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『昭和の流行歌物語』で浜村美智子の『パナナボート』を思い出す [芸能]

昭和の流行歌物語

『昭和の流行歌物語 佐藤千夜子から笠置シズ子、美空ひばりへ』(塩澤実信著、展望社)を読みました。文字通り、昭和の社会や時代背景を当時の流行歌手のエピソードとともにまとめられています。日本レコード大賞審査員もつとめた、塩澤実信氏の評価を交えながら、タイトルにある歌手だけでなく、歌謡史に名を刻む歌手や楽曲についてのエピソードを書いています。(上画像はGoogle検索画面より)



歌は世につれ世は歌につれ……、

先日も書いたような記憶があるフレーズですが、

参照⇒『歌謡曲だよ、人生は』宮史郎、女のみち、妻夫木聡、久野雅

まさにそのコンセプトにぴったりなのが本書『昭和の流行歌物語 佐藤千夜子から笠置シズ子、美空ひばりへ』です。

時代は大正末から昭和終焉まで、5章に分けて解説しています。

第1章は昭和11年まで。佐藤千夜子について紙数を割いています。

第2章は戦時下。淡谷のり子の「ブルース」などがとり上げられています。

第3章は、昭和30年まで。『リンゴの唄』から『君の名は』まで。

第4章は、昭和30~45年まで。

そして最終章が昭和終焉までです。

私の世代では、第4章の後半になって、やっとリアルで知っている歌手や歌名が出てくるのですが、それ以前についての記述も、歌謡史に対する理解を助けられました。

たとえば、高音の三橋美智也が成功したので、今度は低音のフランク永井を売りだしたというあたりは、なるほど、そういう経緯だったのか、と納得。

本文中には、著者と歌手の記念写真も掲載されていて、そのエピソードに説得力をもたせています。

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浜村美智子はいい意味での「モンスター」であった


さて、本書は、事実のみを淡々と……、というのではなく、芸能界に精通、個々の芸能人との親交もある塩澤実信氏の評価を交えながら書き進めています。

たとえば、石原裕次郎は、かすれた悪い声で歌も下手だが、音響技術でカバーして歌をリリースした、と書かれています。

でも、「歌える俳優」といわれる人はたくさんいますが、その中では石原裕次郎は完成度が高いと私は思います。

名前は出しませんが、他の「歌える俳優」達は、音響技術をもってしても、石原裕次郎にかなわなかった、ということでしょうか。

かすれ声の「悪さ」をいったら、本職の森進一青江三奈の立場がありません。

同書の中で、「モンスター」という表現をされているのは、浜村美智子です。

浜村美智子といえば、「デーオ」の歌詞が印象深い、『バナナボート』がヒットした歌手です。

バナナボート

芸能界、とくに歌の世界で「モンスター」といえば、私の世代ではピンク・レディーですが、レコードの生涯セールスがいちばん多かった彼女たちに匹敵する大きな存在だったということかと思いきや、同書の著者は、あまり浜村美智子のことが好きではないようで、どちらかというと“キワモノ”扱いのようです。
 キッネのような目を光らせ、髪を長くたらして、腰をふりふり、手を前方につき出したり頭の上で動かしたりしながら、奇声を発して歌った「バナナ・ポート」は、浜村の名を一瞬のうちに人気者におしあげてしまった。
 黒人歌手ハリー・ベラフォンテが歌ったカリプソで、当時アメリカで大流行していた。ビクターは、きっそくこの歌に目をつけ、浜村に歌わせることにしたのである。
 彼女はその頃、ナイトクラブで歌ったり、アルバイトにヌードモデルになったりして、学費を稼いでいる高校三年生だった。
 彼女のような経歴は、マスコミの好餌となる。浜村はマスコミの集中取材で、わずか一曲だけで爆発的な人気をつかむが、音楽の基礎のない悲しさと、人を喰った小憎らしい態度がわざわいして、流星のように消えていった。
 浜村美智子こそ、マスコミの気まぐれがつくりだした“一過性モンスター”の走りといえた。

ちょっとあんまりな書き方という気もしますが……

そもそもマスコミにプッシュされずに、スターになれる芸能人はいるのでしょうか。

それに、今、ネットを検索するとわかりますが、浜村美智子の再評価を行うサイト(ブログ)は少なくありません。

『バナナボート』というのは、ハリー・ベラフォンテの楽曲『Day-O(Banana Boat Song)』のカヴァーで、江利チエミら競作歌手を蹴散らして浜村美智子版が大ヒット。「カリプソの女王」の名をほしいままにしたのです。

もともとは、ジャマイカの荷役労働者が、バナナを船に積むときに自らを鼓舞したり、仲間との連帯を確認したりする意味で歌う労働歌をもとに作られたそうですが、まさに「デーオー」こそが、ジャマイカのバナナ運びの荷揚げ労働者の声なのです。

当時、浜村美智子はバナナを入れる布袋で自前の衣装を作ったといいますから、そのセンスや自己主張は、私には魅力的にうつりますけどねえ。

この歌は、さらに70年代に、ゴールデン・ハーフというグループがカヴァー、というより大幅リメイクでリリースし直したので、それをきっかけにこの歌を知った方も多いのではないでしょうか。

ゴールデン・ハーフ

実は私もその一人なんですが。

しかし、同書では、ゴールデン・ハーフについては全く触れられていません。

問題外だったみたいです

でも、私が小学校の頃、人気ありましたけどね、エバちゃん

いずれにしても、歌謡曲の昭和史を本格的に振り返ってみたい方にお読みいただきたい一冊です。

昭和の流行歌物語―佐藤千夜子から笠置シズ子、美空ひばりへ

昭和の流行歌物語―佐藤千夜子から笠置シズ子、美空ひばりへ

  • 作者: 塩澤 実信
  • 出版社/メーカー: 展望社
  • 発売日: 2011/07
  • メディア: 単行本


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