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『でっちあげー福岡「殺人教師」事件の真相ー』を仏教から考える [仏教]

『でっちあげー福岡「殺人教師」事件の真相ー』を仏教から考える

でっちあげー福岡「殺人教師」事件の真相ー(福田ますみ著、新潮文庫)は、2003年に起こった福岡市教師冤罪事件をまとめました。週刊誌のセンセーショナリズム報道により、教師による児童イジメ発覚と思いきや、まさかの結末が話題になりました。

今日ご紹介する書籍は、2003年に起こった、福岡市教師の冤罪事件をルポしています。



漫画版では、全4巻中、3巻までがKindle読み放題リストに含まれています。

先生がねえ、死ねって、ぼくに言いよった……

小4児童の両親は、担任が自分の息子に、人種差別と体罰をはたらいたと狂奔して教師を民事訴訟に。

校長は、教師の弁明を無視して謝罪を強要。

教育委員会も懲戒処分。

マスコミは連日魔女狩り報道。

しかし、裁判の過程で真実が判明。

全て、モンスターペアレンツによる作り話と、児童の虚言でした。

この親にしてこの子あり。

自己愛にはじまった大騒ぎに、縁もゆかりもない第三者が便乗。

キャリアにいわれなき穴を開けられた教師への責任は誰がとるのか。

週刊誌のセンセーショナリズム報道や、モンスターペアレンツなどが話題になった事件です。

第六回新潮ドキュメント賞受賞。累計13万部突破、恐怖のロングセラー。

すべて虚偽だった



メディアで、よく「いじめ」が報じられます。

学校側が、その認定に慎重な態度を取ると、「隠蔽だ」とネットでは祭りが始まります。

まあ、多くの場合はそのようです。

でも、絶対にすべてがそうとは限らない。

やっぱり、客観的なことがわかるまでは、「推定無罪」なんです。

何も知らない外野が、根拠のないことで、正義感ぶって無責任に騒ぎ、罵倒するのはやめておけ、ということを考えさせられた事件です。

2003年6月、朝日新聞(西部本社)などが、福岡県のとある小学校で、男性の担任が4年3組の男子児童に対して、「人種差別に基づく差別発言」や「暴力」を振るっていたと一斉に報じました。

母親の曽祖父(ひいおじいさん)がアメリカ人と自称する児童に対して、担任の男性教諭が、「血が穢れている」など人種差別に基づくいじめを行っていると報じたのです。

同年8月に、福岡市教育委員会は、教諭を停職6か月の懲戒処分にしました、

同年10月には、『週刊文春』が「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した『殺人教師』」との見出しで本事件を報道。

教諭の実名を報じ、「いじめ」「体罰」とする内容を詳細に記事にしました。

「血が穢れている」は、家庭訪問の際に児童の曽祖父がアメリカ人であることを聞いたことによるもの。

体罰とは、児童に対して教諭が10数える間に、帰りの準備をするように命令。

できないと「ミッキーマウス(両耳を掴んで持ち上げる)」「ピノキオ(鼻をつまんで振り回す)」などの「刑」の中から児童に選ばせ、実行するという体罰を行い、児童は耳を切るなどの怪我をしたとしました。

さらに、教諭は児童に対して「お前は生きとる価値がなかけん、死ね」などとも発言。

教諭によるこれらの虐待行為により、児童はPTSDと診断されたといいます。

例によって、ワイドショーもこの事件を取り扱う過熱報道が行われました。

しかし、教諭は当初「いじめ」の事実を認めていたものの、その後、報道されているような体罰やいじめは行っていないと反論。

マスコミの取材にも応じ、自身の身の潔白を訴えるようになりました。

児童とその両親は、500人を超える弁護団を結成して、福岡市と教諭個人を被告として民事訴訟を提起しましたが、暴力は認定されず、PTSDでもなかったことなどが明らかになっていきました。

いずれにしても、裁判はシロだったわけです。

本書によると、4年3組の保護者らに聞き込みを行っても、教諭の体罰を見たという児童が現れないことや、担当医が重篤なPTSDと診断し、体罰場面を思い出させる場所では強い回避の症状が見られると説明する児童が、体罰が行われていた学校で、土曜日・日曜日はほとんどかかさずサッカーをしていたことなどから、マスコミの中でも事件に関する疑惑が囁かれるようになっていたといいます。

2013年、福岡市人事委員会は、「いじめ」の事実は認められないとして、教師の懲戒処分を取り消し。

児童の両親側のモンスターペアレンツぶりはもとより、その主張のみを鵜のみにした、メディアのセンセーショナリズムも問われるべき事件でした。

なんでこんな大事になったのか



思うに、事件の発端は、この子どもの両親が、外国人(西洋人)の血が先祖に入っていることが、かっこいいと意識過剰になっていたことではないかなという気がしました。

そこを、家庭訪問で話したのに、教師が褒めてくれなかったから、激昂して「バカにしている」ことになっちゃった。

自分は日本人ばなれした容姿で、それは先祖に外国人の血が流れていて、すごいんだぞと。

なんでそれを羨ましがってくれないんだと。

羨ましがらないお前はおかしいと。

外国人=アメリカ人=背が高くて鼻が高い……のコンプレックスが残る昭和中期ならいざしらず、21世紀にもなって「だから何?」なんですけどね。

ここまで教師を責めることができるメンタリティの源泉はなんだろう、と、あくまで個人的に推理しただけで、それこそ何の根拠もない妄想です。

いずれにしても、何らかの過剰な自己愛がはたらいたことだけは間違いないはずで、全く自己愛っていうのは厄介です。人間をここまで狂わせるのですから。

自己愛者というのは、ジェラシーやコンプレックスを抱きやすい人が過剰に抱えていますよね。

いつも心のなかで、「自分は世の中でもっと評価されたい、いや、されるべきなのだ」と思っているのです。

しかし、現状は評価されていないから、いつも心の底に不平不満が沈殿していて、自分を認めないものや、自分ができないことをするものに対しては、攻撃的になるのです。

仏教では、自分の思い通りにならないものに、怒りや憎しみを感じる煩悩を「瞋憎」(しんぞう)といいます。

まあ、怒りと言ってもいろいろあり、「降り掛かった火の粉」に対して怒るのは、解決の行動につながる人間の順当な判断なので、私自身は否定はしません。

ただ、意味不明の自己愛で「私ってすごいでしょ」と標榜して、相手が同意しなかったから恨むというのは、全くはた迷惑でバカバカしいことこの上有りません。

凡夫というのは、無明煩悩われらがみにみちみちて、欲もおおく、いかり、はらだち、そねみ、ねたむこころおおく(一念多念文意)

怒りや妬みの気持ちは、人間が多かれ少なかれ抱く煩悩なので、そのような気持ちが出てきたら、「いや、自分ともあろうものがそんなことはない」と打ち消すのではなく、「お、また自分の本性が出てきたぞ」と、自分の弱点として受け止めることです。

人間なんて、自分を含めてみーんな欠点だらけの弱くたいしたことない雑魚なんだ、と、もっとゆるい気持ちを持ちましょう。

でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―(新潮文庫) - 福田 ますみ
でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相―(新潮文庫) - 福田 ますみ

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赤面症

自己愛性パーソナリティ障害の人格を、信用できるかどうかは、一概には言えませんが、一般的には自分の能力や魅力を誇張したり、他者を利用したり、批判や失敗に対して過剰に反応したりする傾向があるため、信頼関係を築くことが難しいと言えます。ブログ見てね~\(^o^)/
by 赤面症 (2023-06-13 01:09) 

hide-m

いや驚きました。こんなこともあるんですね。ぜひ読んでみます。高学歴社会のせいか父兄の中には「俺は何でも知っている。あんたに異見をいわれるのは不愉快」という感じを抱く人に出会ったことはあります。学歴や会社での地位にかかわらず、常に謙虚で痛いですね!
by hide-m (2023-06-13 06:43) 

pn

マスコミの謝罪は秒単位で済まされるのに誤報の時間はとんでもなく長い、てか謝罪してるんだろうか?
by pn (2023-06-13 07:33) 

コーヒーカップ

でっち上げるのにパワーがいると思います。
そのパワーがあるならって感じです。
by コーヒーカップ (2023-06-13 16:13) 

tai-yama

「何も知らない外野が、根拠のないことで、正義感ぶって
無責任に騒ぎ・・・・」それをマスコミがさらに煽るのは
昔からある話ですね。自称弱い者は、たいてい弱い者では
ないとも言えたり。
by tai-yama (2023-06-13 21:59) 

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