SSブログ

出生前診断告知ミス訴訟、3つの疑問あり! [社会]

出生前診断告知ミス訴訟

出生前診断のミスから、多額の賠償判決が出たという訴訟を週刊誌が報じています。出生前診断で「異常なし」と告げられたのに、産まれた子供はダウン症に10以上の合併症があって3ヵ月で亡くなったので、その診断ミスと、生まれた子供の苦痛の慰謝料をよこせという訴訟です。重い話題なんですか、一言したくて書いてみます。



これがニュースのタイトルです。

診断結果は「正常」、生まれた子供は「ダウン症」で賠償金1000万円「出生前診断」で間違えた医者の責任をどう考えるか(現代ビジネス 10月2日11時1分配信)

どういうニュースかというと、出生前診断で「検査結果は異常なし」と医師からは告げられたのに、生まれてきた我が子は、ダウン症に10以上の合併症があって3ヵ月で亡くなった。

そこで、出生前診断の診断ミスによる慰謝料と、生まれたことによって赤ちゃん自身が被った苦痛の慰謝料という2点で親が提訴して、前者の賠償が1000万円だったという話です。

記事は、「障害が分かれば中絶するかどうか」を選ぶことの重要性を裁判所が認めたことが、本来の中絶の趣旨に沿わない非倫理的なものであることを指摘(←もっともです!)

本来、中絶できる理由は、「身体的または経済的に子供を産み育てることが困難な場合」にだけ法律で認められており、ダウン症だから中絶したいということは認められていないのです。

つまり、もともと、この両親の方針自体が無理筋なのです。

でも、この裁判は、「育てることが困難な場合」を拡大解釈して、「ダウン症だから」という中絶理由を認めたに等しい判決を出してしまったことになります。

もっとも、判決自体はあくまで「診断ミス」という客観的なものに基づいているわけですから、元凶は「出生前診断」にこそある、といった方がいいかもしれません。

出生前診断。罪深い叡智ですね。

「拡大解釈」と書きましたが、合併症をもったお子さんを育てるというのは実際大変かもしれません。

でも、出産というのは、そういう可能性をもっているものなのです。

妊娠・出産には、様々なリスクがあります。

母体そのもののリスク、早産・流産・死産のリスク。

生まれた子供には何らかの障がいがある場合もあります。

これらはみな確率の問題なのです。

高齢出産ならその確率が高くなるけれど、若くても決してゼロではなく、出産という行為は何歳の誰であっても、母子ともに命がけの営みなのです。

その認識と覚悟を持てず、何かあってから他者のせいにするようなはた迷惑な了見なら、妊娠に踏み出すべきではないと私は思います。

野田聖子衆院議員の長男闘病告白をどう見るか
坂上みき出産で思い出したこと
出産は満月や新月に多い?

スポンサードリンク↓

「ロングフル・ライフ(不当な人生)訴訟」は健常者の思い上がり


後者については、両親は、中絶しておけば赤ちゃんは生まれなかったから、苦痛を味わうこともなかったので、生まれたことによって赤ちゃん自身が被った苦痛に慰謝料を支払えと言っているのです。

コメントで両親が叩かれ放題ですね。一部引用します。
要するに、ダウン症って分かってれば堕ろすのに見落として産まれちゃって夫婦共々余計な心労被って、どうしてくれるの責任取ってよ、ってことですよね? なにこの裁判。親のエゴしか見えん。検査だって100%じゃないだろうに…


こういうことが増えると出生前診断やめましょうって事になるのかな。
小児科医、産婦人科医のなりてが少ないのもこういった訴訟が多いからって話もあるし。


医師が赤ちゃんに障害を与えた訳ではないのに。


いつもなら、ネット民に異論を述べるところですが、今回はコメントの方が健全だと思います。

両親のような訴えは、専門的には「ロングフル・ライフ(不当な人生)訴訟」と名付けられ、フランスでは以前、障害をもつ子供本人に対する賠償金支払いの訴えが認められるケースもあったものの、こうした主張は倫理的におかしいと考える人が多く、アメリカの裁判所でも州によって判断が割れ、近年では一部の州で、訴訟を起こすことそのものが禁じられるようになっていると記事では紹介されています。

そりゃ、おかしいですよね。

この両親は、「生まれて来なかったほうがマシな子もいる」といっているに等しいのですから。

でも、私がもっとおかしいと思ったのは、そうした批判を想定した両親の言い分です。

誰も指摘していませんが、これはまずいと思いますよ。

両親はこうコメントしています。

「苦しみ抜いて亡くなった息子本人に、先生から謝罪してもらうには、息子にも何らかの損害があることにしない限り、訴えることさえできないんです」

「何らかの損害があることに」するって……

要するに、法的に請求できないことを無理に裁判で争うために、法的要件をでっちあげていると宣言しているのです。

怒り.jpg

お子さんの障がいも、寿命も、もとより医師の責任ではないのですから、これは八つ当たりだと私は思います。

かりに裁判官がその言い分を認めたとして、請求額を支払えという判決が出たとしても、その医師は金を払ったらそれでおしまいです。

「謝罪」なる要求は永遠に実現しません。

何より、勝手に「損害があること」にされた息子さんは、果たしてそれを望んだのでしょうか。

息子さんは何も言っていないはずですから、この両親の言い分は、息子さんを利用しているわけですよね。

そんなずるい表現をせず、自分の感情が許さなかったと正直に述べればいいじゃないですか。

この点においても、私は共鳴できません。

結局亡くなったのは悲しいことで、両親の気持ちは察します。

でも、少なくとも障がいは、私は両親にはもっと大きな気持ちで受け止めてもらいたかったと個人的には思うのです。

出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来 (朝日新書)

出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来 (朝日新書)

  • 作者: 河合 蘭
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2015/04/13
  • メディア: 新書


nice!(268) 
共通テーマ:妊娠・出産

nice! 268

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます