『特捜最前線』には名作が目白押しですが、藤岡弘、が演じる桜井刑事が中心の物語の一つである、第215話『シャムスンと呼ばれた女!』がとくに印象に残ります。風吹ジュンが、横浜のドヤ街でシャムスンと呼ばれる女性を熱演し、この作品をきっかけに本格女優としての道を歩みます。桜井刑事もこの回を境に、ヤサグレが影を潜めていきます。(上記画像は劇中より)
藤岡弘の出演作については、これまで、『小さなスナック』(1968年、松竹)や、『
コント55号と水前寺清子の神様の恋人』(1968年、松竹)などの映画、『白い牙』(1974年4月6日~9月28日、大映テレビ/日本テレビ)や、『
消えた巨人軍』(1978年9月1日~9月29日、東映/日本テレビ)などのテレビドラマをご紹介しました。
Google検索画面より
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『小さなスナック』藤岡弘、尾崎奈々、パープルシャドウズ
『小さなスナック』より
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『白い牙』藤岡弘、主演の孤独で孤高のドラマがDVDに
『白い牙』より
『特捜最前線』の桜井刑事(藤岡弘)とは……
『特捜最前線』(1977年4月6日~1985年10月2日、東映/テレビ朝日)については、今まで何度かご紹介していますが、
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『特捜最前線 BEST SELECTION VOL.1』二谷英明、藤岡弘、
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『特捜最前線 BEST SELECTION disk6』子供の消えた十字路
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『特捜最前線BESTSELECTION disk8』津上刑事の遺言!現場百回
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『特捜最前線』誘拐I・貯水槽の恐怖!誘拐II・果てしなき追跡!
警視庁刑事部特殊命令捜査課、という架空のセクションではたらく、刑事たちの話を描いた昭和の人気ドラマです。
藤岡弘が演じていたのは、大物弁護士を父親に持つ、そして兄たちも弁護士になった、エリート一家の子弟である桜井哲夫警部→警部補です。
それゆえ、幼少時から父や兄たちに対する劣等感の塊であり、父親への反発心から、弁護士ではなく、不言実行型の警察官になりました。
捜査方法は、ルールやモラルより事件解決優先。
単独行動も多く、時には免職必至の手法も厭わない乱暴な刑事でした。
しかも、釈明や自己主張を一切しないので、同僚刑事とも衝突が絶えません。
それが、警部補に降格したある事件をきっかけに、次第に刑事としての王道を歩むようになります。
なぜ、桜井哲夫が変わったのか。
降格したからではありません。
そのきっかけとなる回が、視聴者原案投稿作品として当時話題になった、第215話『シャムスンと呼ばれた女!』でした。
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ビル4階の窓からガラスをぶち破って身を投げ……
特命課に、10kgの覚せい剤が取引されるという地元医師(織本順吉)からのタレこみが入りました。
桜井(藤岡弘)と紅林(横光克彦)は、労働者を装って横浜の裏町に潜入。
覚せい剤の常習者らしき、シャムスンと呼ばれる女(風吹ジュン)まではわかりましたが、そこから先の売人に進めません。
桜井刑事は、「一つだけ方法がある」と言い、特命課にもその内容を明かさず、再び横浜の裏町に潜入しました。
桜井刑事が採った方法は、シャムスンと同棲して探ることでした。
それを知り、「
桜井さん、あんたって人は……」と絶句する紅林。
桜井は、自分が海外に旅立つとシャムスンに情報を流します。
「帰りを待っていてもいい?」と問う彼女に対して、「一緒に行こう。その前に、覚醒剤を売りさばいて金に換えてからだ。売人を紹介してくれ」と頼みます。
シャムスンに誘われ、売人のアジトに潜入しましたが、特命課の張り込みに気づいた売人は、桜井が刑事であることを追及。
自分が利用されていたことを知ったシャムスンは、桜井をナイフで刺します。
が、その直後に、売人の一人が、桜井の持っていた2通のパスポートに気づきます。
要するに、桜井はただシャムスンを利用するだけではなく、覚せい剤のルートを突き止めて、シャムスンと覚せい剤の関係を絶ったうえで、自分は引責で刑事をやめ、シャムスンと2人で渡航するつもりだったのです。
桜井の真意を知ったシャムスンは、「あなたの仲間にこの場所を教えてあげる」と言い、何と、ビル4階の窓からガラスをぶち破って身を投げます。
たとえドラマでも、強烈なシーンです。
シャムスンの遺体を前に、「あんたが殺したんだ!」と、シャムスンと親しかったバーのママに罵られた桜井は、以後、『特捜最前線』の最終回までその後6年間、“身勝手”で無茶な捜査をしなくなりました。
その意味では、シャムスンの出演は1回でも、ドラマや桜井のキャラクターに与えた影響は大きかったのです。
これが1時間のドラマで展開されるのですから、昭和のドラマというのは中身が濃い。
何よりシャムスン役の
風吹ジュンの熱演が光ります。
Google検索画面より
風吹ジュンというと、本格的な女優として名前が出たのは『蘇える金狼』(1979年、角川春樹事務所/東映、東宝洋画)からですが、艶技なしのキャスティングで頭角を現したのは、私はこのシャムスン役ではないかと思います。
世捨て人のようになって、覚せい剤に走ったシャムスンが、桜井と知り合って、人間らしい心を蘇らせるという難しい役どころでした。
それにしても、こんな熱い役を演じた藤岡弘、がもう古希なんですね。
当時のレギュラーメンバーは、二谷英明、本郷功次郎、大滝秀治、夏夕介、荒木しげるなど、藤岡弘、よりも若い人も鬼籍に入っていますが、藤岡弘、には、ぜひこれからも元気で活躍してほしいものです。
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