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鬼熊事件(漫画/岩田和久、原作/鍋島雅治、電書バト) [社会]

鬼熊事件(漫画/岩田和久、原作/鍋島雅治、電書バト)

『鬼熊事件』は、荷馬車引きの岩淵熊次郎が復讐から4人をサツ害したものの、村の人々は彼を捕らえさせまいと匿い続けた特異事件として知られています。『殺人犯の正体』というサツ人事件9件をマンガにまとめた本に収録されています。



本作は、漫画が岩田和久、原作が鍋島雅治さん。

実在の事件に取材して、事件の経緯や背景をまとめています。

北九州の監禁事件、愛犬家の事件、池田小の事件、ロボトミーの事件、父親にサれてしまい、どうにもならなくなった栃木の事件、レッサーパンダ通り魔事件、毒母への怨恨事件、ホームレス襲撃事件、そして鬼熊事件と9本収録されており、このたび、kindle unlimitedの無料リストに登場しました。

ロボトミーの事件は、以前ご紹介しました。

実はこの記事の参照数が、累計10万ぐらいいってるんです。今も関心が高いんですね。



栃木の事件も、コンスタントに参照があります。


今回は、鬼熊こと岩淵熊次郎の起こした事件のことです。



岩淵熊次郎は明治25年生まれ。

女性にだまされた恨みから、大正15年千葉県久賀村(多古町)で4人をサッ傷し、山中ににげこみました。

村人の同情で匿ってもらい、警察が山狩りを行ったにもかかわらず40日間つかまらず。

事件は演歌にもうたわれるほどの、社会的一大事になりました。

荷馬車引き(今で言う運送業)の岩淵熊次郎は、大酒飲みで気が荒いものの、高齢者や病人、女手しかない所帯など困っている人を見ると放っておけないような性格で、いつも弱い者の味方であることから、村人たちから好感を持たれていました。

妻とは律儀に5人の子をなしていますが、妻だけでは物足りず、いろいろなところで、今で言う愛人を作って不倫も盛んだったのです。

欠点は女性に見境がないこと、それも性善説にたってしまうため、悪い女を信じて騙されてしまうことでした。

旅館ではたらくおはなという女性が、借金のカタに働かされていることを知った鬼熊は、自分の商売道具の馬を売り払って自由の身にさせ、知人に預かってもらうことにしました。

ところが、おはなは夫のもとに帰ってしまい、そもそも借金という話自体が嘘でした。

鬼熊は、いったんは「金輪際女にゃ惚れぬ」と誓ったものの、今度は小料理屋(漫画では小間物屋)のおけいを見かけて、またしても惚れてしまいます。

しかし、おけいは村の人々の評判が悪く、「熊さんは、あの女にだまされている。熊さん、あの女だけはやめたほうがいい」と忠告されている“札付き”でした。

鬼熊は、おけいにも随分貢いだようですが、恋人がいたため、またもや道化に。

おはな、おけいと続けざまにフラレて、鬼熊は復讐の鬼と化しました。

おけいを殴サツすると、おはなの関係者や駐在など、2人をコロし、4人に怪我を負わせ、1軒に火をつけて逃亡。

千葉県下、1000名以上の警察官と、6000名以上の消防団・青年団が動員され、未曾有の山狩りが行われたそうです。

鬼熊は、自分に煮え湯を飲ませたやつ全員に恨みを晴らすまでは捕まりたくないと逃亡。

マスコミは鬼熊に同情的に報じました。

普段世話になっていた村人たちも逃亡を手伝ったため、逃走劇は40日を超えています。。

逃げ切れないと思った鬼熊は、新聞記者を呼んで自サツを宣言。

しかし、なかなかシねず、すると毒入りモナカが村人から差し入れられ、鬼熊はそれを食して“無事”自サツを遂げました。

匿った上に“介錯”まで関わった人々は、後に裁判にかけられますが、すべて執行猶予か無罪で済んだそうです。

人間性弱説



事件が起こったのは都会ではありません。

そのため、事件を取材するために報道関係者などが多数訪れたことで、商店や宿屋などを経営している村人からは感謝されていたフシもあります。

またマスコミも調子に乗って、鬼熊の復讐を美化や同情のテイストで描いたきらいはあったように思います。

さらに、当時は「おいこら」の特高警察といわれ、要するに居丈高に威張り散らしていたので、村人が警察官には協力しなかったり、鬼熊の警察官殺傷が逆に全国的な人気を得る一因ともなっています。

この事件では、鬼熊を利用していく悪い女もいれば、鬼熊がサツ人犯になってもかばう人もいる。

情を考えたら鬼熊を裏切ることはできるはずがないし、だけど刑事事件を情で処することはできません。

つまり、鬼熊も、周囲の人もみんな間違っているのです。

そして、警察も、ふだんから真面目にヤッてないと、事件が起こっても地域住民の協力を得られない、ということもいえるでしょう。

でも、もともとわるいのは、鬼熊を騙した2人の女で、こういう事件があると、人に親切にするのも考えもんだ、なんて思っちゃいますよねえ。

殺人犯の正体 - 鍋島雅治, 岩田和久
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赤面症

犯罪の影になんとやら(T_T)
by 赤面症 (2023-12-29 01:12) 

pn

殺しを肯定する気はありませんが詐欺の方が許せないんですよどちらかと言うと。
殺す気なくても死んじゃったってーのはありがちだけど人を騙す場合騙す気満々で挑む訳でしょうからそれこそ人でなしの行為、と思う。
by pn (2023-12-29 11:42) 

Take-Zee

こんにちは!
殺人なんてどれほどの動機があっても
出来るもんじゃないです・・・!
by Take-Zee (2023-12-29 13:03) 

コーヒーカップ

人間は怖いです。
自分もつらいことがあって恨んだり
もしかしたら知らず知らずに憎まれてるかもしれません。

by コーヒーカップ (2023-12-29 18:26) 

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