『脳が壊れた』(鈴木大介著、新潮社)を読みました。41歳のルポライターが突然脳梗塞に。一命は取り留めたものの、軽度の高次脳機能障害になりました。見た目は「普通」の人と同じようにみえるほど回復したものの、外からはわかりにくい障害に悩まされるという体験談です。
脳梗塞は、頭の中の血管が詰まる疾患です。
つまり、血液が流れなくなり、脳細胞に酸素が届けられなくなる。
それによって低酸素脳症となり脳細胞が死んでしまい、最悪は死亡。
生還できても、脳細胞の一部が壊死して、寝たきり(遷延性意識障害)か、自力で動けても生活に支障をきたす障害が残る(高次脳機能障害)ケースが多いのです。
著者は、不幸中の幸いで、意識不明の状態から、その中でもっとも軽い
軽度の高次脳機能障害にまで「回復」しました。
私の思った、本書の積極的に評価できる点と、問題点を簡単に書きます。
積極的に評価できる点
健常な人が突然のアクシデントにあい、軽度の高次脳障害になるとどうなるのか。
その現象を、障害者の側から具体的に書いている点にリアリティがあります。
たとえば、トイレに入ると個室に突然老紳士が出現したように見えたり、会話相手の目が見られなくなったり、感情が爆発して何を見ても号泣したりといった現象に戸惑うなどです。
また、本書には、著者が25歳のとき、家出した19歳の女性と同居し、それが現在の夫人であることを明らかにしていますが、著者の心身のリハビリに夫人が貢献していることが書かれています。
その16年間には、夫人の脳腫瘍という大病もあったそうです。
若くして、脳腫瘍になったり脳梗塞になったり、夫婦してツイてない「ほしのもと」ですが、手を携えて支え合っているのはいいなあと思えます。
問題点
ネットで本書のレビューブログを見ると、問題点を指摘しているブログはひとつもありません。
それはたぶん、ご自身や家族が高次脳機能障害ではないから、著者の言い分を鵜呑みにするしかないのでしょう。
本書に限らないのですが、そして、高次脳機能障害だけでなく発達障害にも言えることですが、軽度ほど、その深刻さを嘆きます。本書も例外ではありません。
曰く、
重度や中度は障害がわかりやすいが、軽度は障害が可視化しにくい
あたかも、重度や中度と、軽度は、別の性質の障害があるかのようですよね。
これは、私に言わせれば、
ミスリードもしくは事大主義です。
高次脳機能障害というのは、軽度だけでなく、重度や中度も含めて可視化しにくい障害なのです。
「重度や中度は障害がわかりやすい」ようにみえるのは、あまりにも深刻だから可視化できてしまうのです。
つまり、「わかりやすい」ことは、障害として、軽度より有利であることを意味しません。
ここを誤解させるような書き方は、残念ながらマイナス点です。
詳細は、本書をお読みください。
スポンサードリンク↓
正しい掛け算を、学校で教えてないから「なにこれ?」と唾棄した教師
ずいぶん前から話題になり続けている、ネット(ツイッター)で興味深いトレンドな話題はこれです。
小2算数で『8×7+17=73』を担任教師が不正解にした驚愕の理由
https://vipper-trendy.net/sansuu-huseikai/
Facebookタイムランより
今日もFacebookタイムランに流れてきました。
問題文に対する答えは合っているのに、まだ習っていない掛け算を使ったからといって、教師が「なにこれ?」などと唾棄し、採点そのものを放棄したというのです。
教師の言い分は、「かけ算をまだ習っていないので、かけ算の良さをわかってからでないと?これは他のクラスも同様です」
だそうです。
この教師の中では、
8+8+8+8+8+8+8+17
が正解で、それ以外は(正しくても)一切評価できないという、典型的なマニュアル対応。
だったら、掛け算を使うことがふさわしい設問を、なぜ小2に出したのか、という話です。
検索すると、この話題を扱っているページがズラッと出てきます。
ツイッターですから、絶対に作り話やヤラセではないという保証はありませんが、現実にありがちな話ですね。
高次脳機能障害の我が長男は、いったんは植物人間になり、生後5ヶ月のレベルまで知的蓄積を失いました。
そして、体が回復後も、書いて学ぶことができませんでした。
でも、歳は取っていきますから、早く読み書き計算をマスターしないと、社会復帰できなくなる。
そこで、数の概念を学ぶ⇒足し算を学ぶ⇒引き算を学ぶ⇒掛け算を学ぶ、という順番通りではなく、
足し算を学ぶことと並行して、「かけ算の良さ」もヘッタクレもなく、九九を強引に耳で覚えさせたたことは、以前ブログで書きました。
⇒
『アニメで覚える99』植物人間だった長男が九九を会得した方法
まあ、我が長男の例はいささか特殊かもしれません。
が、発達障害児を含め、子どもたちは、様々な個性と能力差のある集団です。
クラスの中には、掛け算を早く覚えて使う子どもだっているでしょう。
そういう児童に対して、どう指導したらいいのか、現場の先生はどう考えているのか気になりました。
少なくとも、
正しい計算式に対して、「
なにこれ?」はないだろう、
とは思いますけどね。
> つまり、「わかりやすい」ことは、障害として、軽 度より有利であることを意味しません。
とても考えさせられるご指摘です。「闘病記」的なものは芸能人などによるものも含め、どうしても「自分が被ったこと」を特別視してしまう傾向があり、まあそれは「自分の人生」だから致し方ない部分はありますが、(ちょっと違うんじゃないかな)と思えるのもよくありますね。公にするものであれば、一定以上の客観性が必要ですよね。 算数のお話、こうした先生が珍しくないのであれば、ホントにどうしようもありません。と言うか、わたしの家族や親戚筋は妙に(笑)高学歴で教育関係者が多く、わたしも割合長く進学塾の教員をやっていましたが、「先生方」、頭硬いのが普通です。算数もそうだけれど、国語なんか小学時代から授業やテストが退屈過ぎまして、これは本を読まない人が限りなく増えている大きな原因の一つだと思います。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2016-11-27 00:07)
この赤文字に何これ?って思いました。
こんな教師が教えていると思うと寒気がします。
回答した生徒はこれを見てどう思うんでしょうね;;
by 昆野誠吾 (2016-11-27 00:10)
相も変わらぬ悪平等ですな。
個性を生かさずに、平準化する教育は直っていません。
by うつ夫 (2016-11-27 00:25)
かけ算は逆にすごいね、と褒めてくれると思うのですが違うんですね。
by yamatonosuke (2016-11-27 00:30)
先生の指導は、子供たちに与える影響が大ですよね。
子供が自信を失ったり、懐疑的にしか物事を見れなくなったりとしたらと思うとちょっと怖いです。
広い視野で、子供たちを見守っていって欲しいと願うことです。
by アールグレイ (2016-11-27 00:37)
小学2年で「かけ算」が使えるのは凄いので誉めるべき内容のはずが…分からないですね。
小学校の学習指導要領に「小学校低学年にはかけ算・割り算を使わせない」とでも書いてあるのでしょうか?
by ナベちはる (2016-11-27 01:25)
脳機能の障害、誰でも起きる可能性がありますね。
働き盛りでも、そうなら高齢になれば
もっと心配ですね。
by toshi (2016-11-27 04:25)
昔、九九は小学二年生で習った様な気がするのですが、当時でも、自分以外の子はたいがい習う前からできていて先生も気にしないようでしたけれど、今は違うのかも。でも、幼稚園生でも、できる子は当然いますよね。
習っていないことを使う=不正解、で済ませてしまう教育ならば、かなり可哀想です。大学のテストですと、違う計算式を使うと×ですけれど。
by 足立sunny (2016-11-27 07:02)
学習していると、掛け算で答えを出す人がいるので不正解にするのが教育の在り方のようです。
不正解にしてもほめるなどの配慮をしてほしいです。
低学年の小学生を教えるときが一番難しいとよく聞きます。
by green_blue_sky (2016-11-27 07:22)
これ正解ですよね!!
その答えになにこれなどと書くことは教師としてあるまじき
行為だと思います。むしろこの努力を褒めるべきではないで
しょうか!!
by そら (2016-11-27 08:37)
重度の脳障害=車椅子と考えるのなら見た目の差は確かにありますが重度軽度関係無い様な気がします。
by pn (2016-11-27 08:39)
まったく、酷いハナシですよね。正解なのにワケの分からない教師の理由で不正解にされた児童が可哀そう。こんなことが学校であったなら勉強が嫌いになってしまいますね。
by きーちゃん2 (2016-11-27 10:40)
遅くなりましたが、長女の結婚式の記事に心温まるお祝いコメントありがとうございます(^^♪
by KINYAN0829 (2016-11-27 11:09)
怖い話です。他人事とは思えない今日この頃でです。
by JUNKO (2016-11-27 12:35)
最近こういった教師の珍採点?が度々話題になりますが、ほんと憤りを感じますよね。
見るべきポイントがズレているし、学ぶということの本質を間違えていると思います。
by ディラン・ホッコリ (2016-11-27 13:46)
軽度の高次脳機能障害、
ホント見た目には分からないっす!
我が母の場合、それだと分かるまで4年かかりました。(><)
by saru (2016-11-27 13:49)
ボクが親ならきっと学校に文句を言いに行くと思います ^^
なにこれ?と書いた教師の頭になにこれ?と書きたいです。
自分の指導法に外れた考えの子がいると、対応できないアンポンタンなんだと思います。
そんなのに教わらなきゃならない子供がかわいそうですね。
学校の成績だけで免許状を与えるからこんなんになるんだと思います (^^;
by なかちゃん (2016-11-27 16:32)
教員の質って明らかにダウンしてるよなーと教育大卒の私は思います(^_^;)
by アニ (2016-11-27 20:48)
何と!この教師、手段が目的化してますねぇ。
こんな先生で大丈夫なのか?(コメントの仕方も問題だと思います)
by seawind335 (2016-11-27 21:07)
僕の息子は教師志望で教員免許も取得しましたが
思い描いていた指導と現実で悩み
結局全く違う職業についています
男の子なので細かい話はしてくれませんが
こういうところが割り切れなかったのかもしれません
by 藤並 海 (2016-11-27 21:19)
こんばんは
今の時代小学校以外でも
習い事や小さい頃から通う塾で
九九はやってるかもしれませんよね
この採点に子供はどう思ったのでしょう
そこが気になりますね
by gardenwalker (2016-11-27 23:37)
私も中学時代のテストで、習った公式以外の方法で答えを出したら不正解にされました(もちろん答えは合っていて)。
こういう事をしてるから創造性は伸びないし、数学に対する興味が失せるんですよね。
学問は覚える事が重要なのではなく、そこから考える力を付ける事が大切なんだと思いますが。
by HIDEe (2016-11-28 02:18)
「なにこれ?」はないですねー。
見てて腹が立ちます。
その教師は自分の指導力のなさを露呈してしまいましたね。
by Rinko (2016-11-28 08:06)
こんにちは
教師の言葉に対するボキャブラリーの無さと
とっさの対応の応用力の無さにガッカリしますね~( ̄^ ゚̄)
by ミムラネェ (2016-11-29 15:35)
鈴木大介さんは、「東洋経済オンライン」に不定期連載されている貧困問題ルポで知りました。
この本もかなり衝撃的ですが、こうした経験をお持ちのゆえに、貧困問題の深部にまで入っていけるのかな、と感じた次第です。
by 伊閣蝶 (2016-11-30 11:47)