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コロナ騒動でトレンドのMMTから経済学の玄関先にお邪魔しよう [経済]

コロナ騒動でトレンドのMMTから経済学の玄関先にお邪魔しよう

コロナ騒動で、にわかに経済関連のYoutube動画が参照数を上げているといいます。MMTとか、財政出動とか、プライマリーバランスといった言葉が飛び交うようになったからです。そこで、忘れられない私がいくつか関連動画をピックアップしてみました。



昨今トレンドの経済用語


冒頭の経済用語がどうして使われるようになったのか。

コロナ騒動で経済が止まってしまい、事業や生活に困る人が出てきたことや、その対策の支援、給付金の財源をどうするか、という問題が切実になっているからです。

先月、国会では2次補正予算が成立し、2020年度の歳出(コロナ対策金)は160兆円超になりました。

このように、経済を良くしたり、景気を安定させたりする目的で支出される政治政策を財政出動といいます。

人も商店も会社も困っているのだから、積極的に財政出動を行い、お金を出して経済を活性化させていただくことは当然ではないかと思いきや、財務省はお金の支出にも、消費税の減税にも積極的ではないと言われています。

それは、歳出がどんどん増えたら、税収などの歳入が追いつかなくなるからだといい、その釣り合いのことをプライマリーバランスと呼んでいます。

財務省の公式サイトによると、「歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はワニの口のように開いてしまいました。また、その差は借金である公債の発行で穴埋めされてきました。」(https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-dependent.html)と説明されています。

2019年時点で、日本政府の借金は約1,100兆円といわれ、それが、「孫子の代まで借金を残すな」と財政破綻を煽って、財政出動や減税に消極的になっている根拠です。

しかし、「借金」をしているのはあくまでも政府であり、国民ではないから、さも国民が借金をしているように言うのは詐術である、というツッコミがもう多くの人からなされている今や「常識」です。

そもそも財政というのは、借金と資産の両方で見るものであり、「借金」だけではなく、我が国の高度に発達したインフラや金融資産、固定資産などとともに見なければ経済の現実を見たことになりません。

MMT


そこで、税理士出身の西田昌司参議院議員が提案しているのはMMTです。



自国の通貨で、政府が国民に借金して財源を調達しても、外国に借金するわけではないから、つまり国内の話だから、インフレにならないかぎり財政赤字は問題ではないという主張です。

EUに対する財政破綻を起こしたギリシャのようにはならないし、独裁政権による財政出動乱発でインフレを抑えられなくなったジンバブエのようなことも参考にはならない、という話です。

保守論客の高橋洋一さんは『明快 会計学入門』(あさ出版)で、実質的な政府の借金(金融負債)総額は約120兆円で、会計学上”健全な”額だから何も心配が要らないとしています。

これは、政治的立場は反対側にある森永卓郎さんも一致した見解です。

MMTは、ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授などによって提唱されていますが、おおもとは国が公共事業を発注して景気を上昇させるとする、ケインズ経済学を「源泉としている」(西田昌司議員)と言われています。

ということで、ケインズ経済学も、この際ですから一通り知っておいたほうがいい話です。

これは、ケインズ経済学をわかりやすく解説している池上彰さんの動画です。


しかし、このOGPのツイートにもあるように、さんざんケインジアン(ケインズ経済学)の話をしておきながら、最後だけ、とってつけたように「孫子の代まで借金を残すな」と結論づけているので、思わずずっこけてしまいました。

最後だけ見なかったことにすると辻褄の合う、すばらしい講演になるでしょう(汗)

ケインズを知ったついでに……といってはなんですが、経済学の変遷として、アダム・スミス⇒カール・マルクス⇒ジョン・メイナード・ケインズ⇒ミルトン・フリードマンの流れで解説しているこの動画もわかりやすいと思いました。


一方、MMTは金融政策の軽視や貨幣の永久機関化の懸念などから、導入によるインフレや金利上昇は免れないと否定する意見もあります。


ただ、少なくとも今年度の補正という限定的な対応として、「今」お金を給付することの意義だけは、見ていただきたいですね。

もちろん、この方々は要するに、経済活性化につながらない、しょせんバラマキに終わるのではないか、という懸念があるのだろうと思います。

そこで、私は次の動画を見ていただきたいと思います。



単なる財政出動ではない『一月万冊』



『一月万冊』は、読書家の清水有高さんがホストになり、経済学者の安富歩さんら4人の作家・学者との対談形式で、トレンドな話題を解説していく動画です。

先日の記事、『ALS女性の事件、動画とともに事実と道理で考える』で、ご紹介しました。

私は今の所、このチャンネルが一押しです。

というのは、このチャンネルも、財政出動が自粛とセットは当然という立場ですが、たんなる「政府はお金をもっと出せ、国民の懐を温めろ、個人商店の会計を助けろ」という紋切り型の要求は、本質的な問題を解決したことにならないとしています。

ではどうするか。

たとえば在宅ワークが導入されているなど、コロナ騒動によって私達の生活は不可逆的に大きく変わっているのだから、給付金・支援金などはこれまでの生活の維持や補填のためではなく、明日に向けた新しいことを試みる資金にしろ、それによって明日まで生き残れるし、国の経済も活性化するのだ、という提言を行っています。

たとえば、給付金で、今まで持たなかったモバイルパソコンを買うとか、ネット銀行に口座を持つとかね。

そのへんから始めてみませんか、という話です。

もっとも、私は3~5月の自粛期間中に、ヤフオクにハマってWindowsノート、MacBook、Chromebookと一通り落札してしまったので(汗)、別の何かを明日のために考えたいと思います。





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コメント 8

renbajinharuhi

現時点では適正な率や額の借金で、国民金融資産以下の額なので、ファイナンスが可能ですが、年々増え続け借金額が国民金融資産資産を超えれば、外国人は格付けが低く、金利の低い(ゼロ)の債券(国債)は買いません。
そうなっては手遅れなので、財政健全化の道筋を考えるべきでしょう。
インフレにしても増税にしてもその両方だとしても最後につけを払わされるのは国民です。
by renbajinharuhi (2020-08-03 22:48) 

ナベちはる

>自国の通貨で、政府が国民に借金して財源を調達しても、外国に借金するわけではない

だからといって「自国民で自国通貨だから」なんていう理由を付けて返済しなくてOKではないので、そこは政府にキッチリしてもらいたいです。(キッチリしたところで、今度は税金という名目でまた財源調達されそうですが…)
by ナベちはる (2020-08-04 00:39) 

関谷貴文


あのねー、増税だろうがインフレだろうが、将来のことより、今日明日なんとかしないと首をくくってしまう人だっているんですよ。
発がん物質が入ってても、餓死する寸前なら食べるでしょ。
10年先のがんのリスクより、明日の餓死のほうが確率がでかいからです。
わかんない?
今の日本は、そういうレベルまて来てるっつうの!!
しっかり安定した給料もらってる人や、テメエの有価証券の価値下落の心配だけしてる人は気楽でいいですねえーーーーー
by 関谷貴文 (2020-08-04 04:45) 

pn

ヤフオクのかんたん決済なんですが知らぬ間にインターネットバンキングが終了してしまったので俺もそろそろペイペイ登録?しようかなと(^_^;)
by pn (2020-08-04 06:19) 

ヤマカゼ

経済が冷え込み、補正予算の成立。日本は大丈夫なのだろうかと、だれもが気になるところですね。
by ヤマカゼ (2020-08-04 06:47) 

やおかずみ

我が国は自国の通貨で借金しているのだから、他国のように国債を買ってもらっていないから、お札を印刷すればいいのである。但しインフレのコントロールだけは注意する必要がありますが・・・、の考え方には同意出来ます。
by やおかずみ (2020-08-04 09:44) 

十円木馬

>インフレにならないかぎり財政赤字は問題ではない・・
今一番懸念することは、コロナウィルスが原因で、「ハイパーインフレ」になることです。ハイパーインフレになれば円は暴落し、私達の貯金は紙クズになります。国云々よりまずは個人の資産を守るためにどうすればよいのかが切実な問題です。

by 十円木馬 (2020-08-04 14:18) 

SGW

金本位制の時代は、国が保有する金に換金できるだけの紙幣だけを発行していたと思いますが、いまや、電子マネーやキャシュレス決済が当たり前で、実体としてのお金がどれだけ流通しているのかわかりにくいです。こうなると、国債を棒引きしても、売りに来た人に日本銀行が紙幣を刷って払ってしまえばよさそうな気もします。たぶん間違っているんだろうけど。。
by SGW (2020-08-04 16:57) 

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