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映画になった奇跡の実話 これが美談の真相だ(鉄人社編集部著、鉄人社) [芸能]

映画になった奇跡の実話 これが美談の真相だ(鉄人社編集部著、鉄人社)

『映画になった奇跡の実話これが美談の真相だ』(鉄人社編集部著、鉄人社)は、奇跡のような実話をベースに作られた85作の真相を解説。たとえば、スプリームスを描いた『ドリームガールズ』のモデル、感動の裏側、関係者のその後などを追っています。



実話をもとにしたとされる感動の名作映画は、国内外で公開されていますが、ストーリーに感動しながらも、実際にこうだったのか、といささか気になることもあります。

映画ですから、エンターテイメントとしてまとめられているのでしょうが、では真相はどうだったのか。

名作35タイトルについて、その真相を明らかにしたのが本書『映画になった奇跡の実話 これが美談の真相だ』です。

以前、このブログでは、『ドリームガールズ』(2006年)という映画をレビューしたことがあります。


『ドリームガールズ』は、デトロイトの黒人系レーベルで一世を風靡したモータウンの所属コーラスグループ、スプリームス(ダイアナ・ロス、メアリー・ウィルソン、フローレンス・バラード)のメアリー・ウィルソンが上梓したベストセラーの自伝『Dreamgirl: My Life As a Supreme』を映画化したものです。

本書に出ていたので、ご紹介しましょう。

回顧録をもとに翻案


2023年2・3月には、ブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』日本版も上演されました。


「日本人キャストによる、初めての日本版上演!!」として、話題になりました。

1960年代のアメリカを舞台に、デトロイトの黒人系レーベルで一世を風靡したモータウンの所属コーラスグループ、スプリームス(ダイアナ・ロス、メアリー・ウィルソン、フローレンス・バラード)が歩んだ栄光と挫折、再生が描かれています。

メンバーのメアリー・ウィルソンが上梓した自伝『Dreamgirl: My Life As a Supreme』がベストセラーになり、それが1981年にアメリカ・ニューヨークで初演。


翌年のトニー賞で6部門を受賞し、2006年に映画化もされました。

ディーナ(ビヨンセ・ノウルズ)、エフィ(ジェニファー・ハドソン)、ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)の3人による、無名の女性グループ『ドリーメッツ』が物語の中心人物です。

中古車事業と、ジミー(エディ・マーフィ)のプロモーションを兼任するカーティス(ジェイミー・フォックス)に、ジミーのバックコーラスをドリーメッツが要請されるところから物語は始まります。


本書の趣旨に沿って結論を述べると、公然としている事実関係と若干相違はあり、映画は原案を下敷きにした創作と割り切った方が良い、ということです。

原案と映画を比べると、人間関係に若干の違いがあります。

男女の関係がどうだったかとか、確執は解消したのか、といったところですね。要するに人間関係。

たとえば、映画では、脱退したフローレンス・バラードも含めて、4人で大団円ということになっていますが、これはもう、本書にも書かれていますが完全な創作です。

実際のフローレンス・バラードは、スプリームスを離脱した後は再結成したわけではなく、不遇なまま若くして亡くなっています。

スプリームスは、全盛が1960年代後半といわれますが、その後黒人シンガーの頂点に立ったといわれるダイアナ・ロスと、悲運のフローレンス・バラードは何が明暗を分けたのか、やはり気になるところではあります。

ただ、黒人系グループが、白人市場主義のアメリカで、どうやってポピュラリティを獲得したかは、おそらく映画が実際と重なる点もあるでしょうし、大変興味深く描かれています。

真相を知りたいか、エンタメのままで良いか


本書は、「はじめに」も「あとがき」もありません。

本文だけで十分コンテンツとして訴求力がある、と編集部が自認しているということです。

たとえば、「奇跡と感動」を描いた作品を紹介する第1章では、

・グリーンブック……黒人ピアニスト、ドン・シャーリーと白人運転手トニー・リップが人種差別と闘い敢行
・フォードvsフェラーリ……「ル・マン24時間レース」で絶対王者フェラーリを破ったフォードの意地とプライド
・ボヘミアン・ラプソディ……夭折の天才ボーカリスト、フレディマーキュリーに関する映画とは違う6つの真実
・インビクタス/負けざる者たち……ネルソン・マンデラと「スプリングボクス」が勝ち取ったラグビーワールドカップ初出場初優勝の栄冠
・最強のふたり……映画以上に深く結ばれていた大富豪の障害者フィリップと介護人の黒人青年アブデルの絆
・マネーボール……弱小アスレチックスを常勝球団に育て上げたビリー・ビーンの野球革命
・ザ・ファイター……劇中では一切描かれないミッキー・ウォード引退前の死闘伝説
・フラガール……潰れかけの炭鉱と踊り子たちが起こした奇跡

といった作品が取り上げられています。

「映画ではこう描かれていたが、実は真相はこうだった」

という場合、その「真相」は知りたいか、「映画のイメージが崩れるから知りたくない」と考えるか。

本書は、後者の方には、お薦めできない書籍ということになります。

みなさんは、どちらですか。

私は前者です。

真相と異なるなら、逆に映画の創作性を真に評価するためにも知りたいと思います。

まあ、こういう議論はよくありますよね。

スターの素顔を知りたいかどうか、という議論。

人間なんて、しょせん無謬ではないのです。

誰でも「裏」や「闇」はあります。

もちろん不法行為まで行ってを覗こうとは思いませんが、公然とした「裏の顔」なら、それを受け入れることで、華やかな「表の顔」との振り幅を知り、その人の生きざまのパワーのようなものがわかる、のではないでしょうか。

映画になった奇跡の実話 これが美談の真相だ (鉄人文庫) - 鉄人ノンフィクション編集部
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コメント 6

赤面症

ビヨンセはこの頃が一番良かったと思います
by 赤面症 (2023-08-21 01:20) 

pn

あくまでも実話ベース物って見てるから誤差あって当然と思ってますが、4人で大団円はなんか腑に落ちないっすね(^_^;)
by pn (2023-08-21 06:21) 

Take-Zee

おはようございます!
お盆を過ぎても猛暑日、たまらないっす!!

by Take-Zee (2023-08-21 07:44) 

tai-yama

悲運のフローレンス・バラードだけで、一冊の本が
できてしまうような(笑)。
by tai-yama (2023-08-21 15:03) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございます。
日本のミュージカルは、うーん、ビヨンセの映画と比べると……どうなんでしょうね。
by いっぷく (2023-08-22 02:52) 

そらへい

「ドリームガールズ」はネットで見ました。
楽しく見られましたね。
by そらへい (2023-08-23 20:12) 

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