iPod touch。これは2011年に購入したものです。第3世代ぐらいの機種はないかと思います。私はすでにiPhoneで間に合っていたのですが、当時2つ購入しました。ひとつは長男に、ひとつは次男の深昏睡からの覚醒に使うためでした。
火災による意識不明からの生還というと、私はこれまで、症状の最も重かった長男の話を書いてきました。
が、私にはもうひとり子どもがおりまして、
当時2歳半の次男です。
救急なので、当時、妻子は3人とも別々の病院に収容されました。
妻は、子どもたちを産んだ大学病院の第三次救命救急病棟に収容。
長男は、東京都心の大きな病院で応急措置を行った後、東京・世田谷にある、国立の子ども専門の病院のICUに転院。
次男は、地元の大学病院でやはり応急措置を行った後、長男と同じ病院に転院しました。
一酸化炭素中毒による昏睡は、長男、次男、揃ってGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)という医学的な数値が、開眼・言語反応とも全く反応せずの「1」、運動機能は「3」
具体的には、
体をピンで刺しても呼びかけても、ずっと目を閉じて声を出さず、体も動かさない
自発呼吸なし
脳幹反射なし
瞳孔散大・固定
平坦な脳波
という深昏睡。
まあ要するに大変悪い状態です。
妻は何度か書きましたが、この時点で最悪の
心肺停止。
マスコミ報道では、2名が「重体」1名が「重傷」と書いたところも一部ありましたが、3名とも「意識不明の重体」でした。
3人とも、なかなか覚醒しない上、自発呼吸がなく、かつ火と煙で気管や肺が焼けただれている気道熱傷がひどかったため、喉を切開して人工的な穴を開ける話に。
まず妻が切開しました。
本当は手術の日に目を覚ましたらしいのですが、はっきりと覚醒せず、事故の日にいったん心臓も止まっていたので、慎重な対応を取ったのでしょう。
子どもについては、正直、デリケートな所ですし、メスをいれることは悩んだのですが、医師団が交代で毎晩私を説得にかかり、私はついに、2人分の許諾サインをしました。
そして、まず昏睡の続く長男が手術。
次男は、たまたま肺炎になり、手術が延期となりました。
そして1週間後、肺炎の高熱が刺激になったのか、次男が呼びかけに反応したため、手術が再延期になりました。
この時点で、もし意識清明に持ち込めれば喉に穴は開けずにすむので、何としてもと、私が覚醒のために使ったのが冒頭に書いたiPod touchです。
動画が、意識障害に有効であると書籍かネットで知ったのです。
国立(独立行政法人)の病院は、テレビが無料で視聴でき、iPod touchやCDプレーヤーの持ち込みなども許されていました。
また、24時間面会も出来たので、夜型の次男に合わせて、夜、面会に行きました。
イヤホンを耳につけて、再生したのは、受傷前に本人が好きだった『コロコロアニマル』『いないいないばぁっ』『ジューキーズの歌(おかあさんといっしょ)』『ポコポッテイトのオープニング』など。
その中で、最初に反応したのが、『いないいないばぁっ』でした。
目をつぶって無反応だったのですが、何度も再生しているうちに、思い出したように少しずつ目をあけて「おぉっ」という表情になり、最後に、わんわんと、女の子が、「ばぁっ」というところで、本人の口もかすかに動きました。
そして、次第に口の動きがハッキリと「ばぁ」といえるようになり、30分ほどで、フルコーラス歌えるところまで意識が戻ったのです。
不幸中の幸いというか、肺炎のおかげで、手術が延びて、次男は喉を切開せずにすみました。
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月齢が幼いため後遺症を認定されず
しかし、入院中は『ジューキーズの歌(おかあさんといっしょ)』は思い出せず、『ポコポッテイトのオープニング』は結局今も思い出せていません。
そして、その後2年間、二語文が出なくなってしまいました。
これはもう、事故の後遺症以外の何物でもないのですが、あまりにも年齢が幼いため、「忘れた」のか「失った」のか判然とせず、医学的に後遺症は認定されませんでした。
意識が戻った直後は、歩くことも出来ず、檻のようなベッドの中で、いつも視線は定まらず、はうように動くだけで、まるで動物のようでした。
運動能力も、同じ月齢のお子さんよりはかなり劣っていると思います。
しかしまあ、少なくとも遷延性意識障害や高次脳機能障害ではないので、長男ほどの重症ではなかったようです。
そこで、ある外来の日、この世界ではかなり有名な長男の主治医に、「どうして長男だけが意識障害になって、次男や妻はならなかったのでしょうか」と尋ねたことがあったのですが、主治医いわく
「
(意識障害は)なりやすい人となりにくい人がいます(きっぱり!)」
そんだけかよーっ!
と、口には出しませんでしたが(笑)、
私としてはもっと本格的な答えが欲しかったんですけどね。
で、次男が意識を戻した頃の長男は、まだ昏睡が続いており、iPod touchを使う段階ではありませんでした。
そこで長男には改めて、アイトレックという、メガネ型の動画再生機を用意しました。
これはまた、別の機会に書きたいと思います。
あまりに凄過ぎてコメントが書けません。
すみません。
by まりりん (2016-06-23 00:14)
医学もまだ未完成なんでしょうね。
by うつ夫 (2016-06-23 00:59)
難しいことばかり・・・
階が上がっても、虫も上がってきますね(^_^;)
ようやく虫よけ対策を万全、あとは効果待ちです。
by green_blue_sky (2016-06-23 06:02)
なりやすい人となりにくい人の差が気になりますね。研究してないのかな?
by pn (2016-06-23 06:27)
おはようございます!
じっくり拝読させていただきました。
(不用意なコメントは控えます)
by Take-Zee (2016-06-23 06:59)
おはようございます。
火事も怖いですが、このような二次災害が起こるんですね。
by 馬爺 (2016-06-23 08:45)
>受傷前に本人が好きだった『コロコロアニマル』『いないいないばぁっ』『ジューキーズの歌(おかあさんといっしょ)』『ポコポッテイトのオープニング』など。
動画が意識障害に有効とは、そこから何か可能性のヒントが見つかりそうですね。
by 扶侶夢 (2016-06-23 12:32)
本当に大変な状況だったのですね・・・ご苦労をお察し致します。
by エンジェル (2016-06-23 12:56)
ご次男さん、とても可愛くて、壮絶な経験で辛い思いをされたことに胸が痛みます。
もちろんご長男さんも。。。
by saia (2016-06-23 18:42)
拝読致しました、、、。
ありがとうございました。
by えんや (2016-06-24 09:24)
みなさん、コメントありがとうございます。
>by まりりん さん
「死亡」や「重体」などの事故のニュースは日々ありますが
いっぺんに3人は強烈でした。
>by うつ夫 さん
とくに脳神経分野は、まだわからないことに満ちているのでしょうね。
>by green_blue_sky さん
我が家は例年5月頃から対応を取るようにしています
>by pn さん
>研究してないのかな?
私としても、どういう人が「なりにくい(なりやすい)」のか知りたかったんですけどね。
研究はされているのかもしれませんね。
>by Take-Zee さん
ありがとうございます。
思い出しながら書いているので、
文としてつながらないようにみえるところもあるかもしれませんが
ご容赦を。
>by 馬爺 さん
そうですね。
みなさん、事故直後は大変であることはわかっていただけるのですが
見た目ではわからないので
なかなか後遺症が理解されにくいところがあります。
>by 扶侶夢 さん
>動画が意識障害に有効とは、そこから何か可能性のヒントが見つかりそうですね。
そうなんです。回復例を調べると
音や視覚への刺激というのが脳に刺激を与えて効果があるようです。
>by エンジェル さん
その日の事故の直前までは何でもなかったので
一瞬にして人生設計が変わってしまいました。
>by saia さん
2歳半で人生が終わったらあまりにも可哀想だなと思ったので
助かってよかったと思っています。
>by えんや さん
こちらこそご高覧いただきありがとうございます。
by いっぷく (2016-06-24 14:27)
なんとなくですが修羅場を経験されてきて
大変だったんだろうと思っていましたが、
うちと同じ男の子2名という家族構成から
感情移入が容易ですね。
チューブをつけた息子さんを見るとウググって。
深昏睡の症状ですなんて言われたら
自分頭の中真っ白になってしまいそうです。
本当に回復されて良かったと思います!
by 昆野誠吾 (2016-06-25 17:35)
>by 昆野誠吾 さん
>自分頭の中真っ白になってしまいそうです。
私も当時のことは思い出したくないくらい
ショックが大きかったです。
by いっぷく (2016-07-03 18:00)