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大映ドラマの真髄を増村保造監督の祥月命日に明らかにする [懐かし映画・ドラマ]

大映ドラマ

映画やドラマの脚本や演出を手掛けた増村保造氏(1924年8月25日~1986年11月23日)。1970~80年代に隆盛を極めた大映ドラマのメイン脚本・監督として、私の世代ですと大変馴染みの深い方です。漫画チックな作品の演出について、出演者の一人である風間杜夫が、DVDに収録された『スチュワーデス物語8』のインタビューコーナーで語っています。(画像はDVD『スチュワーデス物語8』から)



今日は、増村保造監督の命日です。

増村保造監督は、映画作品の殆どを倒産した大映映画時代に撮っています。

それはたぶん、60代以上の方でないと、リアルタイムでは観ていないものです。

私にとって印象深いのは、やはり1970~80年代の大映テレビ制作のドラマ、いわゆる大映ドラマのメイン監督であり、脚本家であったことです。

大映ドラマ

大映ドラマ、ご存知ですか。

70年代後半には、『赤い衝撃』(1976年~1977年、TBS)『赤い激流』(1977年、TBS)『赤い激突』(1978年、TBS)などで、運命のイタズラに翻弄された設定で、大げさなセリフと感情表現を行う出演者により、荒唐無稽な展開を繰り広げ話題になりました。

今のネット時代なら、ツッコミどころ満載ですが、サスペンス調でもあったため、当時は学校でクラスメイトと必ず話題にしたものです。

ところが、番組でスターになった主演の山口百恵が、「赤い」シリーズをやめたいといい出しました。

「途中で彼女自身がもう『赤』は嫌だ、少なくとも『赤』という題名だけでも変えてくれてという強い要望があった」(『アイドル工学』)

その後は別の女性アイドルを起用。

『秘密のデカちゃん』(大場久美子、1981~1982年)、『だんなさまは18歳』(石井めぐみ、1982~1983年)、『高校聖夫婦』(いとうまい子、1983年)『婦警さんは魔女』(榊原郁恵、1983年)などの「荒唐無稽」ものを制作しました

そして、1983年の秋、「荒唐無稽」ではなく、かつ山口百恵には出せない愚直さ、純粋さをもったモチーフとして、元日本航空社員の直木賞作家、深田祐介の同名小説(1983年新潮社)を



ドラマ化した『スチュワーデス物語』が出来上がったのです。

スチュワーデス物語

以後も大映ドラマは、『スクールウォーズ』『不良少女とよばれて』(1984年)『ポニーテールはふり向かない』『少女に何が起ったか』『ヤヌスの鏡』『乳姉妹』(1985年)など、実録に近いものと荒唐無稽モノ、漫画が原作のものなど、複数のパターンの作品が制作されました。

ちなみに私は、『スクールウォーズ』が国立競技場で試合のロケを行った時、観客のエキストラで参加しました。

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増村保造監督の演出方法とは


それはともかくとして、以前

『スチュワーデス物語』風間杜夫の語る増村保造大映ドラマの真実

でご紹介しましたが、出演者の風間杜夫は、増村保造監督の演出についてこう語っています。

風間杜夫
DVDインタビューより

「(増村保造監督は)曖昧な演技が、要求されないんですね。その人物は今、怒っているのか、強く愛しているのか、悲しいのか、嬉しいのか、悔しいのか、曖昧なニュアンスは求められないと。しかも、あの台詞ですから。それと、くっきりはっきり大きな声で明瞭に台詞を言うという。そういう独特な演出でしたからね」

スチュワーデス物語汗吹いている
第1回からわざとらしい汗の拭き方をする堀ちえみ。しかしこれは増村保造監督の意向だった

笑いながら悲しみを表現したり、間(ま)で芝居をしたり、というところに、役者としての真骨頂があるはずなのに、それがすべて否定されていたのが、大映ドラマの演技だったそうです。

要するに、堀ちえみはダイコン演技を要求された、ということなんですが、当時はずいぶんモノマネもされておちょくられましたね。

「テレビというのは映画と比べると画面が小さいわけですね。でもその小さい画面に、もちろんアップというのはあるんですけど、そのシーンに、たとえば6人出てれば6人全員押し込めようとするようなね、人間を狭いフレームの中に押し込めようとするんです。ですから、2~3センチ顔の角度が変わるとダブっちゃうとか、隙間を縫って芝居するような、あれは増村さんの独特の絵作りでしたね」(風間杜夫)

スチュワーデス物語
DVDインタビューより

“その時”のすべての登場人物がどんな表情でいかなるふるまいなのかを、ひとつの画面で見せてしまおうとしているのではないかと私は解しました。

ですから、これもまた、曖昧でない演出ということなのだと思います。

大映ドラマの“とっつきやすさ”の理由が、わかるような気がしました。

最近のドラマは、フレームが横に長くなりましたから、当時とは事情が違うと思いますが、増村保造監督のような独特の世界を持って撮っているのかに着目しながら鑑賞するのもいいかな、と思いました。

みなさんの「印象に残る演出家」はどなたですか。

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nikki

『スクールウォーズ』『不良少女とよばれて』(1984年)『ポニーテールはふり向かない』『少女に何が起ったか』
リアルタイムで見てました。

いまだに堀ちえみは「教官」と言ってほしいと思っている視聴者が多く、生放送東海地方ローカルのテレビでなぜか違うことを言ってしまいスタジオ騒然となったことが。一か月前のことです。

最近でこそ、番組スタッフ名を見るようになりましたが、
スタッフまでは見てないですね。
by nikki (2017-11-23 22:57) 

pn

あしだとみお(どんな字だったかなー)かな。
アニメですが(^_^;)
by pn (2017-11-23 23:13) 

末尾ルコ(アルベール)

増村保造と若尾文子のコンビで作られた映画は今後も繰り返し観続けていくと思います。邦画史の金字塔の一つで、邦画史最強コンビの一組でした。若尾文子がインタヴューで、小津安二郎のついては「とても素敵な人で、ほのかな恋心もあり、結婚したいとも思っていた」と語ったのを受けてインタヴュアーが、「増村保造は?」と問うたのですが、「あの方はちょっとそういうタイプでは・・・(ない)」と答えていたのがウケました(笑)。
それはさて置き、大映ドラマの増村保造ですね。『赤い』シリーズは子どもの頃に、もちろん増村保造という人の名前も知らずに観ておりました。おもしろかったです。山口百恵については歌手としても女優としてもまったくダメなわたしですが、唯一おもしろく感じたのが『赤い』シリーズだと言えます。中条静夫が出てたやつ、『赤い衝撃』、山口百恵を「おれのウサギ」と呼んでいたですよね。あれはウケてました。今思えば、無表情な山口百恵を上手く使っていたのでしょうね。
『スチュワーデス物語』は当時はバカ受けでした。あそこまでハイパーな馬鹿馬鹿しさはなかなか出せないと思います。堀ちえみも「埴輪顔」とか言われてましたが、そこを上手に生かしながら、ハイパーギャグドラマとしてとても笑わせていただきました。今のクドカン脚本よりずっとおもしろかったです。
そして今チェックして知ったのですが(笑)、『遊びじゃないのよ、この恋は』というドラマも脚本に関わってますね。これもバカ受けでした。主演の井森美幸も好きではなかったのですが、このドラマでだけは上手く使われていたし、なにせ設定やキメ言葉が超ナンセンスの連続で、毎週楽しみに観ていました。
大映ドラマは他にもおもしろく観ていたものがいくつもあります。必ずしも俳優として一級でない人を主要な役に使っていたのもけっこうありましたね。わたしのお気に入りの『ヤヌスの鏡』も杉浦幸でしたし、一級でないからこそのおもしろい馬鹿馬鹿しさを上手く醸し出していたドラマが多かった気がします。

わたしの場合、結果的にレトルトカレーはS&Bを選んでいることが多いことに今気づきました。中村屋もよく選んでます。美味しいですよね、チキンカレー。BSEに関してはわたしもとても神経質になっていましたが、最近はちょっと意識に昇ってませんでした。確率的には極めて低いだろうというのもありますが、頭には置いていた方がいいですよね。
レトルトカレーで「~肉」とかブランド肉などを謳っているものもありますが、カレールーでじっくり煮込み、しかもレトルトになっているのであれば、どんな牛肉を使っていてもさほど変わらなくなるような気もします。だから「~肉だから」という基準ではあまり買わず、味に興味があるか否かと、「ある程度具が入っている」(笑)という基準を大切にしています。「ルーの中に具が全部とろけている~」的なカレーはもう一つ満足感が欠けるので(←個人的意見です 笑)。
『ボンカレー』は、ビーフエキスのことがなくてもずっと食べておりません。最近は以前になかったシリーズも出ているようですが、味が緩い印象があります。
「ご当地レトルト」もいろいろ出てますよね~。興味はありますが、だいたいどれも高いですね~。ファミレスで食べるよりも高くなるものもありますので、レトルトでそこまではというのはどうしても思います。高知のご当地カレーも出ているようですが、食べたことありません。

>カレーといえば、労働者に「うまい」と言わせるカレーを作るところ

ありましたね。ああいう設定は素晴らしかったですね。読者としてはとてもワクワクするところでした。そして漫画の中で蘊蓄を語らないのもよかったです。料理や食材の知識を増やすのは楽しいですが、グルメブームの時にあまりにもしかつめらしい顔して高級料理を論評する人たちがメディアを賑わせ過ぎて、しかもその人たちの中には、ファーストフードを「人間の食べ物じゃない」的な言い方でディスっている御仁もおりました。ファーストフードが健康に資するとは思いませんが(笑)、(庶民が楽しんで食べている者を、そこまで言わなくても)というのはありました。

膝枕・・・いいですね~(笑)。泉じゅんの膝枕とか、泉じゅんと炬燵とか(笑)。しかし結城貢が・・・それはさて置き、実はわたし、ずっと炬燵を使っておりませんで、それだけに余計に妄想が育つのかもしれません。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2017-11-23 23:33) 

yamatonosuke

大映ドラマは映像が独特でしたね。
やっぱり印象深いのはスクールウォーズかな、
by yamatonosuke (2017-11-24 01:24) 

土芽

大映ドラマ、当時ですらツッコミどころ満載感が人気でしたね。
by 土芽 (2017-11-24 06:25) 

Rinko

スチュワーデス物語、懐かしいです。笑
モノマネしてました。^m^
by Rinko (2017-11-24 07:45) 

Take-Zee

こんにちは!
若い人は大映と聞けばダイエーでしょう・・
もっと若い人はダイエーすら知らないでしょう。

by Take-Zee (2017-11-24 09:06) 

なかちゃん

赤い〇〇は、その赤いという部分が嫌いでどれも全く見てません ^^
スチュワーデス物語は、『ドジでのろまなカメ』の部分が嫌いで、やはりこれも見てないんです。そんな奴が人の命を預かる仕事に憧れるという部分でボク的には無理があったもので ^^;
なるほど、どちらも大映だったんですね(^^)

by なかちゃん (2017-11-24 09:49) 

チャー

スチュワーデス物語 懐かしいです(^^)
by チャー (2017-11-24 11:37) 

makkun

映画やドラマはどうしても出演する人だけに
気が行ってしまいますので
監督や脚本家を知る事は少ないです。
懐かしい映画・ドラマに心が込み上げて来ましたが
増村保造氏の事は全く知りませんでした。
by makkun (2017-11-24 13:47) 

伊閣蝶

増村保造監督、私はやはりその映画の大ファンで、「氷壁」や「妻は告白する」などの山岳を題材にしたものなどは特にお気に入りでした。
「曽根崎心中」も素晴らしかった。
時代を先駆けた先端性を持ちつつ、娯楽作品として仕上げる力量は本当に並々ならぬものがありましたね。
by 伊閣蝶 (2017-11-24 15:16) 

little_me

大映ドラマ大好きでした。
風間杜夫になぜかトキメキを感じていた
小学生でしたw
片平なぎささんの手袋のマネもよくやったなぁ。
キョンキョンが紙のピアノを弾くのとか。
色々大げさなので、子供がマネがしやすいんですよね(^^;

by little_me (2017-11-24 15:33) 

まお

ステュワーデス物語、懐かしいです
片平なぎさが怖いなぁ~と思いながら観てました
by まお (2017-11-24 15:34) 

johncomeback

大学の頃からTVドラマっていうか、TVをあまり観なくなりました。
興味がある歴史上の人物が主人公の大河ドラマは観ます。
来年は西郷隆盛が主人公なので観ようと思っています。
by johncomeback (2017-11-24 15:55) 

MINERVA

大映ドラマ、放送翌日は学校での話題になる位の人気でした。
CSなどで再放送を観る事がありますが、濃すぎる演技が大好きです。
「スチュワーデス物語」は男女関係無しに流行っておりましたね。
by MINERVA (2017-11-24 18:30) 

ヨッシーパパ

その当時は、夜もほとんど店もやっていなくて真っ暗でしたし、録画するものが庶民では持てなかったので、リアルタイムで、家族揃って見ていました。
by ヨッシーパパ (2017-11-24 19:24) 

たじまーる

スチュワーデス物語は
再放送でしっかりと観ました(///∇///)
スチュワーデス物語で流れていた
フラッシュダンスは
私が吹奏楽部だったころ(小学校の時)
演奏会で演奏しましたので
英語バージョン、日本語バージョンバッチリ覚えてます^^;
スクールウォーズは
スカパーのTBSチャンネルでこちらもしっかりと観ました(((^^;)
by たじまーる (2017-11-24 20:51) 

ヤマカゼ

ずいぶんと懐かしいのを出してきましたね。
by ヤマカゼ (2017-11-24 21:04) 

そらへい

増村保造監督、ずいぶんたくさん有名テレビドラマの監督もされていたのですね。
私は、映画監督でしか知りませんでした。
そんなにたくさん見たわけではありませんが
名前だけは存じていました。
by そらへい (2017-11-24 21:23) 

Kay

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