『日本プロレス事件史』(Vol.1)新日本プロレスV字回復の理由は? [スポーツ]
『日本プロレス事件史』(Vol.1)というムックを読みました。『週刊プロレス』のベースボールマガジン社が、全12冊の分冊百科として発行しているその第1冊目です。ブシロードの子会社となった新日本プロレスが、プロレス冬の時代といわれた頃からV字回復した経緯と、初代タイガーマスクのブームだった80年代を振り返る記事などをメインに構成されています。
分冊百科というのは、ひとつのテーマで何度かに分けて発行される出版物のことです。
全何回で、どの回は何について構成されている、とあらかじめ予定が決まっています。
似たような出版形式では、あまり一般的には使われませんが、業界ではオープンシリーズと呼ぶものもあります。
これは、あらかじめ回数が決まっていなくて、売上が落ちたら打ち切る、というものです。
分冊百科は、このブログでご紹介してきた『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』の場合、映画のDVDに関連の読み物をつけて、雑誌として書店に流通させました。
そのような売り方で、販売チャンネルを広げることができたわけですが、今回の『日本プロレス事件史』シリーズは、純然たる読み物です。
同じ「分冊百科」でもいろいろあるということです。
今回は、出版物としてはムックと呼ばれるものになります。
ムックというのは、マガジンの「m」と、ブックの「ook」を足した混成語です。
文字通り、大きな判型やカラー写真、複数の段組、広告などで構成された雑誌のような作り方ですが、書籍コードをつけて流通させます。
プロレスマスコミは、韜晦趣味といいますか、出来事のウラを報道しない、というのが習い性のようになっています。
マニアからすれば、試合自体は自らの想像力で楽しめますが、真相はどうなっていたのかを知りたい出来事もあります。
それを、12冊で明らかにしようという試みのようです。
21世紀に入ってからのプロレスは、“冬の時代”といわれるようになりました。
それまでが盛りすぎたのかもしれませんが、新聞報道を見ると、観客100人なんていう興行がメジャーな団体でもめずらしくなくなりました。
なぜ冬の時代になったかについては、マニアによっていろいろ意見がわかれますが、私は、一部団体の『週刊プロレス』取材拒否が大きかったのではないかと思います。
それによって当時の名物編集長、ターザン山本氏のクビが飛びましたが、それだけではなく、1990年代のプロレス熱を支えていた『週刊プロレス』の熱心な読者(いわゆる活字プロレス者)が、プロレスに対して冷めてしまったのだろうと思います。
マスコミを粗末にする業界が栄えたためしはありません。
一説には、ミスター高橋氏が、プロレスの試合は事前に勝敗や試合展開の打ち合わせがある、と書かれた『流血の魔術 最強の演技』(講談社)を上梓した(2001年)からだ、などといわれていますが、同書の出る頃はプロレス人気が下降していましたから、それは違うと思います。
むしろ、こんにちのプロレスの方向性を示した点で、あの時期にあれを上梓したミスター高橋氏の慧眼を私は讃えたいと思います。
『日本プロレス事件史』では、そんな時期に新日本プロレスがどう盛り返したかが書かれています。
当時の新日本プロレスは、ベテランレスラーが次々去り、残ったレスラーもファイトマネーのダウンが報道されて苦しい時期でした。
さらに、オーナーのアントニオ猪木が、ゲーム会社のユークスに株を手放してしまったので、いったいプロレスはどうなってしまうのだろうと古くからのマニアは不安になりました。
しかし、ベテランが去り、新興の親会社が運営にタッチするようになったことで、これまで出来なかった新基軸を展開することができたともいえます。
同書には、簡単に言うと、現代の市場に合わせて、多チャンネル、コンテンツビジネス、にプロレスというツールをうまくのせたことが、新日本プロレスをV字回復させたと書いています。
これまでのプロレスは、テレビ中継で顔を売り資金(放送権料)を得、その知名度で地方を巡業するというものでした。
今は、もちろんテレビも大切なメディアですが、レギュラー中継だけでなく、3D映画、もちろんDVD化、インターネットのコンテンツ、そして「流行らせるためには流行ってる感を出す」ため、新宿駅コンコースの巨大広告のようなこれまでになかった宣伝活動など、マニアだけでなく、一般にプロレスを打ち出しました。
この戦略は、親会社ができて資金が潤沢になっただけでなく、大学出のスター選手(棚橋弘至、中邑真輔)を中心に、すっかり現代的になった魅力的な選手構成があってこそだと思います。
たとえば、これは、主力の一人である真壁刀義が、私のツイートにリプライしているところです。
たかが無名の1ユーザーでもコミュニケーションを疎かにしない。
そんな彼の人柄も、人気の回復の背景にあると思います。
ただし、これをもってプロレスブームが戻ってきた、なんていい方をしていますが、実際には新日本プロレスがV字回復しただけです。
まだまだ他の団体は苦しい。
牽引する団体が盛り上がることで、業界全体にいい影響を与えるでしょうから、新日本プロレスにあやかって、特に全日本プロレスにはぜひ頑張っていただきたいと思います。
分冊百科というのは、ひとつのテーマで何度かに分けて発行される出版物のことです。
全何回で、どの回は何について構成されている、とあらかじめ予定が決まっています。
似たような出版形式では、あまり一般的には使われませんが、業界ではオープンシリーズと呼ぶものもあります。
これは、あらかじめ回数が決まっていなくて、売上が落ちたら打ち切る、というものです。
分冊百科は、このブログでご紹介してきた『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』の場合、映画のDVDに関連の読み物をつけて、雑誌として書店に流通させました。
そのような売り方で、販売チャンネルを広げることができたわけですが、今回の『日本プロレス事件史』シリーズは、純然たる読み物です。
同じ「分冊百科」でもいろいろあるということです。
今回は、出版物としてはムックと呼ばれるものになります。
ムックというのは、マガジンの「m」と、ブックの「ook」を足した混成語です。
文字通り、大きな判型やカラー写真、複数の段組、広告などで構成された雑誌のような作り方ですが、書籍コードをつけて流通させます。
プロレスマスコミは、韜晦趣味といいますか、出来事のウラを報道しない、というのが習い性のようになっています。
マニアからすれば、試合自体は自らの想像力で楽しめますが、真相はどうなっていたのかを知りたい出来事もあります。
それを、12冊で明らかにしようという試みのようです。
いったんは冬の時代に転落したプロレス界
21世紀に入ってからのプロレスは、“冬の時代”といわれるようになりました。
それまでが盛りすぎたのかもしれませんが、新聞報道を見ると、観客100人なんていう興行がメジャーな団体でもめずらしくなくなりました。
なぜ冬の時代になったかについては、マニアによっていろいろ意見がわかれますが、私は、一部団体の『週刊プロレス』取材拒否が大きかったのではないかと思います。
それによって当時の名物編集長、ターザン山本氏のクビが飛びましたが、それだけではなく、1990年代のプロレス熱を支えていた『週刊プロレス』の熱心な読者(いわゆる活字プロレス者)が、プロレスに対して冷めてしまったのだろうと思います。
マスコミを粗末にする業界が栄えたためしはありません。
一説には、ミスター高橋氏が、プロレスの試合は事前に勝敗や試合展開の打ち合わせがある、と書かれた『流血の魔術 最強の演技』(講談社)を上梓した(2001年)からだ、などといわれていますが、同書の出る頃はプロレス人気が下降していましたから、それは違うと思います。
むしろ、こんにちのプロレスの方向性を示した点で、あの時期にあれを上梓したミスター高橋氏の慧眼を私は讃えたいと思います。
『日本プロレス事件史』では、そんな時期に新日本プロレスがどう盛り返したかが書かれています。
コンテンツ、多チャンネル戦略が奏功
当時の新日本プロレスは、ベテランレスラーが次々去り、残ったレスラーもファイトマネーのダウンが報道されて苦しい時期でした。
さらに、オーナーのアントニオ猪木が、ゲーム会社のユークスに株を手放してしまったので、いったいプロレスはどうなってしまうのだろうと古くからのマニアは不安になりました。
しかし、ベテランが去り、新興の親会社が運営にタッチするようになったことで、これまで出来なかった新基軸を展開することができたともいえます。
同書には、簡単に言うと、現代の市場に合わせて、多チャンネル、コンテンツビジネス、にプロレスというツールをうまくのせたことが、新日本プロレスをV字回復させたと書いています。
これまでのプロレスは、テレビ中継で顔を売り資金(放送権料)を得、その知名度で地方を巡業するというものでした。
今は、もちろんテレビも大切なメディアですが、レギュラー中継だけでなく、3D映画、もちろんDVD化、インターネットのコンテンツ、そして「流行らせるためには流行ってる感を出す」ため、新宿駅コンコースの巨大広告のようなこれまでになかった宣伝活動など、マニアだけでなく、一般にプロレスを打ち出しました。
この戦略は、親会社ができて資金が潤沢になっただけでなく、大学出のスター選手(棚橋弘至、中邑真輔)を中心に、すっかり現代的になった魅力的な選手構成があってこそだと思います。
たとえば、これは、主力の一人である真壁刀義が、私のツイートにリプライしているところです。
たかが無名の1ユーザーでもコミュニケーションを疎かにしない。
そんな彼の人柄も、人気の回復の背景にあると思います。
ただし、これをもってプロレスブームが戻ってきた、なんていい方をしていますが、実際には新日本プロレスがV字回復しただけです。
まだまだ他の団体は苦しい。
牽引する団体が盛り上がることで、業界全体にいい影響を与えるでしょうから、新日本プロレスにあやかって、特に全日本プロレスにはぜひ頑張っていただきたいと思います。
日本プロレス事件史 vol.1 “黄金時代”の光と影 (B・B MOOK 1104 週刊プロレススペシャル)
- 作者:
- 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
- 発売日: 2014/09
- メディア: ムック
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