視聴率至上主義、と昨今のテレビ番組は批判されます。視聴率を上げるためならなんでもするから、ヤラセなどインモラルな行為が後を絶たないのだと。でも、それはうわべを見た批判にすぎない、その本質はスポンサー至上主義である、と主張しているのは今月号の『実話BUNKAタブー』(8月号)です。
企業が、業績が上がるように頑張るのは当たり前のこと。ネットの各サイトだって、より多くのPV(pageview、ブラウザで表示される回数、総閲覧数)やUU(unique user、閲覧者の頭数)があった方がいいでしょう。
ですから、テレビ局が、番組の視聴率を上げるために頑張ることは悪いことではありません。
問題は、そのためにインモラルな手段を使うことです。
では、そこまでしてどうして視聴率を上げたいのか。
テレビ局が業績を上げたいのは、スポンサーのためです。
そして、そのスポンサーの窓口になっているのは、広告代理店です。
『実話BUNKAタブー』(8月号)では、マスコミが「第四の権力」などといわれているが、「それをコントロールする巨大な力が存在した」「ジャ●ーズでもバー●ングでもない!業界を支配しているのはコイツらだ!」というタイトルの漫画を掲載。
スポンサーが、報道を含めたテレビ番組の制作に介入している実例や、そのスポンサーの窓口である「D通」(←同誌がイニシャルにしているけれど、どこかはまるわかり)には、スポンサーやテレビ局上層部の子弟がコネ入社していることを解説しています。
つまり、タイトルの「コイツら」というのは「D通」のことです。
「D通」が、我が国の話題のイベントやブームを仕掛けていることは、過去の記事「
2014FIFAワールドカップブラジル大会、利権を牛耳る黒幕とは?」で書きました。
「視聴率至上主義ではなくスポンサー至上主義」ですから、どんなに「数字を持ってる」人気タレントでも、スポンサーにはかなわないわけです。
同誌では、タレントがスポンサーの逆鱗に触れた例もいくつか紹介されています。
たとえば、深夜番組の『トゥナイト2』で人気レポーターだった乱一世は1998年、同番組で『トイレはCMの間に!』と失言してしまい、番組を降ろされました。
2005年6月6日には、みのもんたが『朝ズバッ!』(TBS)で、ビールの効用を話題にした時に失言したことを、このブログ「
医薬品と健康食品、その違いは?」でも書きました。
みのもんたは、「ビール酵母は免疫力を上げる」から「必ず朝、ビールとトマトジュースを混ぜてクーッと飲んでいる」「皆さん、ビオフェルミンなんておのみになってるじゃないですか。胃腸薬。だったらビールを飲んだ方がいいくらい」とコメント。
しかし、ビオフェルミン製薬は同番組のスポンサーでした。
ビオフェルミン製薬は2日後にスポンサーを降板しています。いくら「数字を持っている」人気タレントであろうが、あっさり番組を見捨ててしまいました。
波田陽区という「残念」で売り出し中の芸人が、資生堂単独提供の『おしゃれカンケイ』を『汚れカンケイ』と揶揄。ところが、資生堂は彼を世に出した『エンタの神様』のスポンサーでした。
波田陽区のその後の失速は自業自得でも、『エンタの神様』の制作会社にとってはトンデモない失言でしょう。
まあ、これらはタレントが悪いので、仕方ありません。
いっちゃなんですが、タレントなんて代わりがいくらでもいますから。
しかし、2005年に「T自動車」や「M電器」がリコールや回収騒動を起こした時、多額の広告を出稿しているため各局はスポンサータブーで沈黙したことは、消費者の「知る権利」の妨げになりました。
同誌では、そのような「タブー」をいくつも紹介しています。
視聴率は低くてもスポンサーの意向でゴルフを中継した
プロレスファンなら覚えていると思いますが、1988年~93年頃の話です。
新日本プロレスの中継が土曜日の昼間に移行しました。ところが、その時間帯はかなりの回数がゴルフ中継でつぶれていました。
で、ゴルフ中継の視聴率はせいぜい2~3%。
その頃、すでにプロレス中継はドル箱コンテンツではなくなりつつありましたが、それでも元はゴールデンタイムの番組ですから、ゴルフ中継よりは視聴率が見込めました。
にもかかわらず、ゴルフ中継を優先する。
これは、「視聴率至上主義」では説明がつかないことです。
その真相は、ゴルフ中継は有力スポンサーの意向だったのです。
名前は出しませんが、今度「パックインジャーナル」をネットで始めたいという某タレントや、田中康夫氏と袂を分かち民主党の国会議員になった某ジャーナリストたちで、メディアの視聴率主義を批判する会が数年前発足しました。
が、私は、その“ゴルフ中継の矛盾”から、「視聴率主義」が本質ではないと思っていたので、むしろ殊更そこを問題にすることで、「スポンサータブー」というおおもとの問題から目をそらせてしまうような気もしたので、その会には懐疑的でした。
本質的なメディア批判は、「視聴率至上主義」ではなく「スポンサー至上主義」に目を向けるべきだと思います。
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