戦後史という言葉がしばらく出てこなかったので、久しぶりに冒頭から「戦後史」を使ってみます。
戦後史上最悪の公害は何かと問われれば、私はたぶん、アスベストと答えるでしょう。やはり、2006年の“クボタショック”は文字通りショッキングな出来事でした。
アスベストはあまりにも長きにわたって危険が指摘されながらも使われ続けたために、新たに使用されることはない今後についても、建物の取り壊しなどで気にし続けなければならず、その禍根は大きくタチが悪いと考えるからです。
26日には、関連の出来事として、「石綿肺」闘病中の自殺について労災補償支給が岡山地裁で認められました。
「石綿肺」闘病中に自殺、労災補償支給認める
読売新聞 9月26日(水)15時48分配信
アスベスト(石綿)の吹きつけ作業に従事し、じん肺の一種「石綿肺」を発症した夫が闘病中にうつ病となり、自殺したのは労災にあたるとして、中国地方の60歳代の女性が、国の遺族補償給付金不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が26日、岡山地裁であった。古田孝夫裁判長は、女性の請求を認め、国に処分の取り消しを命じた。(以下略)
1980年以降、アスベストが原因と見られる肺がんや中皮腫の罹患が増えており、当時現場で働いていた労働者や工場近隣の方々は、その精神的な苦痛も忽せにできないものであると思います。
ただ、世の中には、その恐怖心すら商売に利用する人がいるので困ったものです。
「アスベスト 浄水器」で検索すると、いまだにいろいろなメーカーや販売者のサイトが出てきます。
曰く、高性能逆浸透膜浄水器でないとアスベストは除去できない、だからウチのを買いなさい、というセールストークで共通しています。
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それにのせられて、アスベストは怖い⇒だから高性能逆浸透膜浄水器を買おう、と考えてしまう消費者もおられるかもしれません。
しかし、そこで慌てて高性能逆浸透膜浄水器を買う前にちょっと立ち止まって考えていただきたいのです。
何となれば、「アスベストを飲み込む」ことは、「アスベストを吸い込む」ようなリスクはないとされているからです。
WHOの飲料水質ガイドラインでは、マウス実験でアスベストには生殖毒性、胎児毒性、催奇形性は認められず、変異原性もほぼ観察されないので、「健康影響の観点からガイドライン値を定める必要はないと結論できる」としています。
そもそも、水道水にそんなにアスベストは入っているのか。たしかに、アスベストを使った水道管が使われていた時期もあり、今では順次アスベストのないものに取り替えられているものの、ゼロではありません。
そこで05年に、厚生労働省健康局水道課が「水道管に使用されている石綿セメント管について」という通知を出しています。
同省(健康局水道課)が、92年に改正した水道水質基準の検討時にアスベストの毒性を評価したものの、アスベストは呼吸器からの吸入に比べ経口摂取に伴う毒性はきわめて小さく、水道水中のアスベストの存在量は問題となるレベルにないことから、水質基準の設定を行わないとしています。
もちろん、科学というのは相対的真理の長い系列にあるもので、未来永劫絶対、という保証はできません。
しかし、もしリスクが現実的なら、吸い込んだ人々に出ているように、飲んだことによる健康被害の報告だってあってもいいはずです。
私は浄水器業者の営業妨害をする気はありません。購入されることは全く自由です。
が、現実的でない確率といわざるを得ないリスクを売り物に、「アスベスト 浄水器」というキーワードで冒頭に書いたようなページが多く検索されるのは、私たちの暮らしを支えるべきネットの情報が非科学なものに凌駕されてしまうようで、何か釈然としない気持ちに陥ってしまうのです。
健康情報・本当の話
- 作者: 草野 直樹
- 出版社/メーカー: 楽工社
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
2012-09-29 00:48
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共通テーマ:学問
そもそもアスベスト入りの水というなら
濾過を繰り返す水道水よりも
自然のミネラルウォーターの方が危ないですよ。
ミネラルウォーターなんて、
衛生調査も水道水よりずっと甘いしね。
去年のセシウム汚染の時ならともかく
今も有り難がって飲む人の気が知れないですね。
by 1stdmain (2012-09-29 01:17)
いろんなことを商売にしようと
考えますね。
よく調べてからがいいですね。
by pandan (2012-09-29 06:13)
浄水器・・・・全く興味がなく・・・・
大阪の水道水を飲んでます。(笑)
by hatumi30331 (2012-09-29 07:06)
なんだか、不安に感じている人を食い物にする悪徳業者の臭いがします(^^;) それと、それに踊らされている人は、よく考えて欲しいですね!周りに流されず、自分でよく考えて使用や購入を考えて欲しいですね(^^)v
by さうざんバー (2012-09-29 15:05)
放射能などのように、「目に見えない」ものの危険性を個人で判断するってとても難しいですよね。学者によって意見もさまざまなどで「素人」には判断は無理なので困ってしまいます。昔なら、国や行政をよりどころにしていたと思いますが、3.11以降、国は信用ならんとなってしまい、そのよりどころすら失い、国民は不安になっている、そんな気がします。
by はる (2012-09-29 19:53)