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石立鉄男が『最後の賭け~老刑事と金庫破り』で金庫破りを熱演 [懐かし映画・ドラマ]


今日は石立鉄男さん(1942年7月31日~2007年6月1日)の命日です。過去の出演作品はこれまでにもご紹介してきましたが、意外なところではオー・ヘンリーの『よみがえった改心』を原作としたドラマ『最後の賭け~老刑事と金庫破り』で金庫破りを演じたこともあります。(中央の画像はhttp://kamosinobu.seesaa.net/article/391918358.htmlより)



よみがえった改心



金庫破りジミー・ヴァレンタインが、エルモア銀行のオーナーの娘アナベルと婚約。

ラルフDスペンサーと名前も変えて、古い友人のルイスに“商売道具”も譲渡して足を洗い幸せに過ごそうとします。

しかし、老刑事ベン・プライスは、金庫破りが保釈中に起こした事件を追っていて、その手口はジミー以外ありえないと考えますが、ただし決め手がありません。

そして、老刑事は定年も迫っていました。

そんなあるとき、ジミーの婚約者の姪が誤ってエルモア銀行の金庫に閉じ込められてしまいます。

ジミーにとって、金庫を開けることは可能ですが、開けてしまったら自分が金庫破りであることがバレてしまいます。

しかし、人命第一と考えたジミーは、ベンもいる前で金庫を開けて姪を救います。

覚悟を決めてベン刑事に近づき、自分を逮捕するように言うと、ベン刑事は「人違いをされておられるようですね,スペンサーさん。私はあなたを存じ上げておりません」と彼を見逃し、ゆっくりと去っていきました。

高等学校の英語で、教材にする人は多かったらしいですね。

私はくだらない高校出身なので、このような素敵な教材は使いませんでしたが、それよりも若い時に、下記のドラマを観る機会があったので、原作も併せて読みました。

最後の賭け



『最後の賭け~老刑事と金庫破り』(1977年10月08日、大映・俳優座映画放送/ANB)は、オー・ヘンリーの短編集『よみがえった改心』を原作とした単発ドラマでした。

同作を翻案した日本のドラマはいくつかあるのですが、この作品はWikiでも見落として記載されていません。

でも、石立鉄男ウォッチャーはちゃんと覚えている名作ドラマです。

老刑事は東野英治郎。金庫破りは石立鉄男。

ドラマは90分もの(土曜ワイド劇場)だったのでストーリーに膨らみをもたせ、水沢アキが東野英治郎の娘役で出演しました。

一方、石立鉄男の妻役は、俳優座養成所時代の同期、佐藤オリエでした。

深夜の室蘭殖産銀行に忍び込んだ石立鉄男は、防犯カメラを止め、金庫から300万円を盗み出します。

7年前にも、自分の設計を社長に盗まれた金庫の設計技師である石立鉄男は、心臓病の恋人のために金を盗みました。

7年後、今度はそのアリバイ証言をしてくれた恩人の療養所入居費用に、室蘭殖産銀行の金庫破りを行ったのです。

もっとも、それは恩人が死んだため全額を施設に寄付しています。

つまり、止むに止まれぬ事情で金庫破りを行った“義賊”であることを描いています。

一方、室蘭殖産銀行事件の報道を見た定年目前の老刑事・東野英治郎は、7年前に証拠不十分で逮捕できなかった事件は石立鉄男の仕業に違いないと考えます。

老刑事は仕事熱心な鬼刑事だったために、家庭は不遇でした。

そのことを娘の水沢アキに責められます。

そして、心臓の弱い子どもが金庫に閉じ込められるアクシデントが発生。

老刑事の定年はいよいよ数時間後です。

「奴はきっと来る」

この時点では逮捕する気満々です。

妻の佐藤オリエは止めましたが、石立鉄男は来ました。

時々逡巡しながらも、金庫を開けて子どもを救い出します。

そして、両手を差し出し“お縄”を頂戴しようとしますが、東野英治郎は佐藤オリエを見て水沢アキの罵倒を思い出し、「何のまねだ」と言って立ち去っていきます。

考えてみると短編集の中のひとつの作品ですから、比較的シンプルなストーリーです。

それを90分で展開したことで、老刑事と金庫破りのそれぞれの背景が丁寧に描かれて、良いドラマになりました。




『おそ松くん』でも翻案



翻案作品の中には、たとえばまんがの『おそ松くん』において、イヤミ刑事とチビ太の金庫破りが描かれています。


当時の石立鉄男は売れっ子で、レギュラードラマを掛け持ちしていましたから、単発のドラマはほとんど出演していなかったし、何より悪役は大変珍しいことです。

新劇出身の石立鉄男は、こうした、切羽詰まった葛藤をスケジュールを調整してでも演じてみたかったのでしょう。

『よみがえった改心』ご存知ですか。

オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1) - 大津 栄一郎
オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1) - 大津 栄一郎




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コメント 10

ヤマカゼ

心がホッとする作品ですね。
立石鉄男と東野英治郎どちらも渋い演技が光りますね。
昔、昔ですが見た記憶あります。
以前紹介のあった西遊記は豪華キャストの為か、amazonでは見れなかったです。釈迦如来の演技見てみたいのでレンタル探してみます。

by ヤマカゼ (2020-06-01 10:09) 

扶侶夢

オー・ヘンリーの短編集の中でも指折りの作品でしたね。でも『最後の賭け』は知らなかったです。それに『おそ松くん』でも翻訳されているなんて…赤塚不二夫も本当に粋な漫画家ですね。
by 扶侶夢 (2020-06-01 10:33) 

pn

おそ松くんの見たけどあれはよかったなぁ(^o^)
by pn (2020-06-01 12:05) 

kou

石立鉄男さん、いろんな出演作品を観てましたが、まだ亡くなった気がしません。
by kou (2020-06-01 12:21) 

十円木馬

石立鉄男のこの作品は知りませんでした。
これ以前、彼の出演するホームドラマは好きでよく
みていました。
彼の出演するTVドラマの中で、『雑居時代』は、
特に好きで今でも記憶に残っています。
by 十円木馬 (2020-06-01 14:28) 

skeptics

東野英治郎さんは、その頃水戸の御老公を演じられていたと思われます。娯楽時代からシリアスな刑事まで、芸域の広さを感じます。
考えさせられます。
by skeptics (2020-06-01 16:19) 

そらへい

石立鉄男さん、好きな俳優さんでした。
このドラマは記憶にありませんが、ストーリーはちょっと、「レ・ミゼラブル」を連想しますね。
by そらへい (2020-06-01 20:09) 

mau

オー・ヘンリー、読み返したくなりました。
by mau (2020-06-01 23:55) 

ナベちはる

>切羽詰まった葛藤をスケジュールを調整してでも演じてみたかった

自分の糧にしようという強い意欲を感じます。
by ナベちはる (2020-06-02 00:52) 

yokomi

オー・ヘンリーの短編集を注文しました(^_^;)

by yokomi (2020-06-02 22:30) 

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