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ALS女性の事件、動画とともに事実と道理で考える [社会]

ALS女性嘱託殺人事件、事実と道理でこんなふうに考える

京都のALS患者の女性に対する、東京と宮城の「医師」の嘱託殺人事件で持ちきりです。難病や障碍者の生き様について、週に1記事程度書いてきたこのブログも一言したいと思いますが、参考になる動画をご紹介しながら、自分の意見もそれに沿って述べたいと思います。



これは安楽死問題か?


今回の事件で色々意見は出ていますが、私個人は次の動画に、もっとも得心できました。

「一月万冊」という人気動画です。

読書家の清水有高さんが、著者に話を聞く、ほぼ毎日出ている動画です。

私がYoutuberになったら、こういうのをやってみたいんだよなあ、という構成で、人選までかぶりそうなので、私はまた別の企画を考えます(汗)

どういう内容かというと、ジャーナリストの今一生さんとの話で、次のような意見が出ました。


1.これは安楽死事件ではない。医師は犯行後逃亡しており、何のメッセージ性もないただのチキンな犯罪
2.宮城の医師は、『ブラック・ジャック』の安楽死を主張するドクター・キリコの思想に則ったことを示唆するツイートをしていたが、ドクター・キリコのキャラクターを含めて同作は、「人の命は人の裁量で決められることではない」というモチーフであり、宮城の医師の主張は自分の都合に合わせた「切り取り」の解釈でしかない。
3.自殺したい人に「生きろ」とはいわないが、人間は明日のことはわからない
4.人間の気持ちは移ろいやすいもので、かりに自殺を依頼したとして、その途中で気が変わることもあり得る

ということです。

これは安楽死事件ではない


犯罪、しかも嘱託殺人という重要容疑に対して、一部には「容疑者の気持ちもわかる」という意見があるのですが、人殺しに理解を示すのは人として不健全だと思います。

やまゆり園のときも、そうでしたよね。

この「医師」たちは、ヤッた後、逃亡したのです。←1名偽医師らしいのでカッコづき

安楽死と心から信じるのなら、どうして自首して、自分の意見を堂々と言わないんでしょうか。

人の命は人の裁量で決められることではない


昨今のとくにネットの論調がそうなのですが、人の生き死にに対して、個人の意見で襲いかかるのは傲岸不遜だと思っています。

あんた神にでもなったつもりなの?

といいたくなります。

第三者が「これは尊厳死だから認めたい」「安楽死すべきだ」なんていう判断をするのは差し出がましいのではないでしょうか。

自殺したい人に「生きろ」とはいわないが、人間は明日のことはわからない


障碍や難病の人自身が、「死にたい」と思ってはいけない、ということではありません。

ALSでも、国会議員になって国会の施設を改善した人もいれば、「もういいや、人生に意欲がなくなった」という人もいる。

それはもう当事者の内心の問題です。

明日を信じて、死にたいのを我慢して生き続けたからと言って、いいことがあるとはいえません。

少なくとも、今までなかったのなら、これから「必ずある」なんて無責任なことはいえませんね。

でも、ささやかなことでも、「もう少し生きててもいいかな」と思えることが絶対にないとも言えません。

生き続けるきっかけというのは、ほんのちょっとしたところに転がっているものです。

それは、誰であっても明日を生きてみないとわからないのです。

生きるというのは、人生というのはそういうことではないでしょうか。

人間の気持ちというのは、良くも悪くも移ろうものです。

安楽死の議論(法制化)について


こういう事件があると、「安楽死の議論(法制化)」を求める声も必ず出ます。

私の意見は、かなりハードルを高めないと、やはりただの人殺しになりかねないと思います。

何を基準に「安楽死しても良し」と見るかという、医学的ガイドラインは、人は物ではないので、いい加減なレベルではすべての患者に通用するとは限らないからです。

つまり、「こうなったら延命に意味がない」ということを決めても、意味があるかどうかは当事者が決めることであり、そもそも「こうなった」人がまた元気になったらどうするの、ということです。

そういうことはあるんですよ。



消極的な安楽死


「消極的な安楽死」は、すでに医療現場では行われています。

本人や家族の同意を得た上で、透析をやめるとか、点滴をやめるのか、人工呼吸器をはずすとか。

ただ、それですら、私は慎重にしたほうがいいと思っています。

生きとし生けるものが、「生きやすくする道筋」を何一つ議論する気もないまま、「死なせてもいい話」だけに熱中するのはおかしいだろう と言いたいのです。

死ぬ道筋だけを求めていたら、そりゃ、今回のような事件はまた起こります。

人間はどうがんばってもいつかは死ぬし、繰り返しになりますが「消極的」に死なせてもくれます。

にもかかわらず、さらに踏み込んで、積極的に殺しても良い法制化までなぜ求めたいのか。

そこで議論をしっかりしないと、コンセンサスはうまれないと思います。

私は、繰り返しますが「死なせる話」の前に、生きる権利や、生きやすさを模索したり、介護する人に寄り添った対応を考えたりすることをもっと真剣に行うべきだと思います。

そしたら少なくとも「死なずにすむ」ケースは今より出てくるはずですし、「とにかく死ねばいい、殺せばいい」という話にはならないだろうと思います。





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コメント 20

Azumino_Kaku

こんばんは、
非常に重いトピックですね。国民的なコンセンサスがうまく形成されるといいのですが。
今、ニュースサイトで見ましたら、いつぞや福生の病院での透析中止の件はまだ係争中なんですねぇ・・。
by Azumino_Kaku (2020-07-25 23:11) 

犬眉母

5ちゃんねるなどの、放言・暴言のノリもあったと思います。
「やまゆり園」にも見られた、宮城の医師の命の選別思想も気になります。
医師がアスペルガーであることを、夫人が告白していますが、
逆手に取って、アスペルガーの偏見につながらないといいですね。
by 犬眉母 (2020-07-25 23:38) 

ナベちはる

>自殺したい人に「生きろ」とはいわないが、人間は明日のことはわからない

これに尽きると思います。
自分のことでさえ「明日どうなるか」も分からないのに他人のことはもっと分からないので、アレコレと口を出すべきではないのではと思います。
by ナベちはる (2020-07-26 01:10) 

pigumon

とても とても
重いテーマですが
私自身 関心深く
きっと いっぷくさんが
お話して下さると信じ
期待してもおりました
ありがとうございます
私自身
「ただ生きるな 善く生きよ」を
モットーにしておりますが・・・
生に対する執着は
あまりない方 なのかもしれません
かの女性の 当時の心情を思うと
シンパシーというか
切ないというか う〜ん
語彙不足で スイマセン
何とも云えない気持ちになります
軽々に言えるものでもないんですが・・・


by pigumon (2020-07-26 02:32) 

ヤマカゼ

(生き続けるきっかけというのは、ほんのちょっとしたところ)
深いですね。
確かに何かちょっとしたいいことがあると希望もてますね。
目の前の桃をなんでもいいからつかんでみるのもありですね。
by ヤマカゼ (2020-07-26 07:06) 

十円木馬

「尊厳死」の是非は、永遠に問い続けられるテーマですね。
もし許されるとしたら、森鴎外の「高瀬舟」に出てくる弟殺しの喜助のような極限的な状況でしか、私には考えられません。

by 十円木馬 (2020-07-26 08:50) 

念仏親父

安楽死という議論は、私達獣医療業界でも、議論になります。
私は、動物達の仕事・指命というのは、「生きる」ということだと思っています。
それを、飼い主の意見だけで、人為的に命を縮めて良いのでしょうか?苦痛から逃れさせてやりたい・・・という気持ちもわからないわけではありません。
中には、金銭的な理由から、安楽死を選択する人もいます。
欧米では安楽死を簡単に選択するとも聞き及びます。
なかなか難しい問題です。



by 念仏親父 (2020-07-26 10:15) 

pn

キリコの父ちゃんが肺の病気で安楽死させようとしてるんだけど妹がブラックジャックに治療依頼しに来るんすよ。
一応キリコが折れてブラックジャックと一緒に手術(だったかな)するんですが原因分からず諦めて人工肺止めた時に原因分かって喜んだんだけどキリコが毒を既にうっていたというオチ。

諦めない事がまずは大事なのかなと思います、小さい事が死ぬきっかけになったりしますが仰る通り「生き続けるきっかけというのは、ほんのちょっとしたところに転がっている」ものです。
by pn (2020-07-26 10:18) 

(た)

今日は津久井やまゆり園の事件からちょうど4年目ですが、ALS患者嘱託殺人事件がそれと同じ背景を持っていたことに驚きました。

優生思想が安楽死を隠れ蓑にして跋扈し始めたこと、それが一定以上の理解を得られるということは、それほどまでに日本の国民経済が行き詰まっているのだろうと感じました。

20世紀前半の全体主義が世界を覆おうとしていた時代が、一世紀を経て再現されつつあるのは、記憶と教養の敗北のように思えて残念です。
by (た) (2020-07-26 10:43) 

扶侶夢

>生きとし生けるものが、「生きやすくする道筋」を何一つ議論する気もないまま、「死なせてもいい話」だけに熱中するのはおかしいだろう

全く同感ですね。どんな意見を持つにしても、多角的に承認した後に自分の意見を述べるべきだと思います。
最近思うのですが、SNSやネットでの発言は匿名性のためか発言する資格のない人が無責任な発言をすることが多い様に思います。言論は自由といいますが万人に自由というものではなくて “資格”が要るのですね、実は。
by 扶侶夢 (2020-07-26 10:54) 

青い森のヨッチン

以前住んでいた人との病院で当時世間を大きく騒がせた安楽死案件がありました。逮捕された女医さんは本人家族の同意のもとに安楽死させたとのことでしたが逮捕起訴されました。この時の女医さんと今回の事件の意思とはまるで覚悟というか態度が違うので同列の事件として扱われるのは少し違うような感覚です。警察も安楽死案件はかなり敏感に迅速に対応しているようですね
by 青い森のヨッチン (2020-07-26 12:49) 

プー太の父

誰でもいいから殺して欲しいほど生きてるのが辛かったんだと思うと
亡くなった方には本当に気の毒としか言いようがありません。
by プー太の父 (2020-07-26 15:20) 

そらへい

しかもこの人たちは、報酬を得ていますからね。
見かねて手助けしたとは言いがたいですね。

母をALSで亡くしています。
あれは本当に過酷な病です。
動かない肉体という牢獄に閉じ込められるのです。
母は泣き笑いしていましたが
この方は我慢ならなかったのだと思います。
日々衰え自死する自由さえも奪われます。
しかし、それと今回の問題は別ですが。
by そらへい (2020-07-26 16:33) 

kou

ALSの女性は病状が進行して食事も1人で取れず胃瘻だったのですね。本人にとっては生き地獄のような気持ちだったのでしょう。死にたいという気持ちは理解出来ます。まだ他人に自由に意思を伝えられるうちに希望を叶えてくれる方を捜していたと思われますが、その行為そのものを責める気持ちは全くありません。だからといって医師達の行為を肯定するものではありません。
by kou (2020-07-26 17:13) 

ヨッシーパパ

一人は、医師では無いという疑惑も出ていますね。
by ヨッシーパパ (2020-07-26 18:34) 

coco030705

本当に難しい問題ですね。安楽死を認めると、犯罪に使われかねないとも思いますし。
「ブラックジャック」に意見を聞いてみたいです。
by coco030705 (2020-07-26 19:07) 

エンジェル

消極的安楽死・・・私はあっても良いと考えています。治る見込みのないがん患者に少しでも苦しさを取り除く緩和ケアは無くてはならないものだと考えています。義母が肺がんで苦しんでいる様子を見て緩和ケアをお願いしようとしていましたが、その前に苦しみながら息絶えました。
私自身は同じような状況なら安楽死もありだと思っています。以前飼っていた犬も肺水腫で苦しみながら亡くなりました。見ているのが辛かったです(T T)
by エンジェル (2020-07-26 19:54) 

skeptics

死ぬ話より、より良く生きる話が大事。
賛成です。
考えさせられます。
by skeptics (2020-07-26 19:58) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございました。

by いっぷく (2020-07-27 05:14) 

Rinko

すごくショッキングな事件でした。
いっぷくさんが仰っているように「生きやすくする道筋」を社会全体で考える風潮が大切かと思いました。
by Rinko (2020-07-27 08:01) 

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