真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話 (佐々木閑、大栗博司、幻冬舎新書) [仏教]
真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話 (佐々木閑、大栗博司、幻冬舎新書) をご紹介します。仏教哲学者と宇宙物理学者による、人生の意味や真理を探求を行った学術的啓蒙書の意欲作です。宗教と科学という異なる立場ながら、人生の意味や世界観に、一定の一致が見られたことは意義深い。
タイトルで、堅苦しい内容を想像されますか。
でも、本書は、釈迦仏教、宇宙物理学、そしてその違いと共通点が全部書かれている贅沢な内容です。
佐々木閑さんは、コロナ禍における大学(釈迦仏教の歴史と哲学)の動画講義をYouTubeに発表しており、このブログでも何度かご紹介しました。
釈迦仏教の第一人者である佐々木閑さんは、コロナ禍で公開された学生向け動画講義において、「仏教はどんな人たちのためにあるものなのか」という話をされています。(画像は「仏教哲学の世界観」1-(9)動画より)https://t.co/wK84jC4fg9 #仏教 #釈迦仏教 #釈迦牟尼 #お釈迦様 #仏教哲学 pic.twitter.com/F9cDX6ufxa
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) March 13, 2024
佐々木閑さんは、京都大学の工学部(工業化学)から、文学部(哲学科)に学士入学して仏教研究に進まれた方で、なおかつご実家は浄土真宗(高田派)のお寺です。
つまり、釈迦仏教、大乗仏教、科学(工学)の3分野に精通しており、かつ大栗博司さんとは京都大学の同窓ということになりますので、懐深く、様々な視点から話が広がり、古代釈迦の教えから最先端の科学までを縦横無尽に語り尽くしています。
仏教も科学も、生きることの意味は教えてくれない
本書は、それぞれのご専門において、現時点でわかっているところまでが紹介され、かつ、釈迦仏教(以下仏教と記す)と宇宙物理学の視点から、それぞれの違いと共通点を明らかにし、人生の意味や真理について対談しながら探求しています。
その両分野が向き合ったときに、何が見えてくるのか。
以下は、この本の概要とポイントです。
アプローチの違い……仏教は心の働きを微細に観察し、人間の真理を追究したものであり、一方で近代科学は自然法則の発見を通じて、宇宙の真理を追究しています。
共通の結論……仏教にしろ科学にしろ、「人生の目的はあらかじめ与えられているものでなく、そもそも生きることに意味はない」という結論に到達しています。
「生きる意味はない」といっても、もちろん「生きててもしょうがない」という意味ではありません。
仏教や科学に、「生きる意味」は説かれていないので、結局、自分の人生の意味は自分で考えろ、ということです。
突き放したような身も蓋もない結論ですが、科学は自然法則を、仏教は心の中のはたらきを説いているだけなので、これは当然です。
たとえば、りんごが落ちる「万有引力の法則」は、人間がそうしたいから起こるわけではありません。
一方の釈迦仏教も、神様のいない宗教ですから、「人生の意味」は自分で答えを出していくしかありません。
これがもし、一神教なら、自分が神様の差配で生きていることを自覚することが唯一絶対の「人生の意味」なので。その点で、仏教は一神教と世界観が異なります。
Amazonのレビューにもある通り、読者によっては、この結論に当惑し、また幻滅するかもしれません。
「結局なんのために生きているんだ?」という疑念が湧いてこようからです。
しかし、考え方にもよりますが、「意味」があらかじめ100%定まっているような人生だったら、やっぱり「つまらない」と。私なら思うかもしれません。
釈迦仏教や科学など、考えるための「教え」や「法則」はある。
それをもとに、あとは自分で考える方が、生きる張り合いのようなものが出てこようというものです。
あと、仏教は、霊魂(身体の分離)も認めませんから、物心一元論という点でも仏教は科学と共通しています。
私が、仏教学を学修したいと思った理由の一つは、仏教と量子力学が「似ている」といわれているので、それを自分で確認したかったことがありますが、本書はその目的にもピタッとハマった内容です。
仏教は仏教、科学は科学、されと真理に共通点あり
ただ、アインシュタインほか、少なくない科学者は、仏教が科学と似ている、仏教だけは宗教として認められるというような「お褒めの言葉」を述べていて、一部の仏教者や仏教ファンはそれを歓迎していますが、佐々木閑さんは、その立場を取っていません。
それは、科学の権威に基づく価値観であり、仏教は仏教、科学は科学なんだ、それぞれ全く別のものなんだというのです。
しかし、真理という点ではアプローチが違うだけで、共通することが少なくないかもしれない、という話です。
そのような違いと共通点を踏まえて、人はどうしたら絶望せずに生きられるのか。また、物事を正しく見ることがなぜ必要なのか、という哲学的な議論をお二人は真摯に行っています。
仏教と科学の真髄を突き合わせながら、人生の真理を考える。これほど、知的好奇心を刺激するテーマはありません。
私は、図書館で本書を借りて読みましたが、購入の価値はあるし、むしろ購入して手元に置きたい一冊だと思いました。
そういう哲学的なことはピンとこない、という方であっても、少なくとも、「お釈迦様の仏教ってなんだろう」「科学はどこまで大宇宙の真実を明らかにしたのたろう」という各分野の疑問についても、本書でコンパクトにまとめられているので、仏教と科学それぞれの最新情報と哲学を知ることができる贅沢な書籍です。
みなさんは、ご自身の「生きる意味」について、どう考えられていますか。
真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話 (幻冬舎新書) - 佐々木 閑, 大栗 博司
2024-05-11 06:00
nice!(139)
コメント(9)
自分の価値は自分で決める物で他人がとやかく言う物ではないんでしょうね。
by pn (2024-05-11 06:28)
おはようございます。
広告でいきなり水着の女性の尻が出てきて、
読んだ分、全部頭から吹っ飛ぶんですが…
by 安奈 (2024-05-11 06:35)
おはようございます^^
今わたくし手元に似たような本を置いています。読み始めましたが、相当時間、気持ちに余裕がないとなかなか先に進まない本です。(玄侑宗久さんと大竹稽さん)
生きる意味について・・・を考えるより、今の仕事(食べるための食事作り)をするだけで精一杯の人生ですね^^
by mm (2024-05-11 06:48)
畑作らなくなったふら野菜が大変だ、と思ったりしますよ。
こちら今朝もいい天気です。
by 夏炉冬扇 (2024-05-11 07:14)
こんにちは!
朝からお天気ですが強風です・・・
横須賀、猿島航路は運休です (゚o゚;!
by Take-Zee (2024-05-11 10:33)
>広告でいきなり水着の女性の尻が出てきて、
グーグルの広告は、場所の提供者(私)が選んでいるのではなく、Googleが選んでいます。どこの場所に何をいくつ表示するか、すべて「自動」の設定にしています。なぜこの程度のちっぽけなブログに広告を入れているかというと、GoogleのNGワードを調べるためです
by いっぷく (2024-05-11 10:53)
何事もあまり考えず、考える頭がない者の方が楽に生きられるのかな~と思ったけど・・・
難しい事は遠ざけているが正解のようです
生きる意味を考えて結論が出る前に人生が終わりそうです
by ムサシママ (2024-05-11 16:02)
科学と仏教の差は(誰にでもできる)再現性かな?
と思ったり。どっちもある意味宗教(笑)。
by tai-yama (2024-05-11 20:12)
光瀬龍さんの百億の昼と千億の夜を思い出しました
by mau (2024-05-12 00:44)