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「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から (水島広子、新潮新書) [社会]

「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から (水島広子、新潮新書)

「毒親」の正体ーー精神科医の診察室から (水島広子、新潮新書)は、タイトル通り、自分の診察室に相談に来た、毒親とその子の報告です。説得力のない内容ですが、残念ながら「毒親」について語る医師は似たようなことを書いていることが多いので、その一つとしてご紹介します。



本書は、医師である著者のもとに、自由診療で「私は毒親かどうかカウンセリングしてください」と相談に来た人の話をもとに、毒親について考えています。

自由診療というのは、健康保険のきかない保険外の診察、つまり高い診察費・治療費を請求されるということです。

わざわざ高いお金を払って、「私は毒親でしょうか」などと相談に来ること自体、本当の毒親ではありません。

もちろん、子に促されて、不承不承で来る人も居ますが、本当の毒親は、そんな事言われても「わたしをバカにするな」と、まず来ません。

端的に書くと本書は、「毒親」の比較的闇の浅いケースの経験を前提に、毒親についてまとめています。

本書は、Amazon販売ページのレビューで、賛否がはっきり別れていますが、深刻な毒親育ちほど、とうてい胸に落ちるような内容ではないと思われます。

毒親育ちを標榜することは「思考停止」なのか


で、結論から入りますが、本書はなにを言っているかと言うと、

毒親なんて発達障害者なんだから許してやれ、反抗期がない毒親育ちは今頃親に反抗しているだけ、今更そんな文句を言ってもなにも生産しない

要するに、これだけです。


毒親育ちの「不寛容さと幼稚さ」を指摘する書き方です。

そして、毒親だから幸せになれない、などと思考停止せず、毒親がどうして毒親になったのかまで考えなさいと説教も入っています。

「親のせいで不幸だ」と思うのは思考停止だというのです。

私は、本書には高い評価を与える気になりません。

毒親に悩む人の多くは、とっくにそんな「思考停止」なんて卒業していると思うからです。

毒親育ちをナメてもらったら困るんです。

この方は、以前もツイッターで、毒親育ちに不用意な「批判」をして炎上したことのある、元民主党の国会議員だった方です。

ついでにいえば、事実婚を上手にヤるために、子どもができるたびに何度も形式的な結婚、離婚を繰り返す、戸籍制度を蹂躙している人です。←「悪法も法」という分別すら無い。

ことほどさように、世の中、上手に渡った人の勝ちだよ、といわんばかりの、この先生の生きざまが感じられてなりません。

毒親も、上手にのりきれよ、と言っているわけですからね。

まあ、毒親という言葉や概念が、生理的に苦手な人っているみたいですね。

親を悪く言うことが苦手な人。

水島さんて、私立(慶應)の医学部を大学院まで出してもらってますからね。

医学部と言えば、莫大な学費、国公立に入るとしても、遺伝としての知能、家庭としての文化水準・教育水準の高さがないと、現代では医師免許にたどり着くのは不可能です。

慶應医学部に入れてくれた遺伝子と経済力をもつ親の子弟なんてね、それだけでも宝くじ並みの恵まれた「ほしのもと」なんですよ。

それだけでも、「毒親」なんてイエないわな。

以前も何度も書きましたが、世の中には子どもに犯罪をさせる親もいるし、そこまでとはいかなくても、生涯払拭できない心の闇を焼き付ける親だってたくさんいるんです。

つまり、成人しても、親から独立しても、親がシんでも、その人の人生は親の毒に囚われたまま、苦しんでいるのです。

ですから、毒親問題の本質って、親を許すかどうかではないんです。

そして、事実婚経験者の私は、水島さんのような、戸籍を弄ぶ生き方をスバラシイとも思えません。

対策は……


「親が生んでくれたことに感謝しろ」という人がいますが、「親孝行」を道徳のように位置づけるのは、やはり毒親育ちには無理があります。

そういう気持ちがあったら、仏教では布施と言いますが、物心両面での奉仕を、社会や他人に対して行えばいいのです。

親と話し合えばいい?

水島さんの患者のように、物分りの良い「毒親」ならともかく、親といえども別人格です。

他者を変えることはできないし、過去をやり直すこともできません。

そもそも子供の頃から刷り込まれた「毒」は、子の生き方に反映されていますから、かりにその親と和解したり、親を許せる気持ちになったりシても、肝心な「自我」に、親の毒が残ったままということがあるでしょ。

たとえばね、いい加減で不誠実で、人といさかいばかり起こす毒親の子どもは、好むと好まざるとにかかわらず、やっぱりそんな生き方をシてしまうことってありますよね。

それはね、親を許すとかで解決しないし、ただ許すだけではむしろ解決は遠のくんです。

私が思う毒親問題の対策は、次の2点です。

1.親に怨みがある人は、気の済むまで、徹底的に親の毒がなんであったのかを総括する。納得できるまでどこまででもヤる
2,その上で、「自分は親に、こういうことをされた点が自分にとってマイナスだった。だから自分の子供や周囲の人に対しては、そうではない態度で関わることにしよう」という教訓的結論を持つ

ことが大事ではないかと思います。

いかがですか。医学博士の水島さんのお説教よりも、現実的でしょ。

親に限らず、兄弟、親戚、さらには友人などに対してもね、心のなかに鬱屈とした思いがある人は、そいつがどんなに酷いやつか、吐き出すだけ吐き出して、その上で自分はそうならないよう、それをプラスになる方向に「回向」しましょう。

「毒親」の正体―精神科医の診察室から―(新潮新書) - 水島広子
「毒親」の正体―精神科医の診察室から―(新潮新書) - 水島広子
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赤面症

医学部の学費は、サラリーマンの平均年収以上とか(T_T)
by 赤面症 (2023-12-28 01:24) 

mm

おはようございます^^
いっぷくさんも経験者みたい^^
いっぷくさんのおっしゃることにいちいち納得です。わたくしも
どちらかと言うと毒親に近い親に育てられたので経験上
そう言う風に思うのですよね。で、子育てに成功したかと言うと今一つですが(ー。ー
by mm (2023-12-28 06:01) 

pn

ご本人が毒親なんじゃ無いかこれ?自覚もあるから許してやれと周りに言って自分のやってる事を正当化している。
by pn (2023-12-28 06:19) 

よいこ

悪気が本人になくて、子供のためにの積み重ねで毒親になっている親は厄介です。
私もこだわりが強い人間だから、ヒトのことは言えません
by よいこ (2023-12-28 09:56) 

いっぷく

>自覚もあるから許してやれと周りに言って自分のやってる事を正当化している。
なるほど。そういうことはありえますね。
by いっぷく (2023-12-28 12:54) 

ムサシママ

色々なことを色々な方々が言っていますが
それでも世界は回っている
精神科医の精神を一度覗いてみたいです
by ムサシママ (2023-12-28 13:49) 

Take-Zee

こんにちは!
今年はいろいろ勉強になりました・・・
知らないことが実に多いか、この”毒親”も
知りませんでした。
そんなわけで、きちっとしたコメントが出来ずに
申し訳なく思っていました。

by Take-Zee (2023-12-28 15:46) 

tai-yama

"「親」なんだから許してやれ"は、組織の社会的不正を
自分が雇われているんだからそのぐらいは見逃せよ
と言っていることは同じと。
そう言うことを言う人に限ってCSRとか社会的規範とか
正反対のことを言ったりもしますが・・・
by tai-yama (2023-12-28 23:12) 

コーヒーカップ

自分も毒になってしまったのかなって思うことあります。
by コーヒーカップ (2023-12-28 23:53) 

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