『喜劇 女は度胸』羽田と京急羽田空港線230形をじっくり鑑賞! [懐かし映画・ドラマ]
『喜劇 女は度胸』(1960年、松竹)を鑑賞しました。東京大田区の工場地帯である羽田を舞台に、その住民と労働者の生活を描いています。先日ご紹介した『喜劇 男は愛嬌』(1970年)につながる、倍賞美津子主演第一作目。原案は山田洋次、脚本は大西信行と森崎東、監督は森崎東です。(画像はDVDより)
『喜劇 男は愛嬌』の舞台は、川崎市川崎区千鳥町でした。京浜工業地帯の中核である川崎の中では、中小企業が多いところです。
本作『喜劇 女は度胸』の舞台は羽田。
やはり、京浜工業地帯を支える町工場が集中しています。
舞台は、羽田旭町の東端の町工場と民家。
どちらも海老取川の川沿いにあり、川の向こうは、ビッグバードに移転する前の旧羽田空港です。
高度経済成長の時代に、下町、というより場末の町工場を続けざまに舞台として選ぶのは、いかにも松竹らしいといいますか、山田洋次イズムだなあという感じがします
ネタバレ御免のあらすじ
羽田旭町の川岸にあるあばら屋には、乱暴者の父親・泰三(花沢徳衛)と、デリカシーのない兄・勉吉(渥美清)。
何があっても黙っている母・ツネ(清川虹子)。気の弱い弟・学(河原崎建三)という桃山家の4人が住んでいます。
学はその2軒隣の、やはり海老取川沿いにある工場で働いています。
低級な家族に辟易し、母親に「家出するぞ」といつも言うのですが、実行に移せません。
ある土曜日。工員・次郎(佐藤蛾次郎)の誘いで、学ら工員5人は、京急羽田空港線に乗って京浜川崎(今の京急川崎)に出ます。
そして女性をナンパするのですが、それができない学は、音楽喫茶で知り合った、やはり羽田の四つ星電気(赤井電機がモデル)で働く白川愛子(倍賞美津子)と交際を始めます。
ところが、弁吉が贔屓にしている娼婦から借りてきたというゲーテの詩集が、自分が愛子にあげたものだったので、学は愛子を疑います。
学は、斡旋する今川焼店の主人(有島一郎)から女性を紹介されますが、来たのは別人(中川香奈)だったのに、足元だけ見て愛子であると勘違いします。
しかし、勉吉の相手とは、愛子の同僚の笑子(沖山秀子)でした。
誤解されていることを知った愛子は、腹を立て桃山家に行きますが、田舎の母親しか肉親がいないと聞かされていたのに、父親の泰三や兄の勉吉や母親と4人家族だったことを知り、騙されたとますますショックを受けます。
そこへ勉吉と笑子もやってきて、桃山家はお互いの言い分をぶつけあう場に。
実は勉吉は泰三の子どもではなかったなど、衝撃発言も出ましたが、修羅場を過ぎるとガス抜きできたのか、愛子と学、勉三と笑子は結婚することになり、衝撃発言がでたのに、泰三とツネの関係も持ち直しました。
草食系男子とか、父親の違う子どもをイケシャーシャーと育てるとか、45年も前の作品なのに、なんかミョーに今日的な話です。
社会は螺旋階段を登るように発展しているというのは真理かもしれませんね。
大田区と京急ファンにはたまらない舞台設定
作品自体の評価は今回は二の次です。
本作が駄作というのではなく、京急マニアが喜んでしまうシーンが、冒頭から続けざまにお目にかかれるので、もうそれだけでもこの作品は資料的価値があるからです。
まず、最初に海老取川が出てきます。
『喜劇 女は度胸』より
向かって左の看板は、空港がビッグバードに移転したことで今はほとんど残っていませんが、わずかに「ポンジュース」だけが残っています。
正面後方に見える橋は、京急羽田空港線が、海老取川を超えて旧空港の敷地まであった頃の名残です。
戦後、アメリカが接収して、解放後も川を超えないところに新たに羽田空港駅を作り、鉄橋はそのまま残りました。
それが、空港のビッグバードへの移転で京急線が地下に延伸されたとき、天空橋という人道橋になりました。
そして、現天空橋駅、かつての羽田空港駅には、京急マニアにとって思い万感の230形が!
『喜劇 女は度胸』より
京急羽田空港線ならではの狭いホームも映ります。
羽田では有名な「かめだや」という釣り船店も映ります。
『喜劇 女は度胸』より
今のかめだやです。
今は高架化されてしまったので、羽田空港線はすっかり近代的な路線になってしまいましたから、大田区と京急に関心のある方は、とにかくお宝シーンが次々出てくる必見の作品です。
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