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『サラリーマンどんと節気楽な稼業と来たもんだ』は川崎敬三主演 [懐かし映画・ドラマ]

サラリーマンどんと節気楽な稼業と来たもんだ

『サラリーマンどんと節気楽な稼業と来たもんだ』(1962年、大映)をご紹介します。先日亡くなった川崎敬三さんの主演作品です。いうなれば、クレージーキャッツが主演ではないクレージー映画です。タイトル通り、ハナ肇とクレージーキャッツが出演するほか、当時隆盛を誇った大映らしく、芸達者な俳優たちが数多く出演しています。(断りのない画像は劇中から)



川崎敬三さんの訃報に関する記事を先日書きました。

川崎敬三
『新だいこんの花』(NET=テレビ朝日より)

川崎敬三さん、最後のインタビューで「遺言」を公表していた!?

そのとき、川崎敬三が出演していたテレビ朝日のドラマ『新だいこんの花』を観ていたので、ご紹介しようと思いましたが、すでに記事が2000字を超えていたので、また機会を改めてといったん記事を終えました。

その後、考えが変わり、せっかくなので、川崎敬三が主役の作品のほうがいいかなと思い直し、私好みの娯楽作品はないだろうかと選んだのが、今回『サラリーマンどんと節 気楽な稼業と来たもんだ』です。

「サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ」で始まる『ドント節』は、植木等をヴォーカルにした、ハナ肇とクレージーキャッツの歌です。

ドント節

本作のタイトルは、まさにそこから命名されたものです。

この歌がヒットして、ハナ肇とクレージーキャッツも売れ始めたので、大映は、ハナ肇とクレージーキャッツの映画を作ろうと考えたのでしょう。

ただ、当時のクレージーキャッツは、『大人の漫画』と『シャボン玉ホリデー』という、バラエティ番組の実績はつくりつつあるものの、映画俳優としては未知数。

そこで、出演はさせるけれども、ストーリー上の主役は、大映の看板俳優の一人である川崎敬三をたてた、ということだと思います。

こういう作り方は、よくある話で、たとえば、このブログで以前ご紹介した、ピンキーとキラーズが出演した『恋の季節』(1969年、松竹)がそうです。

『恋の季節』より
『恋の季節』より

『恋の季節』ピンキーとキラーズの歌がヒットしてできた恋愛劇

1968年7月に発売されたピンキーとキラーズの歌が、オリコン17週連続1位の大ヒットとなったため、半年後に映画が作られました。

恋の季節

ピンキーとキラーズも出演していますが、ストーリーの中心は本職の俳優である、入川保則奈美悦子でした。

奈美悦子と早瀬久美
『恋の季節』より

このブログで何度もご紹介している、植木等谷啓、クレージーキャッツが主演の「東宝クレージー映画」は、この大映のクレージーもののヒットを受けて同年から始まりました。

当時、映画(俳優)がいかに芸能界で権威のあるものだったかがわかりますね。

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ネタバレ御免のあらすじ


三日月物産は全国に支社がありますが、信州信濃支社だけが赤字。

しかも、使途不明金や異常な交際費など、社内会計も不明朗です。

水は常に流さないと腐ります。

信州信濃支社の幹部は、人事交流もない長年の支社暮らしで堕落してしまったのです。

そこで社長(高村栄一)は、息子(網中一郎)を乗り込ませることにしますが、その前に、クレージーキャッツの7人を信州信濃支社から東京本社に転勤させ、様子を聞くことにしました。

支社長(潮万太郎)は、中卒で本採用されていないにもかかわらず、独学で語学堪能、会社の会計も全て把握している生真面目な柏木洋介(川崎敬三)が、社長の御曹司にすべてをバラすのではないかと心配します。

そこで、その懐柔に、本採用の辞令を出したり、他の社員と結婚を決めていた女子社員(三浦友子)を交際させたり、ナンバーワン芸者(弓恵子)のお色気を使ったり、地元の有力企業の令嬢(浜田ゆう子)と見合いさせたりします。

しかし、不正は不正と報告すべきという柏木洋介(川崎敬三)には通用しません。

年配の方はご存知と思いますが、潮万太郎と弓恵子は実の父娘です。

植木等と絡む弓恵子と潮万太郎の実の父娘
植木等と絡む弓恵子と潮万太郎の実の父娘

クレージーキャッツの7人は、なまくらな信州信濃支社から、厳しい東京本社に来て自信喪失気味でしたが、事前リサーチが終わった社長の息子(網中一郎)とともに、信州信濃支社に戻ることになりました。

支社で小遣いをしている洋介(川崎敬三)の父親(見明凡太朗)は、洋介(川崎敬三)は人としては正しいが、周囲に歩調を合わせるべきサラリーマンとしてはこの先支社で仕事をするのはむずかしいと判断。

柏木一家、母親役は浦辺粂子
柏木一家、母親役は浦辺粂子

洋介を札幌支社へ転勤させてほしいと、支社長に求めます。

支社長は渡りに船と、さっそく異動を決めますが、支社長の大切な一人娘(万里昌代)は洋介(川崎敬三)に付いて行ってしまいます。

社長の息子(網中一郎)は、支社長の腰巾着から息子派に簡単に寝返った男(三角八郎)を信用せず、遠くの支社に飛ばすものの、幹部たちは許す大甘な裁定で支社の再生を誓うことになりました。

全体を通して無難なストーリーですが、人としては正しくてもサラリーマンとしてやっていくのは難しい、という洋介(川崎敬三)の父親(見明凡太朗)の判断が圧巻でした。

その一方で、厳罰が予想された支社長は許され、ただしコウモリ社員は斬られるというのも、サラリーマン社会らしい裁定です。

もちろん、支社長が許されたのは温情ではなく、貸しを作ることで自分の支配下に置くという息子の戦略です。

サラリーマンにかぎらず、政治家であろうがタレントであろうがセールスマンであろうが、その職能を研ぎ澄ますことを最優先した場合、人格のシンバリ棒を壊すか外すかしなければならない、という葛藤はつきものです。

その意味で本作は、くすっと笑って、少し考えさせる、品のある娯楽作品であると思いました。

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  • 発売日: 2012/05/28
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