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「血液型と性格に関連性なし」18年前の上梓と騒動を思い出す [(擬似)科学]

血液型と性格に関連性なし。という研究結果を発表したニュースが今日Yahoo!ニュースに登場しました。たくさんのコメントがついています。私はそのニュースにびっくり。といっても、「関連性なし」という結論にびっくりしたわけではありません。

ゲノムの解読を行い、遺伝子検査のキットまで市販されている21世紀のこんにちに、今さらそんなことを研究する学者。それを日本一のポータルサイトがニュースとして取り上げること。さらに、学術的な結果として発表されているにも関わらず、どこかの現役地方議員までが、「私はまだ信じる」と“反論”コメントを書きこんで熱くなっている。

いったい日本はどうなるのだろうと改めて心配になりました。

人間関係は当事者が作るもの
人間関係は当事者が作るもので血液型が決めるものではないのだが……

もちろん、何を信じるかは個人の自由です。

なぜなら、科学だけが人間の価値観に関与するわけではないから。

個人的に、B型が好きとか、O型の人が嫌いとか、それもいいでしょう。

ただし、学術的な結果は結果として認めるべきではないでしょうか。

科学は科学、信仰や趣味とはきちんと区別して楽しめばいいのです。

たとえば、タバコに害があろうがなかろうが、生活のアクセントとして喫煙はやめない。

私はその生き方を咎める必要はないと思います。

ただし、タバコにどのような害があるか、という学術研究を屁理屈でコバカにしたり、自分の感情で否定したりすることがあってはなりません。

それと同じことです。

ニュースによると、血液型による採用差別が就職にあるといいます。

それはもう、科学的にも人間的にも遅れた国のすることです。

島国根性の我が日本人、いまだその程度なのか。戦後70年いったい何をやってきたのかと恥ずかしい限りです。

そんなだから、学生時代から不正に不正を重ねた割烹着の女性の、「ナントカ細胞の作成に200回成功した」というデマカセにコロッと騙されるのです。

血液型と性格・職業の適性・カップルの相性は何の関連も見られなかった


20年ちかく前になりますが、私は、血液型と性格の間に、再現性・客観性ある根拠は見いだせない、という内容の書籍を上梓したことがあります。

今もネットをまわると、拙著のレビューがいくつか残っています。ありがたいことです。ときどき、「どうもありがとう」とコメントに書いています。

血液型というのは、血液中に4通りある赤血球の抗原型。医学的には輸血や遺伝などで意味のあるものですが、人間の内面を分類する因子ではないし、ましてや、人間の相性や職業の適性に関係を見出した論文など過去に見たことがありません。

現在の「血液型と性格に関連性あり」とする説の喧伝者は、1970代後半から80年代に大量に啓蒙書を上梓した能見正比古・俊賢という父子です。

能見さん父子は、血液型性格の関連は「人間学」だと言い張ったものの、学会や雑誌に論文を発表したという話は聞きません。

彼らの説によると、衆議院議員、スポーツ選手、タレントなど有名人の各血液型分布から、「政治家には×型が多いから×型は政治家タイプ」「△型は大器晩成だから、プロ野球の新人王は△型が少ない」「×型のキャスターAと△型の女優Bが破局したのは、×型の几帳面さと△型の自由奔放さが災いした」などと統計を用いた「考察」と、テレビなどのメディアで顔やキャラクターが知られている有名人を例に出すことで、何となく当たっているような気にさせる効果を狙いました。

しかし、追跡調査をしたら、その分布はその時だけのものだったり、その分布自体、統計学的に有意ではなかったりしました。

私は上梓した書物で、1995年の全プロ野球選手(720人)や、1000人のタレントの血液型を調べ、それを示しました。

日本人は、各血液型の出現頻度がおおよそA型が4割、O型が3割、B型が2割、AB型が1割です。

これは民族によって違います。

かつてドイツのヒルシュフェルトという医師は、白人にA型が多く、中近東やアジア・アフリカにいくに従ってB型が多い調査結果の「違い」を利用して、「白人が優秀である」とする口実に血液型を利用したのです。

根拠がない上に、差別の温床にもなっているのが「血液型と性格」の「人間学」なのです。

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さて、心理学者はどう思ったのだろう


と、ここまでは血液型問題を知っている人ならだれでも書けること。

ここから先は私の体験です。

拙著については、とくに心理学者がこぞって読んであら捜しをしたと、耳打ちしてくれた人が当時いました。

学者は地味な仕事だから、一般ウケするテーマについて、その専門家としてテレビなどマスコミに呼ばれたいわけです。

血液型と性格って心理学者のフィールドでしょう。

格好の売り出しのチャンスなわけです。

それが、聞いたこともない名前の若造が、急にそのテーマで割り込んできたので、ヤキモチをやいたということらしい。

それが嘘かホントかわかりません。大げさな話だとは思いますけど。

ただ、2人の心理学者がわざわざ読者ハガキで“間違い”を指摘し、一人のライターが、自分の作品をあつかましくも盗用したと文句を言ってきました。

真面目な読者としての善意なんでしょうけど、忙しいところ恐縮ですよね(笑)

でも、プロ野球選手やタレントの血液型を1000人単位で調べる調査なんて当時誰もやっていませんでしたから、盗用でもなければ、ヤキモチ焼かれるようなものでもないんですけどね。

だったらお前らも調べろよ、ということで。

血液型に幻想を抱くことも問題ですが、真偽にかかわらずそういうくだらない話が耳に入ってくること自体が嫌でしたね。

いずれにしても、肩書や知名度や血液型などの偏見に惑わされることなく、自分の目で人間を判断できるようにならないといけない、と私は自分の経験上思っています。

性格を科学する心理学のはなし―血液型性格判断に別れを告げよう

性格を科学する心理学のはなし―血液型性格判断に別れを告げよう

  • 作者: 小塩真司
  • 出版社/メーカー: 新曜社
  • 発売日: 2011/10/13
  • メディア: 単行本


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