年賀状で「パロディ事件」を思い出した：戦後史の激動：So-netブログ

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戦後史上、変わらぬ年の瀬の仕度といえば、お正月食品の買い出しと年賀状書き。最近は年賀状作成ソフトとインクジェットプリンターを使って、フリー素材で作った年賀状が増えてきたが、中にはオリジナリティにこだわるものもあるようだ。

だが、できたものは「オリジナル」であっても、その素材が他人のデザインだったら、それは本当のオリジナルといえるかどうか……。

戦後史上、フォトコラージュのオリジナル性をめぐって裁判になったことがある。

マッド・アマノ氏が、山岳写真家・白川義員氏の山岳スキーヤーを写した写真をもとに、その山の頂の上に巨大なタイヤを置き、スキーヤーのシュプールをタイヤのトレッドのように見立てて交通戦争を皮肉った作品を『週刊現代』に発表。白川義員氏に著作権侵害を訴えられた、いわゆる「パロディ事件」がそれだ。

まず、1970年1月、マッド・アマノの作品は著作（財産）権の侵害ということで、『週刊現代』の発行元である講談社が写真の使用料50万円を白川側に支払うことになった。

さらに1970年9月、マッド・アマノ氏の作品は著作者の人格的利益を侵害しているとして、東京地裁に刑事告訴までされた。これも、白川氏側の意向が反映する形で和解をしている。

「パロディは高度な批評精神のもとにうまれる大人の娯楽なんだからいいじゃないか」という考え方もある。パロディ自体を否定するわけではない。

たとえば、コロッケや清水アキラの物真似は、自分自身で演じる芸であり、オリジナリティはある（モノマネされる側の気持ちは愉快でない場合もあるようだが）。

コロッケがちあきなおみの物まねをしても、表情も顔のパーツもすべてコロッケ自身のものであり、ちあきなおみのそれらを拝借しているわけではないだろう。

だが、マッド･アマノ氏の事件の場合は、素材自体が他人の著作物の切り貼りである。

文章でも、他人の文の引用を集めてひとつの結論を出すという場合があるから、そのあり方を否定することはできないが、少なくともパロディ事件に限っていえば、もとの著作がはっきりとわかる形での作品だったので、白川氏が作品を冒涜されたような気持ちになったのだろう。

ある作品（写真や絵）の中の人の顔や物などの素材を切り出すにしろ、既存の読み物から一部引用するにしろ、著者の意図や思想を壊さないようにするのは法以前の礼儀であることは肝に銘じておかねばならない。

というのは筆者の考えだが、みなさんはいかがお考えだろうか。