“障碍のあるなしに関わらず心のままに書を楽しむ”書道教室 [障害者]
障碍のあるなしに関わらず、心のままに表現する書道教室を特集した動画が、FacebookのNHK HUMANに投稿されたのでシェアします。障碍は個性なのか、という議論においてひとつの回答を示している点で興味深い動画であると思いました。
西里俊文さんのボランティア書道教室とはなんだ
博報堂教育財団の公式サイトによると、1994年に採用となった養護学校(肢体不自由、特別支援学校)で書の指導をしていた西里俊文さんは、転勤のためにできなくなりました。
その時、「書を続けたい」という子ども達の声があったので、1999年5月、自宅において無償の書道教室を開催。
発足時5名であった会員も、現在では知的障害、聴覚障害、発達障害のある児童生徒や通常学級在籍児童生徒、卒業生や一般の健常者も加わり、障碍の有無を越えた大きな輪となって、40名にまで増えたそうです。
https://www.hakuhodofoundation.or.jp/prize/recipient/2009/12.html
これが動画です。
モットーは、“障碍の有無にかかわらず書を楽しむ”
作品の題材は、日々の暮らしや自分の感情を自由に書かせるそうです。
「魂を込めて書くと、線とか構図とか、その人それぞれの個性が白黒の世界でばっと出てくるんですよね。磨いて、それ(個性)を極めてほしいです」というのが「書」の醍醐味といいます。
最初は書き順にもうるさかったのですが、「(生徒が)おもしろくないってなってきた時期があるんですよ」
そこで指導を改め、「でこぼこがあると削りたくなるが、削らずに磨きをかけていこう」をモットーにしているそうです。
型にはめない指導ということですかね。
障碍=個性?の論争にひとつの回答
動画では、「個性」という言葉が何度か出てきます。
西里俊文さんは、こうコメントしています。
「(障碍のある生徒には)いろいろハンディがあるんだけれども、それがあることでしか出せない深さ。そういう線が(書では)出るのではないか」
「それがあることでしか出せない深さ……」、それを個性であるという一言に私は刮目しました。
障碍を「個性」と表現することに、一部の障碍者の側で批判や不満があることは、以前ご紹介しました。
⇒障碍を「個性」と“優しく”表現するのは差別や偏見の裏返しか
ま、ホントのところ、健常者で「障碍は個性」と言ってる人の本心は、「障碍のある人を差別していないマイルドな表現を使う自分てス・テ・キ」ぐらいの、自己愛の発想である場合が多いんじゃないんでしょうか。
「批判や不満がある」人の言い分は、ハンディと個性は違うということにあります。
ただし、この動画にあるように、ハンディを抱えた現実から、なにがしかの自己実現を達成したとき、そこにはハンディが成果を構成する人格的な陰翳となっており、個性としての意味合いはあると私は思うのです。
でも、障碍がある人の中には、そもそも頑張りたくても寝たきりとか、自覚的な自己実現の達成が難しい場合もあります。
あなたがそういう立場だったとして、軽々しく「障碍は個性だよねー」とか言われたら、どう思いますか。
乙武洋匡さんじゃないけど、「なめんなよ」ですよね。
ですから、批判・否定する側の言い分にも十分道理があるデリケートな表現であることも確かなのです。
「俊文書道会」は青森県八戸市だけでなく全国展開してほしい
さて、現在西里俊文さんは、県立八戸聾学校で教えられているんですね。
障害者と書学び20年 八戸で記念展 日常で感じた言葉、題材に /青森 - 教室を開いている県立八戸聾(ろう)学校教諭、西里俊文さん(50)は専門は数学… https://t.co/5DH6gsaUFq
— しかく新聞 (@shikaku_paper) March 17, 2020
書道教室は「俊文書道会」といい、もちろん青森県八戸市にあります。
余談ですが、私の長男の小3の時の担任が、支援学校に1年だけ腰掛けてから普通学校にやってきた若造で、植物人間状態で登校できなかった長男の机も、プリント類も用意してくれなかったのです。
こんなに障碍者をバカにするメンタリティで、どうして支援学校で採用されたんだろう、と疑問に思い、しょせん教員は、普通学校がお目当てで、そこに空きがない時だけ仕方なく腰掛けで支援学校に勤務しているのかと失望したものです。
ですから、西里俊文さんのように、公務以外まで障碍者の指導をされている方を知ると、自分の寂しい経験から救われた気持ちになります。
「障碍者だの健常者だのではなく、その人自身の個性を大切にする」この指導こそ、私はインクルーシブ教育のキモだと思います。
全国的組織的に、このような活動が広がると嬉しいと思いました。
「発達障害」という個性 AI時代に輝く ― 突出した才能をもつ子どもたち - 大坪 信之
指導する者は無駄なデコボコは削りたくなります。
それを改める、って超えていますね。
お母さんの言葉、
「怖がらずに伝える」
が忘れられません。
書道の先生に伝えたいことが書けた女の子。
次元が違う感動を味わえました。
by HOLDON (2020-03-25 09:39)
こんにちは。
大昔、高校の古文の先生から「個性」と言う言葉は「本来は否定的なネガティブな言葉」と教えられました。現在使わられている「個性」とは違うみたいです。「でこぼこがあると削りたくなるが、削らずに磨きをかけていこう」の指導、成る程です。健常者にも必要な指導と感じます。障碍=個性ではないですね。上手に表現出来ませんが、障碍を肯定的に受け入れる人と社会の必要性は感じます!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2020-03-25 13:02)
デコボコ磨くのはリアルに難しい、とてつもなく地味で地道な作業です。言うのは簡単だけどそう表現出来る信念は素晴らしい。若造に爪の垢を飲ませたいね。
by pn (2020-03-25 13:05)
筆と紙と墨汁を自由気ままに使用する、なかなか面白い教育ですね。
by ヨッシーパパ (2020-03-25 18:32)
動画を拝見しました。みなさん楽しそう。やっぱりこれが一番だと思います。
by ヤマカゼ (2020-03-25 19:18)
こういう方の行動や考え方が普通になるといいのですが
by mau (2020-03-25 22:49)
「その人自身の個性を大切にする」という行動や考え方を持つ素敵な書道教室、全国各地に出来てほしいです!
by ナベちはる (2020-03-26 00:33)