アスペルガー症候群の苦労と苦悩を漫画化した『心が読めない』(なかのゆみ著) [発達障害]
アスペルガー症候群の苦労と苦悩を漫画化した『心が読めない』(なかのゆみ著)は、『難病が教えてくれたこと』第3巻に収録されています。アスペルガー症候群の頻度は10000人に91人といわれ、原因となる遺伝子は見つかっていないそうです。
『心が読めない』は、『難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~』の3巻に収録されている、なかのゆみさんの作品です。
アスペルガー症候群というのは、知能や言語能力など知的な障害のない高機能自閉症のことです。
対人関係の齟齬
こだわり
「行間」を読めない言葉の使い方の「誤り」
などが見られ、周囲からは、自己中心的な人、空気が読めない人と思われてしまうことがあります。
言葉は、辞書に書かれているとおりに認識するので、言葉の裏の「ホンネ」は読みません。
日本のような、ダブスタや“あうんの呼吸”に満ちた文化は、さぞ生きづらいことでしょう。
いつも同じ行動パターンで生活していることが多く、急に予定を変更したり、今行っている作業を変更することで、脳内が混乱することがあります。
前頭葉のはたらきに障害があるため、他人の身になって考えることも苦手です。
ただし、その「生真面目さ」から、決まった課題を与えられたり、ルールがはっきりしている環境だったりと、パターン化した活動において高い成果を上げることがあります。
また、「勉強ができる」としても、コンスタントに優秀ではなく、科目によって得手不得手がはっきりした「まだらな秀才」であることが少なくありません。
一部に誤解があるのですが、アスペルガー症候群に限らず、発達障害=天才、という見方があるのですが、そんな単純なものではないのです。
アスペルガー症候群の頻度は10000人に91人(イギリス自閉症協会の報告)といわれ、自閉症の遺伝子は見つかっていないそうです。
マイナス思考にならない環境づくりが大切
アスペルガー症候群は、小学5年生の片桐純一です。
「僕は、美名ちゃんのことが知りたいです。家族のことや、体重、身長。なんでも知りたいです」
クラスの子がからかいます。
「美名の体重は105kgだよ」
「ありがとうございます」
女の子が質問します。
「片桐くん。美名ちゃんの、どこが好きなの?」
「幼稚園の時、僕の誕生日にタンポポをくれました。3月30日の夕方4時頃です。南公園で咲いていた10本のタンポポで、長さは10cmから12cmです」
警察の供述調書じゃあるまいし。
事実ではなくて、その時の気持ちを聞いているのに。
女の子は呆れてしまいました。
給食では、偏食もさることながら、その言い分が振るっています。
「片桐くん。シチュー好きでしょ。どうして食べないの」と先生が尋ねます。
「家ではF食品のルーなのに。これは違います!!それに小山先生。香水をつけてるから、近くに来られるととても嫌です!!」
「いつもと違う」と、拒絶反応を起こすわけですね。
それにしても、香水の件はまずいですよね。
先生も人間だから、へそを曲げるでしょう。
宿題を忘れた時は……やんちゃな北村くん。
「北村くん。漢字の宿題、プリント忘れてきちゃったの?」
「はい、うちの犬がプリント食べちゃったんです」
「ハハハ」
「じゃあ、片桐くんもそうなの?」
「僕は犬を飼っていません。ちなみに犬は、紙を食べません」
「ったく、冗談が通じない奴だな」と、しらける一同。
国語の時間。
「片桐くんは漢字が得意だから、黒板に書いてください。片桐くんにどんな漢字を書いてほしいですか」
「はい。レモン」
「ゆううつ」「キリン」「バラ」……
片桐純一は、檸檬、憂鬱、麒麟、薔薇と全部書いていきます。
「片桐くん、すごいね。漢字検定試験、受けてみたら」
「はい、僕は漢字検定試験受けます。僕は文字のカーブの形にうっとりします。もっと書きます」
「変わった子」は、横並びの好きな日本人の集団において、いじめの対象になります。
本人は、学校に行きたくないと言い出します。
家で、楽器のキーボードを練習すると。
上達ぶりが素晴らしく、親なのにほれぼれするほどです。
母親は、純一をメンタルクリニックに連れていきます。
「人と目を見て話さないところや、仕草、食べず嫌い、友達を作れない、知能に問題がなく見た目は普通ですね。……アスペルガー症候群です。アスペルガー症候群は、自閉症の一つのタイプで、脳の発達障害です」
「えーつ、自閉症!!」
「一見、自閉症に見えない自閉症といっていいでしょう」
「そうですか。治りますか」
「残念ですが治りません。なるべく長所を見つけて、褒めてください。この病気は、真面目で規則を頑なに守ります。曖昧なことを言うと、本人は意味がつかめないので、具体的に言ってください。『ゴミをゴミ袋に入れて台所の床を雑巾で拭いてください』と言えば、やってくれます」
「あ、そうですか。『ちょっとその辺を片付けてよ』って言ってもわからなかったんですね。だから学校でも、掃除ができなかったのね」
「ルールをきちんと作ってあげると、本人も助かります」
「純一は普通学級に行ってるんですが、イジメがあるようです。特殊学級(←漫画のママ)のほうがいいのでしょうか」
「この病気(←漫画のママ)は個人差があります。純一くんは特殊学級(←漫画のママ)に行って、好きなことに集中するほうがいいかもしれません」
ここは漫画の間違いです。アスペルガー症候群は「病気」ではなく「障害」、「特殊学級」ではなく「支援学級」でしょう。
医師は続けます。
「アスペルガー症候群は300人に1人いるといわれます。この病気(←漫画のママ)の人たちは、ソムリエになったり、弁護士やプログラマー、音楽家、医師、管制官、官僚、役人、NASAにも多くいるようです。軽度の人は、ビル・ゲイツやニュートン、アインシュタインなど有名です。男子に多い病気(←漫画のママ)ですね」
「でも、すぐれた人達が多いんですね」
「さあ、それはどうでしょう。大人になって強迫性障害、不安障害などの合併率が極めて高くなることもあります。その人達の多くは、虐待の被害者だったことが最近わかってきました。純一くんがマイナス思考にならない環境づくりが大切です。嘘をつけない裏表のない正直で真面目なところを伸ばしてやってください」
診断後はどう育てたか
それ以来、家ではスケジュール表を作り、純一には余計な神経を使わせて混乱させないコミュニケーションを両親は心がけました。
そして、母親は、笑顔や、人とあった時に「こんにちは」と挨拶する訓練をさせます。
うまくできたからといって、うっかり頭を撫でると、純一は混乱します。
運動もさせるようにしました。
2学期からは、同じ小学校の支援学級に移ることにしました。
純一はイキイキとしています。
パズルもすぐにできました。
そして、中学に進学。
両親は、高校に行かせるかどうか考えます。
大検も視野に入れます。←以前は支援学校高等部は「高校」ではなく「各種学校」扱いでした。
合唱コンクールでは、キーボードのスキルを生かして、ピアノを演奏。
生徒や保護者を驚かせます。
普通学級時代の同級生とWデートすることになりましたが、1人が都合が悪くなってこれなくなったものの、純一は雪の降る寒いところを朝から晩まで待って、肺炎になってしまいました。
それでも気持ちに裏表がないので、決して人を恨むことはありません。
そして、走り高跳びの大会では、見事に優勝しました。
両親が、医師のアドバイスを守って、純一の「裏表のない正直で真面目なところを伸ばしてや」ったことで、よい結果が出ているのです。
まあ、実際にはなかなかこうはうまくいかないかもしれませんが、障碍を多くの人に理解してもらいたいので、アスペルガー症候群の子弟をもつ親御さんだけでなく、そうでない人にもぜひ本書はお読みいただきたいと思います。
『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって、難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。
本作が収録されている『難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~』3巻には、トゥレット症候群、アペール症候群、先天性上顎欠損症、寄生性双生児などの話が載っています。
ネットの掲示板で、変なことを書くと、「アスペ」と罵られることがありますが、アスペルガー症候群は「おバカ」とは全く違いますからね。
難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~ 3巻 (家庭サスペンス) - なかのゆみ
2023-10-30 01:00
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コメント(7)
ちゃんと育てられるかどうか、親の度量が試されますね
by 赤面症 (2023-10-30 01:21)
おはようございます!
60年前ならちょっと変わった奴で普通に
友達だったかも知れません・・
男と男が結婚する時代、なんでも病気にする
ようですね。
by Take-Zee (2023-10-30 07:23)
問題なのは周りの方だったりもしますよね、病気障害犯罪歴気にするのは分かるけどそもそも普段周りなんて気にしてない人多いのになんかあると騒ぎ立てる奴らがいるから話がそれて行く。
by pn (2023-10-30 09:39)
「アスペルガー症候群」…果たして病気なんでしょうか?そうだとしたら、それは社会が生んだ「現代病」でしょうね。時代は常に新しい病気を生み出します。
by 扶侶夢 (2023-10-30 10:02)
>時代は常に新しい病気を生み出します。
本文でも書きましたが、アスペルガー症候群は病気ではなく障碍です。
で、障害認定は当事者からすると、必ずしも悪いこととは言えないのです。
発達障害を「障碍」として発見したことは、社会の進歩です。
なぜなら、本人の心がけや性格が悪いからではなく、障碍が原因であることが明らかになったからです。
私の長男も、罹災後、だいぶ回復したと思い、取得した精神の障害者手帳を更新しなかったのですが、主治医から「お子さんの名誉のために再度取った方がいい」といわれ、実際にその直後から後遺症の発作が起こったので、周囲の理解と配慮、支援を得られやすくなりました。
「発達障害」という障碍が一般化しなかったら、支援学校や支援学級は、今ほど入学者は増えず、普通学級で肩身の狭い思いをシていたことでしょう。
by いっぷく (2023-10-30 19:46)
アスペルガーの人は、少なくなく、誰の周りにも、居るように思えます。
by mayu (2023-10-30 21:55)
本人が理解し、周りもわかっているなら対処はできそう
ですが、アスペルガーですと病院の診断書で書かれたら
会社に報告できるかと言うと・・・・
by tai-yama (2023-10-30 23:07)