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東京都北区赤羽(清野とおる著、ビーグリー) [文学]

東京都北区赤羽(清野とおる著、ビーグリー)

東京都北区赤羽(清野とおる著、ビーグリー)は、著者が住む北区赤羽町で遭遇した奇妙な出来事をリアルに漫画化しています。ちょっと奇妙な店や人がでてくるのですが、なぜかそういう人に捕まり、またなぜかその人たちと引き続き付き合う著者です。



大学卒業と同時に連載を切られて、事実上無職となり実家に居づらくなった著者が、風呂付き家賃5万5000円で見つけたのが北区赤羽のアパート。

そこで経験する、おもしろ困った、そしてちょっと奇妙な隣人や近隣の人たち。

なぜか著者は、そういう人に捕まり、エーッと思ってしまう経験をするのですが、「もうこりこりだ」というのかと思ったら、著者らしいこだわりの精神で、性懲りもなくその人たちと付き合ってしまう、実は似た者同士の「引き寄せられの法則」ではないかと思える、気味悪いけど面白いリアルな赤羽日記です。

清野とおるさんといえば、過去に『ゴハンスキー』(清野とおる著、扶桑社)をご紹介しました。


著者自身の食べ物や飲食店に関する、体験とこだわりを漫画化したB級グルメエッセイ漫画です。

同作でも、著者らしい面白困ったこだわりが漫画のキモでしたが、まさに本作も、その清野とおるワールドがいかんなく発揮されています。

不快すぎて愉快になる店の常連に


第1巻からご紹介します。

冒頭でご紹介したように、実家に居づらくなった著者は、不動産業者の店頭で、家賃5万5000円の物件を発見。

「赤羽…か」

実家からバスで15分ほどの町。

不便しなくて済みそうだな、と考えた著者は契約します。

小さなことですが、事実上無職の22歳の若者に、よく貸しましたね。

今は賃貸物件もうるさいんですよ。保証人がどうとか、収入証明がどうだとか。

両親を保証人にしたのかな。

両親も、でてってほしかったのかな(笑)

赤羽に転居して、いきなり気になったのが、サウナの屋上に建つ、巨大な自由の女神像。

眠れなくなるほど気になる著者。

やっと気が付きました。

「サウナで入浴(ニューヨーク)」

サウナ⇒入浴⇒ニューヨーク⇒自由の女神

「この事実に気づいた時の衝撃は今でも忘れない」と著者。

アパートの左隣は、挨拶をしようとしても居留守を使う人。

右隣は、挨拶をすると愛想が良い中国人夫妻。

夜になると、最初は静かすぎて仕事ができません。

ところが、まもなくして、右隣からものすごい物音。

そして、男女が激しく怒鳴り合う声。

「中国人夫婦が喧嘩しているんだ」

あんなに優しそうな夫婦が喧嘩するなんて。

今度は左隣から壁をどんと蹴る音が。

「こっちのは多分、静かにしろというクレームの足蹴りだな。文句あるなら直接言いにいけよ」

今度は、うるさすぎて仕事ができなくなりました。

ところが翌日は、ギシギシっという音とともに喘ぎ声。

「昨日喧嘩で今日エッチ。絵に描いたように見事な仲直りだな」

今度は、エロすぎて仕事ができない著者。

それ以降の数日間は、静かで静寂が続いたものの、1週間後にまた喧嘩。

そして翌日は喘ぎ声。

著者は、喧嘩の日とエッチの日をカレンダーにつけ始めました。

すると、喧嘩の翌日はエッチの日でした。

2人の喧嘩はエッチを盛り上げるためのプレイなのか、と仮説を立てる著者。

次の週は、2日連続で喧嘩したものの、次の日はやはりエッチ。

著者の仮説は当たっていた(笑)

以来、エッチの音も、壁どんどんも、適度な雑音になっていたとか。

物語には、主たる舞台以外に飲食店がでてくることがありますが、本作もでてきます。

居酒屋「ちから」という店。

店の看板は真っ二つに割れ、入り口には、「これ、なーんだ?」と描かれた絵の貼り紙があります。

それを著者が観ていると、買い物から帰ってきたママに捕まってしまいました。

「マスター、お客さんだよ」と店内に誘うママ。

ぼったくりバーじゃあるまいし。

店内は、客が一人もおらず、マスターは長椅子でぐうぐう寝ていました。

ひと目で駄目な店だとわかった著者。

では、もう2度と来ないのかと思いきや、愉快なほど不快なことが気に入って常連になります(笑)

そんな感じで、赤羽の町についての日常を漫画化していますが、観光案内的なものではなく、もっぱら著者の実生活におけるこだわりの部分を描いています。

ときどきデジカメで撮った画像を出すことで、ほんとうの話であることを証明しています。

映画にもなった町、赤羽


赤羽というのは、昔大日本製本の工場があって、あ、今でもあるのかな、私はアルバイトとして働いていたことがありました。

夜の部になると、22時に夜食が出るのですが、ラーメンやうどんなどがでるときは嬉しかったですね。

その頃は、まだ古いタイプの客車を使う列車が東北本線の普通で使われていて、帰りは赤羽から上野まで乗っていました。


さて、赤羽というと、私は『喜劇駅前開運』(1968年、東宝)という映画を思い出します。

文芸映画の巨匠といわれた豊田四郎監督作品です。

緑の服の御婦人は、黒柳徹子さんです。

たんなるドタバタではなく、社会風刺がたっぷりきいた作品に仕上がっています。

「昭和の赤羽」を知るためには、必見の映画と言っていいかも知れませんよ。

東京・赤羽で、孫作(伴淳三郎)とさだ(沢村貞子)の夫婦、次郎(フランキー堺)は、駅前の東口と西口でそれぞれ商店を営んでいますが、東西で対立。

コンサル業を標榜する徳之助(森繁久彌)が、伴淳三郎とフランキー堺の両方から金をとって地元議員(山茶花究)に話を通したため混乱するという話です。

赤羽はその頃、いくつかの懸案がありました。

ゴミ処理場の住民反対運動、地下鉄誘致、東口と西口の地下道です。

つまり、映画は全て実際にあった話をもとに、さらに喜劇仕立てにしているという、なかなか凝ったストーリーです。

余談ですが、作中にフランキー堺の店で売っていた、今で言うショップ・ブランドの即席ラーメン『駅前ラーメン』は、エースコックから商品化されました。


現在住まわれている町は、清野とおるさんのようなこだわりはありますか。

東京都北区赤羽 1巻 - 清野 とおる
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赤面症

駅前ラーメンは、赤羽なのに蒸気機関車?
by 赤面症 (2023-10-09 01:12) 

pn

愉快なほど不快ってなんとなく分かる(笑)
by pn (2023-10-09 06:16) 

我流麺童

北区赤羽は地元なので漫画に絵描かれた店や印象に残ったポイントを巡りました。最初に書かれた崖下のアパートは今も現存していますよ。でも現在の赤羽は、当時とは店も人も変わり普通の街になっています。
by 我流麺童 (2023-10-09 06:16) 

Take-Zee

喧嘩の後の・・・
このくだりが面白いですね・・・(^-^)!!

by Take-Zee (2023-10-09 09:09) 

ムサシママ

赤羽、地名は聞いたことがありますが・・・
これを読んで先入観になりそうです^^;
by ムサシママ (2023-10-09 15:53) 

そらへい

赤羽、一度だけ職場仲間のアパートへ泊りに行ったことがあります。翌朝、都心への出勤時、電車の込み具合に辟易しました。毎日、よくこんな路線で通っていると感心しましたね。
by そらへい (2023-10-09 20:20) 

いっぷく

皆さんコメントありがとうございます。

> 北区赤羽は地元なので漫画に絵描かれた店や印象に残ったポイントを巡りました。
実際に行かれたんですか。すごいですね。

by いっぷく (2023-10-09 21:10) 

tai-yama

今、貸家契約は保証人は管理会社になりますよ〜。
会社員だからか、なのかもしれませんが両親や親類を
保証人にすることはないとか。
by tai-yama (2023-10-09 23:30) 

いっぷく

管理会社とは?
マンションなどの管理会社という意味ですか。
そこに対して身元を保証する人が必要なんですよ。

以前は身内の保証人でよかった(というより身内でなければいけなかった)のが、保証会社に変わったことは確かです。(この作品は、まだ身内が保証人になる頃の話です。)
ただし、保証会社は、身元の怪しい人の審査は通しません。
「身元の怪しい」のひとつとして、収入とともに、「緊急連絡先」を必ず求めます。
私のように、夫妻で親類と縁を切っている者は「緊急連絡先」に誰もなってくれないので、部屋を借りるのも、ゆるい保証会社でないと審査がおりません。
by いっぷく (2023-10-10 00:57) 

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