SSブログ

お釈迦様は「輪廻転生」をどう見ていたのか [仏教]

お釈迦様は「輪廻転生」を真実としていたのでしょうか

お釈迦様は「輪廻転生」を真実としていたのでしょうか。実はこれは、仏教研究者の中でも意見が分かれるテーマなのです。輪廻転生というのは、魂の業(生き様)の善悪によって、六通りの世界に生まれ変わりを繰り返すという世界観です。

輪廻転生とはなにか


輪廻転生(りんねてんしょう)は、業(生き様)の善悪によって、天道、人道、阿修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道という、六通りの世界に生まれ変わりを繰り返すという世界観です。

簡単に言えば、悪いことをすると来世は地獄に落ちて、いいことをすると天に行けるということです。

ただし、「繰り返し」というのがミソで、ずっと天、もしくはずっと地獄にいるわけではなく、そこでの業によって、また別の世界に生まれ変わるのです。

これは、仏教独自の世界観ではなく、古代のインドで信じられていたことです。

私たちは、輪廻転生というと、「お、また生まれ変われるのか。じゃあ、今生の失敗を来世でやり直そう」などと、楽しい気持ちになるかもしれませんが、当時の人々はそうは考えませんでした。

だって、人間に生まれ変われるとも限らないし。

人間世界も、階級とかあって、生きることが苦痛であるし。

ですから、当時の人は生まれ変わりたくなかったので、「死」の恐怖よりも、生まれ変わる不安の方が大きかったようです。

仏教は、煩悩こそが、輪廻転生のエネルギーにつながるとして、煩悩を排すことで、その「繰り返し」から解脱して、生まれ変わることのない別の世界(涅槃)に行ける、という世界観にたったのです。

ですから、誤解も一部にあるのですが、仏教は本来、「天国に行ける」ことが目的ではなく、天国を含めた、人間が滅した後のすべての世界からの離脱が目的だったのです。

では、そんな世界は、果たしてあるのでしょうか。

現代科学は、輪廻転生自体を真実とはしていません。

ただ……最近田坂広志さんという原子力工学者が、『死は存在しない ― 最先端量子科学が示す新たな仮説』という書籍を出版して話題になっています。

そこに書かれている「最先端量子科学が示唆する死後の世界」によると、同書が言う「死後の世界」の、「自我が消えるフィールド」と「涅槃」には、共通する点があります。

つまり、「現世」と違う世界が、もしかしたら本当にあるかもしれないという話です。

正直本書は、「大胆な仮説」の粋を出てはいませんが、科学と宗教それぞれの疑問点に言及しているところは興味深く、頭からダメとは決めつけずに引き続き研究してほしい内容です。

徳川家康の単純な生まれ変わりは「ない」


では、仏陀(お釈迦様)自身は、輪廻転生を真実としていたのか。

これは、学界でも意見が分かれます。

私ごときが、軽々しく結論は出せません。

ただ言えることは、ともすれば私達が考えるような、まず魂があって、それがある肉体に宿り、その肉体に寿命が来たら、また別の肉体に宿る、という「転生」は認めていません。

ですから、霊媒師みたいな人が、「あんた前世は徳川家康だったよ」とかいうのは、少なくともお釈迦様の仏教では真実とはしていません。

仏教は、永遠に不滅のものはない(諸行無常)という考え方なので、魂が不変なまま、肉体を乗り換えて「生まれ変わる」ということはありえないのです。

そしてそもそも、霊魂というものが、肉体から独立して存在するとはしていません。

お釈迦様の仏教は、心と体とエネルギーが一体になった時に初めて、その存在がある(諸法無我) という立場なので、肉体が滅んだ心が、そのまま存在して、さらに別の肉体に宿るなどということは理屈として成り立ちしません。

だから、霊魂はない、ということなんです。

これは、科学の物心一元論(唯物論)と相通じる立場であり、他の宗教と決定的に違うところです。

科学では、物質を構成する最小の単位は素粒子ですが、仏教も、物質は様々な構成要素によって出来上がっているという考え方なので、肉体が滅び土に還ったら、その構成要素が次は焼き物(茶碗)になるかもしれないし、木の養分になって机になるかもしれません。

そこからまた、巡り巡って人間になる。

仏陀が考えていた「生まれ変わり」とは、そういうことかもしれません。

如来様とか、菩薩様とか、仏像を拝んでいれば、良い来世に生まれかわれると信じていた人は、信仰を壊してしまって申し訳ないのですが、それが本来の仏教なのです。

ただ、仏教の解釈としてはそうだというだけで、近年でも、過去世の記憶を保持している可能性を探る研究や報告も熱心に行われていたり、脳神経外科医などが臨死体験を上梓したりなど、肉体と精神の分離説も完全に否定されているわけではありません。

みなさんは、どうお考えになりますか。

輪廻転生を信じると人生が変わる (角川文庫)

輪廻転生を信じると人生が変わる (角川文庫)

  • 作者: 山川 紘矢
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/04/23
  • メディア: 文庫



死は存在しない~最先端量子科学が示す新たな仮説~ (光文社新書)

死は存在しない~最先端量子科学が示す新たな仮説~ (光文社新書)

  • 作者: 田坂 広志
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/10/19
  • メディア: Kindle版



nice!(69)  コメント(3) 
共通テーマ:学問

nice! 69

コメント 3

pn

生まれ変わりに不安な人は前世の記憶もったままって前提だと思うんですよ、だから怖がる。
現時点で前世の記憶無いんだからそんな心配しなくても良いと思うんですが(笑)
by pn (2023-05-16 07:36) 

扶侶夢

森羅万象 存在のエネルギー(仮にそう呼びます)は螺旋状に流れていると仮定しています。
二度と同じところへは戻らないけれど、たまにデジャブの様な感覚に襲われるのは螺旋状だからだと思っています。
by 扶侶夢 (2023-05-16 10:12) 

そらへい

業(生き様)の善悪の捉え方自体からして
我々が思っている世界観を超越しているのでしょうね。
超越していながら、実はもっと身近にある
その辺が、難しいですね。
by そらへい (2023-05-16 20:35) 

Facebook コメント