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『まさか発達障害だったなんて』生活に採り入れたい9つの工夫 [生活]

発達障害とさかもと未明

『まさか発達障害だったなんてー「困った人」と呼ばれ続けて』(星野仁彦、さかもと未明著、PHP)を読みました。膠原病と発達障害が大人になってからわかった、さかもと未明氏の家族環境や成育歴に、精神科医・星野仁彦氏の診断の根拠、発達障害に対する考え方を絡ませた構成になっています。



発達障害というのは、子供が成長する過程で、何らかの原因によって脳に障害が起こり、言語や運動、社会性などに障害がみられることをいいます。

発達障害の原因は、これだという特定されたものがありません。ただ、育児やしつけの仕方が発達障害になることはありません。

発達障害は症状が様々で、純然たる知的障害もあるし、自閉症のように知的障害がある場合とない場合(アスペルガー症候群など)にわかれるものもあるし、私の長男のような事故による子どもの高次脳機能障害も発達障害扱いされます。

いずれも学校において、友人と上手くコミュニケーションをとることができなかったり、集団生活に馴染めなかったり、音や映像などに過敏に反応したり、その一方で、自分の好きなことをみつけると、大人もびっくりしてしまうような集中力や没頭をみせたりします。

現れる症状によっては、社会で適応していくが難しいこともあります。

発達障害であることを明らかにしている(もしくは明らかである)有名人は、黒柳徹子、山下清、ケネディ大統領、スティーブンスピルバーグ、スーザンボイル、トムクルーズ、トーマスエジソン……。

たとえば、黒柳徹子は計算障害と読書障害を抱えているといわれています。

で、さかもと未明氏は、アスペルガー症候群で、社会になじめないそうです。

星野仁彦医師は、さかもと未明氏に対して次の3点を提案。

1.受け入れることで自己肯定
2.サポートしてくれる理解者を得る
3.得手不得手を自覚して周囲の助けを借りる

そして、さかもと未明氏の実情に沿って、日常生活に取り入れられる9つの工夫を掲げています。

1.すべきことは一覧表で視覚化
2.自分だけの時間と空間を作りクールダウン
3.便利なものは活用、デジタル機器で負担を軽減
4.前もって弁明
5.職場の人間関係を改善(仕事を上手に断る等)
6.感情や衝動性のセルフコントロール
7.バリバリ打ち込まず仕事量はコントロール
8.家庭団欒の時間を持ちオンとオフを切り替える
9.自分にあった仕事を選ぶ

さらに、心身への悪影響を防ぐための4つのポイントも挙げています。

とくに、目新しい内容ではありませんが、発達障害の人、およびその家族の方で詳細に関心のある方は本書をご覧ください。

まあ、さかもと未明氏の発達障害を軽視するわけではありませんが、その9点自体、知的障害を伴わない発達障害の「処方箋」であり、実際にはもっと深刻な発達障害の人もいるんですけどね。

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飛行機で泣く赤ちゃん問題を、気やすく発達障害に還元しないで!


私は、本書自体にとくにケチを付けるつもりはありませんが、Amazonのレビューを見た時に、さかもと未明氏のふるまいに対する無原則な許容や同情、その一方で発達障害に対する新たな偏見も出やしないかという一抹の不安も正直感じました

まず、彼女の場合には、ふるまいのすべてを「アスペルガー症候群」に還元できるのかどうか、本書を読んでも懐疑的な気持ちは晴れません。

彼女は膠原病の全身性エリテマトーデス(SLE)と全身性強皮症、それに合併するシェーグレン症候群(SS)の診断も受け、薬は毎日50錠飲んでいるそうです。

多重の疾患それ自体がストレスになって精神を病む原因になっている可能性もあり、彼女の行動所見を、即発達障害そのものによると見るのは、むしろ発達障害に偏見をいだかせるような気がします。

たとえばAmazonでは、「さかもと未明氏に対して「飛行機で騒いだあの人」的なイメージで語る人がいるが、身近に発達障害を持つ人がいたら、とてもそんな発言は出来ない。」という意見もありました。

さかもと未明氏が、機内に同乗していた乳児が泣き叫んでいたことに耐えられずに「ブチ切れて」、「もうやだ、降りる、飛び降りる!」と、着陸準備中にもかかわらず席を立ち、出口に向かって走り始めたと、わざわざ自分でメディア(雑誌「Voice」)で告白したアレです。

要するにレビュー者は、彼女は発達障害なのだから、飛行機でのアレは批判してはいけない、私は心優しい理解者だからできない、といいたいようなのです。

でもそれは違いますよね。

さかもと未明氏のアレが「「飛行機で騒いだあの人」的なイメージ」で騒がれたとしても、それはさかもと未明氏自身が著名人として、メディアで発言をしたからです。

言論で飯を食う人間が自分で発言した以上、批判は甘受すべきものです。

ウケなかったからといって、今度は一転して障害のせいにする、というのは、

そのレビュー者が、障害に同情している、つまりコバカにしていることにほかなりません。

発達障害に限らず、障がいに対して、周囲の人間が求められていることは同情ではないでしょう。

まさか発達障害だったなんて (PHP新書)

まさか発達障害だったなんて (PHP新書)

  • 作者: 星野 仁彦
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/09/13
  • メディア: 新書


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