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松尾嘉代、女優としての転機は『加山雄三のブラックジャック』か [懐かし映画・ドラマ]

松尾嘉代、女優としての転機は『加山雄三のブラックジャック』か

松尾嘉代さん(まつおかよ、1943年3月17日~)の誕生日です。おめでとうございます。かつては『パパと呼ばないで』の園子お姉ちゃんのような気性の真っ直ぐな女性を多く演じていましたが、80年代からはピカレスクロマンの女を演じて『サスペンスの女王』と呼ばれました。その端緒となったのは、毀誉褒貶が多い『加山雄三のブラック・ジャック』ではないかと思います。(上の画像は『加山雄三のブラックジャック』第11話より)



松尾嘉代さんは、Wikiによると阪神・淡路大震災以来、メディアへの出演がなくなったと書かれています。

ただ、引退宣言は公式にはされていないようですね。

さて、その松尾嘉代は、1959年に日活に入社以来、映画やテレビで、「健気な娘」「気性の真っ直ぐな女性」など、いずれにしても「いい人」を多く演じてきました。

松尾嘉代
Google検索画面より

それが、1983年から始まった、松尾嘉代の代表作とも言われている土曜ワイド劇場(テレビ朝日)の『女たちの華麗な闘い』シリーズは、自分の欲望をみたすために陰謀をめぐらして他人を欺くピカレスクロマンでした。

男優もそうかも知れませんが、女優はとくに、ある一定の年齢になったら「お嬢さん」を卒業して大人の女にかわっていかなければなりません。

松尾嘉代の女優としての転機となった作品を探ってみると、『加山雄三のブラックジャック』(1981年1月8日~1981年4月9日、松竹/テレビ朝日)が思い当たります。

「いい人」から「ピカレスクロマン」への転換


原作の『ブラックジャック』には、『鬼子母神の息子』という話があります。

すでにネット上にはあらすじもアップされていますが、子供をアトランダムに誘拐しては、指を切って送りつけてくる凶悪犯の女が、警察の疑いをかわすため愛する自分の幼い息子を偽装誘拐した際、まさか相手が母とは知らない息子にナイフで切りつけられてしまいます。

傷が残れば、自分が誘拐犯だと息子にわかってしまう彼女は、ブラックジャックに依頼。

傷を治すことはブラックジャックにとって造作も無いことでしたが、治して息子のところへ戻れば女は逮捕されます。

さて、ブラックジャックはどうしたか……

『加山雄三のブラックジャック』で、この「女」の役を演じたのが松尾嘉代です。

『加山雄三のブラックジャック』は、原作には比較的忠実でしたが、原作者の手塚治虫があえて封印したヒューマニズムを、原作を活かす範囲で表現スべく、ブラックジャックに普段は画商の坂東次郎というもうひとつの顔をもたせ、人としての温かさを表現しました。

『鬼子母神の息子』については、全13話中第11話(1981年03月26日)で放送されました。

『鬼子母神の息子』
『鬼子母神の息子』より

さすがに指を切り落とす設定は残酷と判断したのか、“入れ墨を入れる”に変わっていました。

『加山雄三のブラックジャック』は、いまだに「加山雄三のメイクがひどかった」「坂東次郎という原作にないキャラクターは原作を蹂躙している」等々批判がある一方で、少数派ですが根強いカルト人気もあります。

私もどちらかというと後者です。

全13話の見どころや意義をすべて述べるとキリが無くなりますが、たとえば今回の11話には、誘拐してきた子供を身代金の道具とみなす“鬼女”ぶりと、一方で我が子に対する愛情を隠そうとしない“母親”とを演じ分けたことは、女優・松尾嘉代のポテンシャルをアピールすることになったと思われ、松尾嘉代にとって印象深い仕事だったのではないかと思います。

松尾嘉代はこのドラマ以来、演じる役柄の幅を広げ、たとえば『鍵』(1983年、東映)など、土曜ワイド劇場以外にも大胆な役を演じるようになりました。

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見どころのあるカルトドラマ


娯楽映画評論家の佐藤利明さんは、『加山雄三のブラックジャック』について、こう評しています。
若大将の陽と、BJの陰。手塚漫画のヒューマンと、ジェームズ三木脚本のケレン、そして不思議な怪奇ムードのアナクロニズム(これは終戦直後の和製スリラーからの伝統でもあります)、さらに、番匠義彰の的確な演出などなど、カルトという言葉を裏付けてくれる要素が満載のドラマです。 https://s.webry.info/sp/toshiakis.at.webry.info/200912/article_1.html

当時、やはり土曜ワイド劇場枠で放送されていた『江戸川乱歩の美女シリーズ』(1977年8月20日~1985年8月3日、松竹)における明智小五郎(天知茂)こそは、まさにその要素をもったドラマでした。

「和製スリラーからの伝統」が、明智小五郎なら許されて、ブラックジャックは許されない、というのはたんなるファンの主観に過ぎないでしょう。

今回、改めて鑑賞しましたが、昭和的な、なんとも言えぬあたたかみがあり、私は本作はドラマとして決して失敗作ではないと思います。

DVDも発売されていることですし、はじめにダメ出しありきではなく、今回のような意義もありますので、もっと楽しく鑑賞してもいいのではないかと私は改めて思いました。

加山雄三のブラック・ジャック DVD-BOX(3枚組)
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犬眉母

お米屋のお姉さんのイメージが強いですが、
いろいろな役をされたんですね。

by 犬眉母 (2019-03-17 02:08) 

末尾ルコ(アルベール)

松尾嘉代、女優としての転機は『加山雄三のブラックジャック』か・・・松尾嘉代は子どもの頃からよく知っておりまして、イメージとしては「大人の女の中の大人の女」・・・少なくともわたしが知ってからは、少女性などはまったく感じたことのないタイプの女優でした。日本の女優は中年以降になっても少女性を感じさせる人がけっこうおりますよね。松尾嘉代はそのような感じではまったくなかったです。なので子ども時代のわたしが「憧れる」ということはなかったですが、(いい感じ)とかなり好意的に見ていたのも覚えております。松尾嘉代のような女優は、日本がもっと成熟社会であれば、ずっと活躍できたかもしれませんね。
加山雄三『ブラックジャック』、ますます観たくなりました。確かにヴィジュアルは漫画とは大きく異なっておりますが、実写化する時点である程度以上は「漫画と別物」と捉えるべきですね。現実の俳優に漫画と同じような表情を求めている実写化作品もちょいちょい見られますが、そのような表現は現実の俳優の演技を愚弄している要素があると感じます。
松尾嘉代は『鍵』もやってるんですね。これも観たいですね。谷崎潤一郎の『鍵』ですよね。最近つくづく谷崎の凄さを痛感しておるところです。

>怪奇ムードのアナクロニズム

この部分が今回、わたしが特に(観たい!)気持ちを増幅させた一番の理由です。そういうの大好きなのです。『ブラックジャック』は原作もけっこう怪奇ムードだったですよね。ピノコについてのエピソードなどは本来子どもにはかなりきついのではないでしょうか。そして各エピソードも、まず怪奇ムードを煽っておいて、結末は医療知識で纏める・・・そんな展開もかなりあったと思います。柴咲コウら出演の映画『どろろ』がダメだったのは、怪奇ムードの醸成がアナクロニズムではなかった点だったと思うのです。アナクロニズムの愉しさをもっと多くの人が再認識するべきだと思います。

・・・

こちらも以前くださったコメントへのものとなりますが。

>苦労が生きていない

確かにおりますね。その辺の違いというのは人生の機微としてとても難しいところだと思います。困難や苦労への向き合い方という要因はあるにしても、「どうしても乗り越えられない困難」というものも多くありますよね。だから、「神様は乗り越えられない困難を与えることはない」なんて軽々に言うべきではないといつも思ってますが、それはさて置き、人生でそうしたことに度々見舞われる場合もある。そんな時、どのような態度を取れるか、どのような精神状態になるかですよね。まあわたしもこのところ大きな困難が続いておりますが、そしてなかなかに乗り越え難いのですけれど、少なくとも、「諦めない」「卑屈にならない」などの精神状態は保ち続けるつもりではあります。

とまあ、そのような気持ちに間違いのですが、今夜の記事にも書いておりますように昨日は、「元気な母の姿に一安心する→担当医の言葉に大きく落ち込む」というきつい精神状態となりました。担当医の言葉が「リアル」なのか、それともある程度以上厳しい意見を述べることで予防線を張っているのか、今のところ判断が難しいですが、いいイメージを与える言葉が一切なかったのにはいろいろ考えるところがあります。担当の看護師などとは雰囲気がまったく違うのです。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-03-17 03:27) 

kou

松尾嘉代は鋭い目つきが印象に残っています。
加山雄三がブラックジャックを演じていたとは知りませんでしたが、イメージが沸きません・・・。
by kou (2019-03-17 06:59) 

pn

阪神淡路大震災以降出て無いのかー!もったいないな。

加山雄三のブラックジャック、俺の中の問題点はピノコだったな。アッチョンブリケでしたっけ?あの言い回しがなんかこうイメージと違うと言うか(^_^;)
by pn (2019-03-17 09:15) 

poko

加山雄三のブラックジャック、こんな作品があったとは全く知りませんでした。
by poko (2019-03-17 10:27) 

這い上がるママ

松尾嘉代さん、以前は2時間ドラマに出まくっていましたね。妖艶でねっとりとした悪女役がはまり役だったような。いつからか見なくなったなーと思っておりました。
by 這い上がるママ (2019-03-17 12:44) 

なかちゃん

松尾嘉代さんは、実はあんまり記憶にありません。
ちょっとググってみたところ、いろんな作品にお出になっててボクの見たはずの作品もたくさんありました。
それでもあまり記憶にないということは、ボクの好みではなかったのかな?
こんなんじゃいかんな(^^;


by なかちゃん (2019-03-17 14:37) 

ヤマカゼ

写真を拝見させて頂いたかぎりでは加山雄三のブラックジャック似合ってないですね。太陽族のイメージが
強すぎるのでは?
by ヤマカゼ (2019-03-17 15:10) 

sana

松尾嘉代さん、いい女優さんだという印象があります。
何を見たのか、どれが気に入ったのか、覚えていませんが‥
ブラックジャックを加山雄三?
そ、それはイメージは合いませんね。一つの作品としてどうなのかはまた別ですね^^
天知茂は明智小五郎に合ってましたから!~それでも納得しないファンはいたのかな^^;
by sana (2019-03-17 15:56) 

Take-Zee

こんにちは!
松尾嘉代さんは土曜日の9時の顔でした。
セクシーなシーンも楽しみだったです。

by Take-Zee (2019-03-17 16:30) 

ヨッシーパパ

知っている方ですが、どんなドラマに出ていたかはおぼえていません。
by ヨッシーパパ (2019-03-17 18:26) 

そらへい

漫画が実写化されるのは
子供の頃から冒険活劇と決っていたので
ブラックジャックが実写化されたときは
意外でしたね。
by そらへい (2019-03-17 21:08) 

ナベちはる

「ブラックジャック」、実写化されていたのですね。知りませんでした…
by ナベちはる (2019-03-18 00:35) 

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