SSブログ

悪女(わる)(深見じゅん、講談社)「普通のOL」の奮闘・成長 [社会]

悪女(わる)(深見じゅん、講談社)「普通のOL」の奮闘・成長

『悪女(わる)』(深見じゅん、講談社)は、コネ入社の期待されていないOLが、一目惚れしたエリート社員に釣り合う女性になるべく奮闘・成長して偉くなる話です。1988年~1997年まで雑誌に連載され、1992年にドラマ化。2022年には30年ぶりにドラマ化されました。

漫画が連載されたのは、『BE・LOVE』(講談社)。



1991年、第15回講談社漫画賞一般部門を受賞しました。

連載開始は、まだ「昭和」時代でした。

にもかかわらず、30年以上たち、元号を令和に変えた2022年に、2度目のドラマ化がされたのです。


それはすなわち、作品に普遍的な価値があるからにほかならないと思いますが、ではその価値を改めて考えてみます。

T・Oさんに会うために……


『悪女(わる)』の主人公は、田中麻理鈴(たなかまりりん)。

姓と対象的に、めったにお目にかかれない名前は、父親がマリリン・モンローのファンだったからとか。

三流大学を、四流の成績で卒業。

世界に誇れる一流企業である近江物産には、親類による三流のコネで入社。

大企業はコネ入社当たり前で、そのコネにも、会社としてのメリットで考えるといろいろレベルがあり、田中麻理鈴のコネはどうでもいいコネのため、彼女は資材管理室という、一応雇用しましたというだけのどうでもいいセクションに配属されます。

入社2日目に麻理鈴は、コンパクトを拾ってくれた男性社員に一目惚れ。

その後、イニシャルT・Oを手がかりに、その男性社員を「星の王子さま」として探し始めます。

そして、その麻理鈴の一途な気持ちこそが、その後のストーリーに貫かれていますが、いかにも「昭和」らしい展開ですよね。

配属先の、資材管理室で出会った先輩女性社員は峰岸雪。

ちっとも優等生社員ではない麻理鈴ですが、根拠もなく楽天的なところに伸びしろを見たのか、「出世したくない?」と問いかけ、出世の裏技を教えてくれます。

その内容は、Wikiに枚挙されている通り、以下の様なことです。

お掃除担当のおばさんの名前を覚える
社史を覚える
重役全員の顔と名前を覚える
一通りのビジネス書に目を通す
オセロに強くなる
外見だけでなく内面的な部分も鍛えて強くなる

偉い人にゴマをするのならともかく、お掃除担当のおばさんの名前をどうして覚えなければならないのか。

近江物産では、人事部が社員には極秘で清掃員の女性達に社員達の評判を聞いて、社員達の立ち居振る舞いを調査しているのです。

三流大学を四流の成績で卒業している麻理鈴でしたが、偉くなってT・Oさんに会いたい、という一心で峰岸の言いつけを守り、お掃除担当のおばさんの名前を覚え、おばさんたちとは「〇〇さん」と名前を呼んで挨拶していました。

そこで、清掃員の女性達は人事部のヒアリングで、「清掃員に対して挨拶してくれるのは麻理鈴だけ」である事を話したり、麻理鈴に対して社内の人間関係の助言をしたりもしていました。

人事部では、エレベーターで部長から麻理鈴に挨拶したことで、周囲の社員たちはびっくり。

さらに、麻理鈴は偶然32階で会社の偉い人とオセロを楽しむ関係になり、そこでも顔と人柄を覚えてもらいます。

つまり、峰岸の枚挙した出世の裏技は、社員としてのブランディングにドンピシャで必要なことだったわけです。

しかし、そこで出世してハッピーエンドになるほど、甘くありません。

彼女の失敗や、アンチの嫉妬などもあり、紆余曲折が続きます。

何しろ、当時の連載は足掛け10年ですから、いわば10年間、行きつ戻りつがあったわけです。

ま、サラリーマン社会、ましてや女性社員の世界というのは、そういうものなんでしょう。

それだけに、ストーリーは主要な部分において、当時しか通用しない話ではなく、現在でも通じるかなり普遍的な価値をもったものではないかと思います。

1992年のドラマ



1992年には、読売テレビの製作、石田ひかり主演でドラマ化されています。

私は、この1992年版ドラマの大ファンなのです。

本作と『東京ラブストーリー』には、バブルが終わって、でも今のようにデフレが30年続くどん底ではない、落ち着いたオフィスものを描けるいい時代だったことを感じます。


田中麻理鈴を石田ひかりが演じたほか、峰岸役は倍賞美津子、小野役は布施博でした。

最初は麻理鈴を軽蔑し、罵倒していた小野が、彼女の裏表のない生き方を信用できると感じ、次第に理解を示していくストーリー展開がよかったですね。

女性のずる賢さを、鶴田真由が上手に演じていたし、犬塚弘の年上部下、高品格演じるオセロ友達のおえらいさんなど、主要なキャストはみんな適役でした。

女性の社会進出と言うと、つんのめって「男に負けまい」と近寄りがたい切羽詰まった頑張りを見せるか、こういってはなんですが、「女を利用して」のし上がるか、どっちかのタイプが多いのですが、麻理鈴はそのどちらでもなく、自分軸を崩さずに社会の荒波を泳いでいることが、多くの人の共感を呼んだのかもしれません。

若い方は、2022年版のドラマでご存じの方も多いと思いますが、原作も読み応えがありますよ。

悪女(わる)(1) (BE・LOVEコミックス) - 深見じゅん
悪女(わる)(1) (BE・LOVEコミックス) - 深見じゅん

悪女(わる)ドラマ化記念スペシャル合本(6)【電子書籍】[ 深見じゅん ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
悪女(わる)ドラマ化記念スペシャル合本(6)【電子書籍】[ 深見じゅん ] - 楽天Kobo電子書籍ストア

nice!(141)  コメント(6) 
共通テーマ:学問

nice! 141

コメント 6

赤面症

布施博は何処へ\(^o^)/
by 赤面症 (2023-07-20 01:04) 

コーヒーカップ

知らない俳優さんいっぱいですね

by コーヒーカップ (2023-07-20 03:55) 

pn

俺は清掃のおじちゃんですがその会社の内情なんて知ったこっちゃない(笑)
by pn (2023-07-20 06:14) 

tai-yama

峰岸さんは何故出世しなかったのか(疑)。
この当時だと、朝一番に来てお茶汲みなんていう
風習もあったような気が(笑)。
by tai-yama (2023-07-20 23:19) 

yokomi

出世の裏技6箇条は今でも通用しますね(^_^;) 
掃除担当のおばさんはたまに良い情報を持っていることも。
オセロは囲碁将棋でも良いかと。要は状況把握、先読み、組み立ての力を付ける為のものかと。
他はその通りです。
私も見たくなりました(^_^;)
by yokomi (2023-07-20 23:40) 

いっぷく

>出世の裏技6箇条は今でも通用しますね
そうですね。
世渡りベタな私が、実践できるかどうかはわかりませんけど(苦笑)できた人は出世しますね。
by いっぷく (2023-07-21 23:58) 

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます