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名誉毀損、2ちゃんねるのアノ書き込みはどうなの? [パソコン・ネット]

名誉毀損の話です。先週書こうと思っていましたが、「2ちゃんねる」で名誉毀損の書き込みをされたらどうやって削除するのか、という話がライブドアニュースに出ていました。「普通の人」だからといって油断できません。私も以前、それで困ったことがありました。

有名人でもないのに、そして私の方からは頼みもしないのに、2ちゃんねるには過去何回か私のことが書かれたのです。

最初は、まだ2ちゃんねるができたての1999年。私があるネット掲示板を開設していて、そこで論破された人が悔しくなっていろいろ書いていたようです。

まあそれは、内容があまりにもくだらなかったので、削除できるのなら全部削除してもらいたかったですが、とくに削除依頼は出さずに放っておきました。

あとは既存のスレッドにチラチラ出ることがあったのですが、2008年に何度か実名が出た時はがまんならなかったので、削除依頼を出したことがありました。

そこでは、該当箇所や理由はともかくとして、依頼者の名前も書かされて、それで結果的に、肝心の書き込みは削除しないくせに、依頼文は依頼者名を含めて公開するという、全く馬鹿げた仕打ちを受けたことがあります。

削除依頼を受け付けないのなら、その依頼をわざわざ晒す必要はないでしょう。

2ちゃんねるが、書き込みの削除に熱心でないだけでなく、削除依頼者を傷つけることで依頼を少なくしようとしていることは、そうした体験からもよくわかります。

2ちゃんねるの「創業者」や、スキャンダルメディア関係者などはよく、「なにか書かれても言論には言論で対抗すればいい」というんですが、それは現実的でない論理なんですね。

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いったん誹謗中傷を書かれてしまったら、書かれ本人が「それは違う」と否定したところで、読んだ者がほんとうに「違うんだ」と思ってくれる保証はありません。つまり「原状回復」かどうかを判断できません。

それに、言論というのはたしかに暴力と違って民主的な形式ではあるかもしれませんが、文字や言葉で表現することが得意な人も不得意な人もいます。

ですから、「言った者勝ち」「書いた者勝ち」を許さないためにも、「表現の自由」とともに「合理的に規制する仕組み」もきちんとさせるべきだと私は思います。

それをきちんとしてこなかったことが、今回の「特定秘密の保護に関する法律」成立に間接的につながっているのではないかと思っています。

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正しい削除依頼の仕方


それはともかくとして、先週話題になったのは、清水陽平弁護士のインタビューです。

>>「2ちゃんねる」の削除依頼のポイントは? 弁護士に「成功する方法」を聞いてみた

内容をかいつまんで書きます。

2ちゃんねるは、名誉毀損やプライバシー侵害で削除依頼が多いが、削除依頼しても削除される確率が低いといわれる。

ただ、それは削除依頼の仕方が悪い場合もあるから、数字だけでは判断できない。

2ちゃんねるのルールが『裁判所が削除を認めたものであれば応じる』とあるので、一番確実なのは裁判所の仮処分決定を得て削除を依頼すること。

仮処分の申立自体は弁護士でなくても行うことができるが、弁護士を使えば自分の名前は表に出ない。

安易に削除を依頼しても公開されるので、安易なことは書かない。

「警察に通報した」などと脅しのつもりで書くと、逆に証拠保全で削除されなくなる(依頼者の首を絞める)から気をつけろ。

さらに、2ちゃんねる側は『事情を知らない第三者には理解できないから』といって削除を拒むことがあるが、たとえばスレッドを辿ることで内容が分かる場合も多くあるので、もっと削除には柔軟に対処してほしいと清水 陽平氏は語っています。

いまだに削除に対して不誠実なんですね、2ちゃんねるは。

では、そもそも何をもって名誉毀損というのか


ところで、名誉毀損とはなにか、ということについてきちんと認識は持たれていますか。

それが理解できていないと、加害者になっても被害者になっても、気が付かないということになります。

みなさんがブログで、「毒をはく」「辛口」といった論調で厳しく人を糾弾したら名誉毀損になってしまうことがあるかもしれません。

そもそも何をもって名誉毀損というのか。

名誉と言っても、名誉には「名誉感情」(本人のプライド)もあれば、客観的にその人の内部に備わっている価値である「内部的名誉」、人に対して社会が与える評価である「外部的名誉」とがあります(「名誉毀損の法律実務」佃克彦)。

不法行為としての名誉毀損は、そのうちの「外部的名誉」を既存した場合です。

「人に対して社会が与える評価」というのがポイントで、被害者の評判が実質を伴わない表面だけの名声であったとしても、それを毀損すれば名誉毀損になってしまうのです。

あいつはこんなふうに振舞っているが、真実はこうなんだ、と暴露してしまうのは名誉毀損なんです。

暴露のほうが正しくて、世間に通っている評判が間違っていても、間違いを正したら名誉毀損なんです。

ですから、名誉毀損というのは、「虚名の保護」なんていわれます。

変といえば変ですよね。

それじゃあ、政治家の不正や、人気商売である芸能人などの真実に肉薄できないではないか、ということになります

そこで法律では、指摘する事実に公共性、指摘する目的に公益性、そして根拠に真実と信じるに足る真実相当性がある場合は、名誉毀損に当たる言論でも免責されることになっています。

まあ、今回の猪瀬都知事なんて言うのは公人中の公人ですから、事実を書く限りはどんなに厳しく書いてもいいわけです。

芸能人ならどうでしょうか。

芸能人は政治家と違い、名誉毀損が成立する場合があります。

ではどこで線を引いたらいいのか。

その件では、日弁連「人権と報道に関する調査委員会」の眞田範行委員の話を、このブログの>>表現の自由VSプライバシー保護、大原麗子や松田聖子の場合は?という記事ででご紹介したことがあります。興味深いところなので、再度ご紹介します。
「(芸能人のプライバシーは)一般私人とは異なるというのは事実だと思います。なぜなら、みずから公にさらしている部分があるわけですから、当然その範囲は狭いだろうということは言えるでしょう」
ー範囲は狭いということですが、最低限、守られる範囲はどういった部分でしょうか。
「それは非常に難しい問題ですが……たとえば、ジャニーズのおっかけ本裁判のように自宅の住所を公開するとか、大原麗子の裁判のように特別に侮蔑的に書くのは問題があるでしょうね。ただ、芸能人のプライバシーについては、芸能活動との関連で考えなければならないと思います」
ーといいますと。
「一つの例として、不倫疑惑があります。不倫、倫理性というのも芸能活動に関連して出てくる問題です。たとえば、女性にだらしないということを売り物にしているような、昔でいえば萩原健一とか、火野正平。ああいう人たちの場合はむしろそうしたことで人気が支えられている部分があるわけです。ですから個々の芸能活動とどう関連しているかを見ています」
ーたとえば歌手や俳優などが自分の結婚式を中継させることがあります。芸能活動とは関係のない部分でプライバシーを切り売りしているわけです。それが離婚の際にはほっといてくれというのは一方的だと思うのですが。
「自分の私生活について、公表している人もいればしていない人もいます。加藤剛という有名な二枚目俳優がいますね。あの人は芸能人ですが、自分の売り方について一定の線を引いていました。私生活は売り物にしないということです。ですから身内の問題について書かれた際に、出版社を訴えてこれは出版社が敗訴しました。つまり、芸能人といってもそプライバシーを切り売りしてるじゃないかと(ひとからげに芸能人にプライバシーがないと)するのは危険だと思います」
(中略)
政治的な発言をするコメンテーターやキャスター、犯罪者についてレポートする職業の人たち、および政治家については厳しくていいと思うんです。プライバシー保護の範囲は極端に狭くていい。そして、一般人には保護の範囲を広くして賠償金も高くする。その中間に位置しているのが芸能人ですが、いろいろな人がいるわけですからそれは個別にきめ細かく見ていくと。表現の自由と人権保護については、そうしたスタンスで判断されるのが望ましいのではと僕は考えています」(「平成の芸能裁判大全」より)
最近の例でいえば、みのもんたが被害者意識にみちたコメントを述べていましたが、眞田範行委員の説によれば、メディアは厳しく書いても差し支えないわけです。

要するに、「芸能人にプライバシーはあるか」という全称的な問題のたて方自体が間違っていて、「芸能人の○○○○に認められるべきプライバシーはあるか」と個別に考えるべきだということです。

そりゃそうですよね。ある芸能人がプライバシーを売り物にしていたからといって、だから芸能人にはプライバシーはない、とするのは、軍隊の連帯責任のような考え方です。

ということで、過剰に恐れて真実の肉薄を手控える必要はありませんが、無用な暴力言論で表現の自由を狭めることのないよう、ネット掲示板には節度ある書き込みを願いたいですね。

名誉毀損―表現の自由をめぐる攻防 (岩波新書)

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  • 作者: 山田 隆司
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  • 発売日: 2009/05/20
  • メディア: 新書


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