『加山雄三のブラックジャック』(1981年、松竹/テレビ朝日)を観ました。『ブラックジャック』は、言わずと知れた手塚治虫のマンガです。放送当時は、原作を愚弄するという「手塚治虫原理主義者」の批判もありましたが、改めて鑑賞すると、昭和のドラマらしい独自の味わいがありました。(画像は劇中より)
主人公の
ブラックジャックは、
無免許ですが、
神業ともいえる外科医テクニックで、世界中に名を知られる存在です。
どんな難病でも治すが、表舞台には立たず、たとえ貧乏人相手でも高い報酬を取る。
スーパーマンでありながら、
アウトサイダーとしてのキャラクターです。
医学部出身で医師免許も持つ
手塚治虫が、『週刊少年チャンピオン』の黄金時代を支えた医療漫画です。
それをテレビドラマで実写化したのが、1981年。
ところが、主役が
加山雄三、というだけで、原作イメージと違いすぎるという声が上がり、当時のマスコミも手厳しい論調でした。
私も、当時はそういう先入観がありました。
実際、観ると、アウトサイダーなブラックジャックではなく、
若大将的ヒューマニズムにあふれた画廊経営者・坂東次郎の隠れたもう一つの顔という描き方でした。
原作原理主義者は、それが気に食わなかったのでしょう。
しかし、原作とは名ばかりの、大胆な翻案が行われた映画やテレビドラマなどはこれまでにもいくつもあります。本作だけを目の敵にすることもないでしょう。
原作は、当時すでに「過去の人」になりつつあった手塚治虫が、最後の勝負として、劇画ブームに対抗するためにあえて
ヒューマニズムを封印した経緯があります。
ドラマでそれを加えたのは、むしろ積極的な試みであったとみることもできます。
もとより、本作は「
加山雄三の」とつくわけですから、いちいち原作を引き合いにせず、別物としての評価を与えても良かったのではないかと思いました。
当時批判していた人たちは、そもそもちゃんと本作を観たのかなって思います。
今回、改めて鑑賞しましたが、昭和的な、なんとも言えぬあたたかみがあり、私は本作はドラマとして決して失敗作ではないと思います。
何より、設定は原作と違うものの、ストーリーは原作を忠実に使っており、原作を愚弄しているような見方は的はずれだと思います。
今回はDVD化された全3巻のうち、第1巻の第3話「ふたつの愛」をご紹介します。
ちなみに、ナレーターは、若大将を勝手にライバルと思っていた青大将を演じた
田中邦衛です。
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移植したのは職人の「腕」か「心」か
婚約中のアキラ(
高岡健二)とリツコ(
吉沢京子)は、結婚式も間近の熱々カップル。
ところが、浮かれすぎて、リツコ(吉沢京子)が抱きついてアキラ(高岡健二)の運転するハンドルが揺れます。
そのため運転するダンプは、出前の途中だった築地でも有名な寿司職人のタク(
村野武範)をハネてしまい、タク(村野武範)は両方の腕の肘から先を切断。
アキラ(高岡健二)が賠償の話をすると、タク(村野武範)は、金はいらないから、自分の手の代わりになって鮨職人になれといいます。
リツコ(吉沢京子)は、友達のケイコ(
秋吉久美子)に、ブラックジャックの手術でタクの手をもとに戻して欲しいと頼みます。
ケイコが勤務する画廊のオーナー・坂東次郎(加山雄三)を介して、
ブラックジャックの手術でタクの手をもとに戻して欲しいと言うのです。
ブラックジャック(加山雄三)は、普段はケイコが勤務する画廊のオーナー・坂東次郎として生活しており、坂東次郎はブラックジャックにつなぐ窓口役ということになっているのです。
しかし、事故当時ならともかく、いったん失った腕は再生できるはずがないと、坂東次郎は断ります。
アキラ(高岡健二)は、タク(村野武範)からいつもダメ出しをされ、カンシャクを起こしていったんは店を飛び出します。
が、自分の手が、
寿司を握る楽しさを覚えてしまい、家でくすぶっているのが我慢できなくなり、タク(村野武範)の店に戻ります。
ところが、アキラ(高岡健二)は今度は自分がダンプにハネられてしまい、即死。
リツコ(吉沢京子)は、可能なうちに、アキラ(高岡健二)の腕をタク(村野武範)に移植させて欲しいと言います。
坂東次郎(加山雄三)の友人である倉持警部(
藤岡琢也)は、辞職覚悟でアキラ(高岡健二)の遺体を、坂東次郎(加山雄三)に引き渡します。
ブラックジャック(加山雄三)によって、タク(村野武範)にはアキラ(高岡健二)の
両腕が移植され、タク(村野武範)は引退して老人ホームに入った、元人気寿司職人の父親(
花沢徳衛)に寿司を握り、合格点をもらいます。
両腕移植の報酬は、
寿司4人前。
ブラックジャック(加山雄三)は、執事・遠藤(
松村達雄)やピノコら自分のスタッフと、タク(村野武範)の寿司に舌鼓をうちます。お店では、リツコ(吉沢京子)が働いていました。
寿司を食うブラックジャックは原作には出てこなかった(笑)
余談ですが、花沢徳衛はリアルで寿司が好きで、
丹波哲郎や
緒形拳なども行っていた、築地某店が行きつけのお店でした。
丹波哲郎は、カメラがまわっていなくても丹波哲郎を演じていたそうです(笑)
花沢徳衛や緒形拳は、夫婦で来られることが多く、謙虚で腰が低かったそうです。
私も、子どもがいない頃は、
ランチタイムに、妻とそのお店に行ったものです。
元キャスターの女性は、近くのがんセンターに入院していたお母さんに、寿司折りを注文していた“お母さん思い”でした。
明石家さんまが、当時、その人の似てないモノマネをしていましたが、私は「寿司折りの話」を知っていたので、その“笑い”にはノレなかったですね。
横道にそれましたが、『
加山雄三のブラックジャック』、いかにも昭和らしいストーリーだと思いませんか。
こんなことなら、リアル放送時に毎週観ておけばよかったと思いました。
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