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風の又三郎(原作/宮沢賢治、漫画/片山愁、Jコミックテラス) [仏教]

風の又三郎(原作/宮沢賢治、漫画/片山愁、Jコミックテラス)

風の又三郎(原作/宮沢賢治、漫画/片山愁、Jコミックテラス)は、不思議な少年が谷川の岸の小さな小学校に転校してきた話です。原作者の死後に発表されましたが、原作者にとっては代表作となりました。さまざまな刺激的行動のシーンが漫画化されています。



『風の又三郎』は、宮沢賢治さんの短編小説を片山愁さんが漫画化しました。

ある風の強い日、転校してくる高田三郎という不思議な子どもの物語。

少年は、クラスの子供たちに、風の神の子「風の又三郎」ではないかという疑念とともに受け入れられましたが、1週間でみんなに馴染んだと思ったら、父親の仕事の都合で、また風とともに去っていきました。

物語は終始強い方言と、民話的な内容が特徴的な作品です。

宮沢賢治生誕100周年企画でのコミカライズと銘打っています。

本書はKindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

転校生は風の神の化身か


本作は、日記のように日にちが書かれています。

漫画も、最初のコマで、有名な原作の書き出しが書かれています。
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう

舞台は、谷川の岸にある小学校です。

1年生から6年生までが、ひとつの教室で学ぶ小さな学校です。

2学期が始まった9月1日。一郎と耕助が登校してみると、もう席についている子供がいました。

「だれだ、時間にならないに教室へはいってるのは。」

一郎は、窓へはいのぼって、教室の中へ顔をつき出して言いました。

「お天気のいい時教室さはいってるづど先生にうんとしからえるぞ。」

窓の下の耕助が言いました。

すると、びゅォーっという風とともに、子供は見えなくなりました。

5年生の嘉助がすぐ叫びました。

「ああわかった。あいつは風の又三郎だぞ。」

授業が始まり、担任の先生が、風とともに消えた子供を転校生として紹介しました。

「高田三郎さんです。」と担任。

高田三郎のお父さんは、モリブデンという鉱石を掘るために来たそうです。

高田三郎は標準語をつかいます。

しかも翌日、高田三郎が運動場を歩くと、風がざっと吹きます。

嘉助は、彼の正体がいよいよ「風の又三郎」(風の神様の子)だと思い込むようになりました。

4日の週末、高田三郎は、嘉助や6年生の一郎たちと共に高原に遊びに行きます。

そこで逃げ出した馬を、嘉助と高田三郎は追いました。

深い霧の中で強風が吹き、意識を失った嘉助は、高田三郎がガラスのマントと靴を身につけて、空に飛んでいく幻を見ます。

5日には、ぶどうを取りに行き、高田三郎にいたずらをされた耕助は、

「うあい、うあいだ、又三郎、うなみだいな風など世界じゅうになくてもいいなあ、うわあい。」と憎まれ口を聞きます。

すると、高田三郎はこう問います。

「風が世界じゅうになくってもいいってどういうんだい。いいと箇条をたてていってごらん。そら。」

耕助は最終的に答えに詰まると、高田三郎はそれ以上の追求はせず、耕助と和解します。

8日には、みんなで川で泳いでいます。

なんだかんだで、高田三郎はみんなに馴染みつつあります。

まあ、狭い田舎なので、そうなるわけですが。

高田三郎がもぐると、急に天気が悪くなったので、「雨はざっこざっこ雨三郎。風はどっこどっこ又三郎」と子供たちが叫びました。

そして、12日目の月曜日。

台風が来ました。

嘉助はは、高田三郎がいなくなる予感を抱きます。

そして、学校に着くと、先生はやはり三郎が転校したと皆に告げました。

「ここのモリブデンの鉱脈は当分手をつけないことになったためなそうです。」と説明する担任。

「そうだないな。やっぱりあいづは風の又三郎だったな。」と、嘉助が高く叫んだところで物語は終わっています。

高田三郎は仏陀だったのか



宮沢賢治作品は、いずれも仏教的なモチーフを感じます。

私は、今回の『風の又三郎』について、高田三郎は仏陀(悟りを開いた人)、すなわちお釈迦様を想定しているのではないかなと思います。

宮沢賢治の信仰する法華経の日蓮宗は、本尊を「久遠実成の釈迦如来」としています。

もともと大乗仏教には、「一切衆生悉有仏性」といって、わたしたちは誰でもお釈迦様と同じ悟りを開く種を持ってこの世に生まれて来た、つまり誰でも菩薩(悟りを求める修行を行う者)であるということになっています。

そして、法華経というのは、面白いお経で、前半では「お釈迦様はこの世にはいないけれど、『法華経』がお釈迦様に代わって、あなた方の菩薩としての存在を保証をシてくれます」と書かれています。

つまり、善行を積み、ナンミョーホーレン……と唱えていれば、悟りを開けるということだったのです。

が、なぜか後半は内容がかわり、実はお釈迦様は死んではおらず、常にこの世の何処かに隠れているので、わたしたちはいつでもお釈迦様を供養することができる。それによって菩薩としての存在を保証をシてもらえるのだということになっています。

途中から書き加えられたみたいなんですけどね。

実在した生身の人間のお釈迦様は、仏舎利と言って遺骨もあるわけですが、永遠に生きてしまうと、大衆はいつまでも依存するから、表向きはシんだことにして、でも本当は不シでわたしたちを見守っている(方便品)とお経には書かれています。

信仰のない人なら、「まじかよ」と思うかもしれませんが、お釈迦様の名前で信仰心を高めたかったのかもしれません。

とにかく、わたしたちをいつどこでも見守っている、というのが「久遠実成」です。

で、本作の高田三郎くんが、そうだったのではないか、と思われるわけです。

つまり、釈迦如来はあなたたちのすぐ近くにいて、あなたたちを見守っているんですよ、ということを本作で言いたかったのではないかと思います。

それにしても、夏目漱石、芥川龍之介⇒浄土真宗、泉鏡花⇒真言宗など、仏教的なモチーフを感じる作品はこれまでにもご紹介しましたが、宮沢賢治の作品は、もっとも明確にそれを感じますね。

さらに法華経モチーフの強い作品もあるので、また後日ご紹介したいと思います。

風の又三郎 - 片山愁, 宮沢賢治
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赤面症

日本はやっぱり仏教の国なのですか
by 赤面症 (2023-09-28 01:13) 

pn

若い頃恥ずかしながら又三郎は素浪人の話かと思ってたのでこんな話だったと知った時自分を笑いました(笑)
by pn (2023-09-28 06:14) 

Take-Zee

おはようございます!
この本は読みました (^-^)!
と言ってももう60年もむかし・・・小学生!!
by Take-Zee (2023-09-28 08:27) 

ミケシマ

賢治の作品には独特な魅力がありますよね。
作品がどれも有名になり多くの人に読まれることになる…それを知らずに亡くなってしまった賢治がちょっと不憫です。
熱心な日蓮宗徒だったということを知ってから作品を読み、幼い頃とは違った感想を持つようになりました。
by ミケシマ (2023-09-28 12:41) 

そらへい

夏目漱石、芥川龍之介、泉鏡花、宮沢賢治
いずれも仏教的視点からとらえたことはありませんでしたね。
by そらへい (2023-09-28 21:23) 

tai-yama

モリブデンはレアメタルですね。
現在の主な産地は中国なので中国に行ったのかも(笑)。
by tai-yama (2023-09-28 23:19) 

よいこ

先日文庫本でよんだばかりです。
確かに仏教ベースで読むとわかりやすいかも
漫画の方が楽しい気がします
今回、同じ本の中にある「フランドン農学校の豚」がすごい作品だなぁと何度も読み直してしまいました
by よいこ (2023-10-01 17:44) 

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