『効く健康法 効かない健康法』(岡田正彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)が話題になっています。巷間、いろいろな健康法がありますが、医学的根拠に乏しかったり、正反対の健康情報がともに譲らずメディアを賑わせたりしています。同書は、そうした既存の健康情報について、著者が○か×かで結論を出しています。
著者は、『
効く健康法 効かない健康法』の「表2」(表紙の次のページ)において、「本書の3つの特徴」として、こう述べています。
1.著者が読んだ膨大な医学論文の中から信頼のおける情報のみを紹介する
2.体質によって「正しい健康法」は異なるという視点をとる
3.「過食の時代」にふさわしい健康法に重点を置く
私が、とくに「なるほど」と思ったのは、「2」です。
最近は、1日1食がいいだの、少食や絶食が良いだのという健康情報があるのですが、私は、以前、少食を実践してみたものの、5キロ近く体重がやせてしまい、ひどい目にあいました。
太らない体質の私には
少食は合わないらしい。
いずれにしても、テレビや新聞や書籍で、専門家の肩書の人が述べたからといって、鵜呑みにするのは考えものです。
さて、『効く健康法 効かない健康法』については、先日、その内容の一部を、『東京スポーツ』(2015年9月25日付)において、著者の
岡田正彦氏(新潟大名誉教授)が、主な5項目まとめています。
詳細は本書をご覧いただくとして、ここではその5項目をご紹介します。
休肝日で体を休める……×
結論から述べると、全く
医学的根拠はないそうです。
人間の内臓はいつも動いており、アルコールに含まれるアセトアルデヒド以外にも、いろいろな毒を日々分解し続けています。
ですから、休肝日を作ることに意味は無く、適量を毎日飲む方が、休肝日を作ったのだからといってそれ以外の日に暴飲するよりもマシというのが著者の意見です。
水を1日2リットル飲むと健康に良い……×
人は具体的な数字が出ると弱いですね。1日2リットル水を飲むと血液がさらさらになる、なんてよくいわれます。
しかし、著者はその健康情報に×をつけています。
実際には血液が一瞬薄まるだけ。むしろ飲み過ぎると、塩分濃度が下がり、さらにけいれんなどを起こす危険性があるといいます。心臓にもよくありませんね。
著者は、「
水は喉が渇いた時に飲む。これが正解」と述べています。
ダイエットには食べる順番は関係ない……△
野菜を先に食べると、糖質の吸収を抑え、ダイエットできるという説がありますが、長い目で見ると
体重は変化しないそうです。
ただ、先に野菜をたくさん食べておなかいっぱいにすることで、炭水化物の摂取が抑えられれば体重を減らすことは可能とのこと。
体温が高いと免疫力が高い……×
本書のハイライト、といってもいい指摘です。
昨今の健康情報は、現代人は体温が低い、体温が1度下がると免疫力が30%下がる、などとまことしやかに語られていますが、著者は
きっぱり否定しています。
そもそも免疫力の全体像を数値化するのはむずかしい。35度台の低体温症の人でも元気な人もいるし、高めの人で病気がちの人もいる。欧米人は日本人より1度ほど平均体温が高いが平均寿命は日本人より短い、など反論しています。
逆に免疫力が強すぎると、アレルギーや花粉症を引き起こすので、
免疫力はそこそこがよい、というのが著者の持論です。
ストレスは万病のもと……×
確かにストレスが原因で心筋梗塞や脳卒中になるリスクは高まりますが、一方で、
ストレスのない人は認知症になるリスクが高まるということと、
ストレスが原因でがんになるという説も否定されていることを指摘。
結論として、人間には
ほどほどのストレスは必要だと本書で述べています。
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引き続き調べを待ちたいものも……
しかし、一方で、著者が「○」をつけたことについては、異論が出ているものもあるので、それについても私の知っている限りを枚挙してみます。
卵は1日1個にとどめておくべき……○
「べき」とまでいえるかどうか。私は懐疑的です。
私は糖質制限に全面賛成ではありませんが、糖質制限派の
渡辺信幸医師は、予防医学の立場から、肉(Meat)、卵(Egg)、チーズ(Cheese)による食事療法、それぞれの頭文字から名づけたMEC食を提唱。
『日本人だからこそ「ご飯」を食べるな』肉・卵・チーズの食事法
具体的には、肉200g、卵3個、チーズ120gを、1日のうち、どんな形でも構わないので食べることを勧めています。
佐藤智春氏のように、『卵を食べれば全部よくなる』(マガジンハウス)というズバリの著書を上梓。
『卵を食べれば全部よくなる』たんぱく質を安くおいしく食べる
20代の頃、体を壊して体重が39キロまで減ったものの、鶏卵を1日10個食べる生活を1年続けたら元に戻ったという体験談を披露しています。
卵推進派に対する反証をお伺いしたいところです。
ワインのポリフェノールはがん予防になる……○
赤ワインに多く含まれる
ポリフェノールの一種、レスベラトロールによってサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化されるという説は、とっくに否定されています。
『逆に病気を呼び込んでいる44の健康法』それで健康になれるか?
また、
So-netブログのブロガーである
石原藤樹医師は、ビタミンEが前立腺がんを増やすという報告や、βカロテンには肺がんが増えたという報告などから、
「
(抗酸化)サプリメントはがんになる前なら一定の効果がありますが、がんになったらむしろ取らない方がよいというのが、近い将来のがん治療の新常識になるかもしれません。」(『日刊ゲンダイ』2015年11月3日付)
と述べています。ワイン自体はサプリメントではありませんが、「抗酸化」を万能に考えないという意味で、興味深い話です。
結論
その他、「
昼寝と寝酒は厳禁」としていますが、
坪田聡氏は「
瞬間睡眠」など昼間の睡眠を推奨します。
『脳が突然冴えだす「瞬間」仮眠』電車の中で寝るのもアリ!
「
風邪を引いた時は風呂に入らないほうが良い」という説も、ヒートショックプロテイン推奨者の伊藤要子氏は、熱いお風呂でヒートショックプロテインを産生させることで、はやめに治すことを述べています。
ヒートショックプロテイン、マイルド加温療法実践してますか?
本書が「×」をつけた健康情報は、十分に気をつけ、一方本書が「○」をつけたところについては保留とし、より高次の結論を待ちたいと思いました。
効く健康法 効かない健康法
- 作者: 岡田 正彦
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2015/08/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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