『病気が長引く人、回復がはやい人 胃腸が美しい人は長生きできる』(江田証著、幻冬舎)を読みました。長生きできる回復力は、「レジリエンス(抵抗力・抗病力)」の高さによるといい、それがある人は、あらゆる病気を跳ね返せる力があり見た目も若いといいます。著者は現役の消化器内科医ですが、病気の解説だけでなく、マインドセットまで書かれています。
江田証医師(江田クリニック院長)は、『日刊ゲンダイ』で、胃とピロリ菌について連載をされています。
本書の表紙にも、胃のイラストが描かれていることから、本書を手にとった時は、てっきりピロリ菌をとって健康になりましょう、という話かと思いました。
が、それだけではなく、脳卒中、心筋梗塞など循環器慶疾患、糖尿病、認知症、肥満、うつなど、私たちを取り巻く様々な健康不安について、その発症の原因や個人的にできる対策などを網羅しています。
まず、江田証医師は、見た目が若い人の体を調べてみると、血管や血液、また心臓や脳、胃腸などの臓器の状態がよく、細胞も若々しいと書いています。
同じようなことが、先日ご紹介した『
『人の寿命は「肌」でわかる、「腸」で決まる』』(荒浪暁彦著、ワニブックス)にも書かれていました。
江田証医師は本書で、それが「レジリエンス(抵抗力・抗病力)」の高さによるといいます。
そういう人は、ダメージを受けても折れずに立ち直る、バネのような回復力があるというのです。
レジリエンスは、生まれつきの能力だけでなく、食事、運動、身の回りの環境の整え方、考え方など、生活習慣で決まるといいます。
本書では、レジリエンス(抵抗力・抗病力)を高めるための「新生活習慣」として、次のような内容を紹介・解説しています。
「仕事や会議は立って行う」「食後に緑茶を飲むと肺がん予防になる」「うつ予防として日曜の夕食に牛肉を食べよう」「大根おろしとレモンで毒消し」「グルコサミンは膝関節には効かないが抗酸化には有望」「バイアグラでアンチエイジング」「15分以上100分以内の有酸素運動が認知症や糖尿病などの予防に」「心筋梗塞の予兆は耳のしわ」「牛乳は超ダイエット食品」「明るい照明とココナッツオイルで認知症予防」「腸内フローラに便移植」
詳細は本書でご確認ください。
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健康長寿のマインドセットまで提案
たとえば、ネットでしばしばとりあげられる「ナン・スタディ(修道女研究)」も紹介されています。
1986年から、ケンタッキー大学(その後は米ミネソタ大学で研究続行)で、デビッド・スノードン博士が、75歳~106歳までの678人の修道女を死後の脳解剖も含めて調べたところ、
1.若いころ(平均22歳)に書いた文章の意味密度(語彙の豊かさ)と、老年期(80歳)の認知機能には深い関係がある
2.修道女はたとえ認知症になっても、3分の1は症状が出ない
ということがわかったそうです。
修道女は、起床時間や食事など、均質的な生活をしているので、調査・解析しやすいのだそうです。
ここから、認知症予防には、規則正しい生活と、計算能力より言語能力が求められると同書では考察されています。
そして、それには、
ネットの細切れの文章より、一冊の本を通して読む
ことを求めています。
ネットのweb掲示板や、SNSなどの書きっぱなしで手っ取り早くわかった気にならず、資料を読み込み質の高い言論で学びましょう、ということだと思います。
ただ、中には、ちょっと実践するのをためらうような話も出てきます。
腸内フローラを整えましょうという章があり、納豆を食べましょう、腸内フローラが乱れると病気のもとである、といった話はいいのですが、「他人の便を、カプセルに入れて飲む便移植で腸を改善」というのです。
アメリカでは保険適用となり、日本でも一部の大学病院で治験とありますが、私はまず納豆を食べることにします。
肺がんや大腸がんの転移対策として、ある漢方薬を試すことも提案しています。
最後には、マインドセットも書かれています。
50歳近くに子をなした人が、子どもが大きくなるまで自分が元気でいられるか心配だというので、著者はマインドセットを勧めたそうです。
たとえば、90歳まで生きると決意したら、それを紙に書いて、朝晩眺めて心構えをする。
そして、90歳になった時を想像し、明確なイメージを作り、人生を逆算してとるべき予防策が見えてくるというのです。
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自己啓発セミナーに出てくるような話ですが、最近のアンチエイジング研究でわかってきたことだといいます。
先日ご紹介した『面倒くさがりやでもうまくいくラクな段取り!』(悠木そのま著、かんき出版)でも、脳はイメージと現実の区別がつかないので、つねに肯定的なイメージを描くといいと書かれていました。
『面倒くさがりやでもうまくいくラクな段取り!』脳を楽しく楽に
江田証医師は、若返りのメリットとデメリットを考え、健康長寿の習慣を身につけなければならない理由を書き出し、それをクリアブックにファイリングして、朝晩めくって意識に刷り込み習慣化させることを提案しています。
栃木の無医地区で開業し、今では1日200人の患者を診るという、気骨と人気のある医師らしいわかりやすく前向きな書籍だと思います。
続編はこちら
『病気が長引く人、回復がはやい人』レジリエンスと長寿、妊活ほか
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