『体においしい「ごはんの力」 できることから始めるプチ健康的食生活』(金丸弘美、義岡千恵子著、川口澄子画、KKベストセラーズ)が、2006年の上梓以来、9年ぶりに見直され話題になっています。タイトルは、食事という意味の「ごはん」を意味しますが、食品としての「ご飯」の大切さも、見開きに文章と画を使ってわかりやすくまとめた書籍です。
昨今、おにぎりや、前日の残りご飯など、「
冷ご飯」が注目されています。
理由は、炊いたご飯を冷ますと、「
難消化性でんぷん(
レジスタントスターチ)」が増えるからです。
「難消化性でんぷん」。
食物繊維とよく似た働きをするでんぷんの分解物です。
「難消化性」ですから、ヒトの胃や小腸では消化されず、大腸まで届き、
腸をきれいに掃除してくれるものです。
そこで、昨今は、
冷ご飯ダイエットなるものまで流行しています。
また、冷やご飯は、温かいご飯と比べて
血糖値を上げにくいともいわれています。
「
糖質制限」なる食べ方が喧伝され、まるでご飯は
毒のような言われ方でしたが、脂肪分がほとんどなく、胃への負担が少なく、腹持ちもいいので、肉や卵で満腹にするリスク(
脂質過多、
心疾患等)を考えると、ご飯を否定する必要はあるのかな、という気がしてきます。
他にも、「冷ご飯推進」のサイトによると、難消化性でんぷんは大腸で腸内細菌の餌となり、「酪酸」「酢酸」「プロピオン酸」などに分解。
腸の新陳代謝に貢献したり、
脂肪の燃焼を促したりする作用があるそうです。
一昨日ご紹介した『
効く健康法 効かない健康法』(岡田正彦著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、食品の
グリセミック指数を比較しています。
『効く健康法 効かない健康法』より
グリセミック指数というのは、糖質がブドウ糖になるスピード、要するに血糖値の上がり方を示す数字です。
数字が大きいほど、血糖値の上がり方が急ということになりますが、同書の比較を見ても、「精白米」が
主食としては数字が低いことがわかります。
ラーメン麺増量ならライスで補ったほうが良い?
ご飯は、糖質制限派が刷り込みたがるイメージほど、「血糖値の敵」というわけでもないのかもしれません。
もちろん、糖尿病が深刻で食事に制限をつけなければならない場合は別ですが、すくなくとも医学的根拠に乏しい
過度なダイエットや
偏食で、「ご飯」を控えるのは戒めるべきことだと思います。
こうした食生活についての様々な情報を、すでに9年前にわかりやすくまとめていたのが、『
体にいい「ごはんの力」』です。
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バランスのよう食事に欠かせないご飯
本書は、食事としての「ごはん」の大切さを解説していますが、中でも「主食」の重要性を説いており、すなわち食材のコメ、食品としての「ご飯」の価値の再確認する内容にもなっています。
第1章では、「あなたの食生活は、大丈夫?」というタイトルで、以下の現代人の食生活の忽せにできないデータを紹介し、「あなたはいくつ当てはまりますか」と問うています。
1.20代男性の2人に1人、女性の3人に1人は朝食を抜くことがある
2.20代女性の21.4%は痩せ過ぎ。でも7割は「自分は太っていると思っている」
3.働き盛りの男性(30~40代)の31%が肥満
4.現代人が1回の食事に噛む回数は620回で、戦前(1420回)の半分以下
5.野菜は1日350g食べるのが理想だが、いまの日本人は平均266.7gしか食べていない
6.20~60代女性の40.6%が便秘で悩んでいる
7.20~30代男性の54.3%、女性の18%がタバコを吸っている
8.女性の74%、男性の69%は、運動する習慣がない
そして、健康のために「毎日の食生活をチェックしよう」とし、具体的にどのような食事が良いのか、という話に移ります。
本書が勧めているのは「
和食」。
健康な体をつくる理想的な1日の食事量の目安として、4段階にわかれたコマの絵を描いています。
『体にいい「ごはんの力」』より
一番上が「
主食」で、ごはん、パン、麺などの穀類。
2段目が「
副菜」で、体の生理機能を整える食物繊維やビタミンで栄養素を補う野菜、きのこ、いも、海藻類。
3番目が「
主菜」で、血や肉をつくる良質なたんばく質を供給する、肉類、魚類、卵、大豆など。
4番目左側が、骨を丈夫にするカルシウムの多い「
牛乳や乳製品」。その右側が、ビタミンCやカリウムを供給する「
果物」です。
糖質がよくない、なら肉や卵を増やしましょう、ではそのバランスが崩れるわけです。
本書は、糖質制限に対抗して書かれた書籍ではありませんが、本書がこんにち注目されているのは、糖質制限という「
食事療法」が、いいことずくめのような喧伝が近年なされていることで、逆に「ご飯」を中心とした食事を見直すという“揺り戻し”の意味があるのかもしれません。
バランスの良いメニューや、食品添加物、サプリメントとのつきあい方など、食生活全般に渡る様々な疑問にこたえてくれる内容になっているので、主婦にかぎらず多くの方におすすめできる書籍です。
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