お互い様”で、杉村春子側を一方的に悪く言うのはおかしいと思います。

もっとも、時がすぎると過去の話になるらしく、北村和夫さんは田宮二郎版『白い巨塔』で、財前五郎側の代理人になり、東教授役の中村伸郎さんと対決という設定で共演しています。

一方、杉村春子さんは、いったん離脱した人は絶対に許さず、文学座の復帰はもちろん、テレビドラマや映画の共演も一切拒絶したそうです。

政治、文学、演劇界に一石を投じた三島由紀夫さんの作品は、読まれたことはありますか。

重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相 (SB新書) - 佐々 淳行
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赤面症

昭和は作家も俳優も評論家も、みんな奥の深い方々でしたね
by 赤面症 (2024-02-02 01:09) 

mm

おはようございます^^
三島由紀夫さんのご本、一度読みかけましたが、何か自分と違うものを感じて途中止めました。何と言う名のご本だったかも思い出せない。
by mm (2024-02-02 06:18) 

Take-Zee

おはようございます!
三島由紀夫事件は今でも何だったのか
理解できないでいます (>_<)
by Take-Zee (2024-02-02 08:43) 

pn

今の政治家は確かに暗殺されないから好き勝手出来るよね。
ネットで言いたい放題の人達と大差無いか。
by pn (2024-02-02 13:00) 

mau

先日、テレビで演出をしている三島由紀夫氏の映像を見ました。
by mau (2024-02-03 00:08) 

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