『アスペルガーだからこそ私は私ー発達障害の娘と定型発達の母の気づきの日々』(白崎やよい、白崎花代著、生活書院)を読みました。ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)である女性とその母親の共著です。ブログが書籍化されたそうです。
「
アスペルガー症候群」は、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)と呼ばれるそうですが、
発達障害のひとつです。
発達障害というのは、特定の障がいではなく、いろいろな障がいの「総称」です。
たとえますと、
I型糖尿病とII型糖尿病を「糖尿病」
慢性白血病と急性白血病を「白血病」
悪性リンパ腫の各タイプを「悪性リンパ腫」
など、それぞれ違う病気と言っていいものを「総称」で呼ぶように、発達障害というのは、ひとくくりにするのに無理があるとすら思われるほどの、全く異なる「非健常」の総称なのです。
具体的には、
アスペルガーやADHDなどの非定型発達
個別の障がいはない全体的な発達遅延
健常児がケガや病気で機能を失う中途障害
などがあります。
それぞれ、療育方法も将来の見通しも違います。
が、現在の学校教育では、「非健常」は支援学級か支援学校か、という受け皿があるだけで、そうした障がいの原因に応じたオーダーメイド療育までは到達できていないように思います。
とくに中途障害。
支援学校は、障がい者であることを前提に障がい者として生きるための教育を行っているので、回復が見込めたり、回復を目指したりする元健常児のための特別なカリキュラムはありません。
また、遷延性意識障害だったり、重度の高次脳機能障害だったりする人は、そもそも支援学校にも通学できません。
いずれにしても、同じ「発達障害」でも、「中途障害」の親である私は、「非定型発達」の人の現状や療育には詳しくないということです。
そこで、今回アスペルガー症候群の女性の著書を読んでみました。
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ASDは具体的にどんな障がいがあるのか
著者は、大学院を中退して働いているそうです。
高学歴のくせに「障がい」かよ、と思われる方もいらっしゃるでしょうね。
自閉症の場合、そこには知的障害が伴う事が多いとも言われていますが、一般にアスペルガー症候群は「
知的障害のない自閉症」といわれています。
むしろ、こだわりや認識の潔癖さが、学力という点では「幸い」することもあるようです。
ただし、その「こだわりや認識の潔癖さ」こそが、社会性や人間関係の障害になるそうです。
著者は、日常の生活を例にして、「障がい」を具体的に枚挙しています。
会話のファジーさや文脈を読みとれない
なにが重要か優先順位をつけられない
音や匂いに過敏なことがある
その時何でもなかったのに時間を経過して不快感が襲う
予定と少しでも違ったことが起こるとパニックになる……etc
たとえば、「会話のファジーさや文脈を読みとれない」というのは、「
文字通りに受け取る。文字通りに受け取ってもらえると思い込む」ことで、相手に裏切られたと勝手に思ったり、相手から煙たがられたりすることがあるそうです。
要するに、アスペルガーという事情がわからなければ、イタイ人ですよね。
「予定と少しでも違ったことが起こるとパニックになる」というのは、自閉症によく聞く話です。
本書を読むと、非定型発達は、ご本人も大変でしょうが、周囲の人達の理解も不可欠だなあということがわかります。
そうした障がいと付き合ってどうやって生きていくか、周囲の人や社会がきちんと理解できるのか、ということを知ってもらうために、こうした書籍はどんどん出たほうが良いと思います。
それと、モノ申すようですが、重度(今は中度)の中途障害の子を持った私から見ると、この著者の障がいは軽度だと思います。
ASDやADHDの方々の居所は、普通学級か支援学級なんですね。
でも先ほど書いたように、障がいが重い人の中には、支援学校にも行けない場合もあるのです。
そして、支援学校に進んでも、この著者のように大学院には行けません。
支援学校の高等部は、高卒として認められていないからです。
学歴のことをいいたいのではなく、社会で活躍するための選択肢が、障がい者の学校では最初から限られてしまっているということを知っておいていただきたいのです。
この著者の苦悩は、発達障害の苦悩の全てではありません。
ただ、大学院まで進んで、一見なんでもないように見える人ですら、こんなに困っていることがあるんだよ、それこそが非定型発達のやっかいなところなんですよ、ということを知る書籍ではあると思います。
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