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斜陽(原作/太宰治、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス) [文学]

斜陽(原作/太宰治、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)

斜陽(原作/太宰治、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)は、没落華族から滅びの美しさを描く太宰治の代表作です。東京帝大在学中に、左翼運動、女性問題、薬物中毒、数度の自殺・心中未遂など、波乱の青春時代を送った著者ならではの陰翳に富んだ作品です。

『斜陽』は、太宰治の原作、バラエティ・アートワークスの漫画で、Teamバンミカスから上梓されました。

まんがで読破シリーズ第11巻です。

この記事は、Kindle版からご紹介しています。

2023年11月22日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

主人公のかず子は華族の生まれ。

ですが、戦後の影響で没落します。

母は死に、弟も自殺しますが、主人公は家族のある男性に恋をし、男性の子を身ごもる「成就」をもって生きていくことを「革命」と呼びます。

人間は、恋と革命のために生まれてきたのだ、というモチーフは、日本共産党員ともいわれた太宰治の、左翼的思想らしいものです。

戦後、いったんは脱落したと思われた太宰治が、日本共産党に再入党することは、増山太助著『戦後期左翼人士群像』(柘植書房新社、2000年)に記されていますが、まさに本作には、没落した華族が、革命の意識を以て再び生きる意欲を抱くという、著者自身の生き様に重なるものがあります。

貴族という身分に生き方を翻弄された人々


華族は、明治憲法下において制定された、貴族階級の一つです。

しかし、敗戦後の華族制度廃止から没落貴族となりました。

没落した貴族のかず子と母が懸命に暮らす伊豆の家に、大学の中途で召集され、南方の島で戦死したはずの直治が戻ってきます。

しかし直治は薬物と酒に侵され、母は結核と診断されます。

進駐軍からは、屋敷を立ち退くように言われ、静かな伊豆の山荘に引っ込みます。

引っ越し早々、母親は倒れます。

直治が帰ってきますが、家のお金を持ち出します。

もともと直治は、作家のマネをして薬物中毒になって、その薬代で母親に大変な散財をさせていました。

帰国して、また始めたというのです。

直治が麻薬中毒で苦しんでいたときの手記には、日本の戦争はヤケクソであり、ヤケクソに巻き込まれて死ぬのはゴメンだ。デカダン(退廃的な生き方)でもしなきゃ生きていけない。非難する人よりは「シね」と言ってくれる人のほうがありがたい、と描いてありました。

さらに、1946年2月の金融緊急措置法もありました。

政府は「預金封鎖」と「新円切替」を宣言。

要するに、市中のお金を整理したわけです。

その上、財産調査を行い、それに対して財産税を課税。

莫大な資産を所有する皇族や華族は、最大で全財産の約90%を財産税として納めなければならなりませんでした。

何十人という使用人に囲まれ、料理が次々運ばれる生活から、今日の米の心配をせねばならない生活に一変したのです。

ただ、かず子には、唯一の生きる希望として、母にも「秘事」としていることがありました。

弟の直治の文学の師であり、妻子ある小説家・上原二郎の存在でした。

といっても、そんなに深い付き合いがあったわけではなく、数年前に一度だけ顔を合わした際にキスをされただけです。

しかも、「べつに何も好きではなかった」のに、それ以来彼に対する想いが募っていきました。

風立ちぬ』を解説した恋愛学の先生、森川友義さんの説は改めて説得力がありますね。


先生は、夫婦関係の維持には、「愛する気持ちを「五感」で伝えること」として、肉眼で見る、会話をする、至近距離にいてにおいを嗅ぐ、身体に触れる、キスをするという5つをしている状態が、恋愛が満たされている状態としていましたが、夫婦でなくても異性に気持ちが接近する行為なんでしょうね。

それはともかく、母が病死した後、かず子は上原とついに関係を持ちます。

「しくじった。惚れちゃった」と二郎。
「キザですわ」とかず子
「この野郎」

2人はその晩、結ばれます。

ところが、その翌朝、直治は自サツします。

イ書には上原の妻に恋慕していたことを匂わせる文章と、「僕は、貴族です」の言葉がありました。

どういうことかというと、横恋慕していたけれども、貴族のメンツから、夫人をリャクダツすることはできず、そんな自分の生き方を悲観したわけです。

一方、かず子は、妊娠します。

「貴族」としてしか生きられなかった、母と弟をナくし、上原にも捨てられたかず子ですが、おなかの子と2人、貴族でありながら、「古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きる」ことを宣言します。
これまでの第一回戦では、古い道徳をわずかながら押しのけ得たと思っています。そうして、こんどは、生れる子と共に、第二回戦、第三回戦をたたかうつもりでいるのです。 こいしいひとの子を生み、育てる事が、私の道徳革命の完成なのでございます。

それはすなわち、生きることで革命を果たすという生き様というわけです。

新しい時代にかけてを生き抜こうとする女性の話


貴族はわからないですが、殿様以下藩の役人、つまり士族層には「ご落胤」というのはよくある話で、先祖を何代も遡ると、親の名前が不明であることって戸籍で見つけることがあります。

貴族だけが、それがない「清廉潔白」だったんでしょうかね。


それはともかくとして、今回の『斜陽』については、太田静子という女性がモデルになっているのではないか、とされています。

太田静子という女性は、やはり妻帯者の太宰治の子を宿したと言われているからです。

しかも、産まれた娘・太田治子さんは、作家として活躍しています。

名作は、実在のモデルを、著者のモチーフで描く形で完成したものが、文学史上、少なくないですね。

太宰先生も、芥川龍之介先生同様、いろいろ人生に悩んでいるくせに、ソッチの方は旺盛なので、羨ましい限りです。そういうことなら私もなんぼでも悩みますよ。

いずれにしても、『斜陽』は、戦後の過渡期から新しい時代にかけてを生き抜こうとする、一人の新しい女性を描いた作品ということだと思います。

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赤面症

私もソッチで悩んでみたい\(^o^)/
by 赤面症 (2023-11-24 01:07) 

pn

ソッチの方が旺盛すぎたから人生悩んでたんじゃないか?(笑)
by pn (2023-11-24 06:25) 

Take-Zee

おはようございます!
”ソッチ”なにやら意味不快・・・
でも私には縁遠いお話のようです (^∧^)!
by Take-Zee (2023-11-24 08:14) 

お散歩爺

太宰治が今でも生きてたなら何か変わったかな?。
by お散歩爺 (2023-11-24 09:36) 

そらへい

人間失格と同様、太宰治の代表作ですね。
若いころ読んでいますが、ストーリー忘れていました。

by そらへい (2023-11-25 13:56) 

tai-yama

天皇にはご落胤がいましたと言うし・・・・
熊沢天皇とか(笑)。
by tai-yama (2023-11-25 19:07) 

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