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『群狼たちの真実』プロレスラーの人間性にフォーカスした暴露本 [スポーツ]

『群狼たちの真実』プロレスラーの人間性にフォーカスした暴露本

『群狼たちの真実』(門茂男著、角川文庫)をご紹介します。1985年発刊ですから、すでに一般の書店では入手困難で、Amazonマーケットプレイス(中古本)でしか買い求められない昔の本ですが、部屋を片付けていたら出てきたので、一気に読んでしまいました。



プロレスはお好きですか。

わたしは、“現在も”昭和40~50年代のプロレスファンですが、21世紀に入ってからはプロレス熱ががくんと下がり、ここ数年の動向はあまりよくわかりません。

プロレスラーの、技の使い方やバリエーション、コスチューム、ショーアップなどは、昭和40年代と現在では雲泥の違いがあるでしょう。

それでも、私はカビの生えた、すでに消えつつある僅かな資料でしか残っていない、昭和40~50年代のプロレスラーやプロレスの雰囲気が忘れられないのです。

理由は、異形の者の異形な生き方から、現在では全く感じない“人間臭さ”のドラマを感じさせるからです。

ゴールデンタイムで、流血戦を繰り広げた中継は今や昔の話。

プロレス同好会出身の大卒選手が、きれいな衣装で、いかにも相手の協力ありきで“華麗な”技を披露。

シーズンオフには、他のタレントと違和感なくバラエティ番組に出演する。

そんな「普通の人」のコンテンツには、感情移入のしようがありません。

力道山も俗人に描かれていた


さて、本書ですが、門茂男さん(1924年~1998年)は、プロレスラーのライセンス発行や、日本プロレスの選手権試合の管理、認定などを行う日本プロレスコミッションの事務局長でした。

同コミッション丸抱えだった日本プロレス(興業)が活動停止してからは、主にフリーのプロレスライターとして活躍しました。

通常、プロレス媒体に書くプロレスライターの記事は、プロレスラーをアスリートとして持ち上げる記事を書きます。

しかし、門茂男さんの書き物は、プロレスラーの人間性、それも、金銭欲や、他人を出し抜いて自分がいい思いをしたいという我欲にフォーカスした暴露記事を書きました。

暴露と言っても、門茂男さん特有の脚色が多分に含まれていましたが……。

力道山の場合


たとえば、力道山(1924年11月14日~1963年12月15日)といえば昭和20年代後半の「街頭テレビ」のプロレス中継が昭和史的にも有名で、プロレス関連だけでなく、一般のジャーナリズムにもこんなふうに書かれます。

敗戦に打ちひしがれる戦後の日本人を元気にした、日本プロレス界の父……と。

プロレスだけでなく、不動産やゴルフ場経営など、実業家としても辣腕を振るった人と。

が、門茂男さんに書かせると、門下生であるジャイアント馬場のアメリカでの稼ぎを拝借した人で、ジャイアント馬場に返済を求められると、最初こそ「馬場」と呼んでいたのが、話の途中で「馬場くん」になり、やがて「馬場さん」と弱気になったというのです。

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Google検索画面の画像に色付け

英雄・力道山をコケにする“新事実”ですが、ただし、門茂男さんが、何月何日にどこでそれを目撃したかは書かれていません(笑)

しかし、ジャイアント馬場が力道山に金を貸し、力道山の死後に会社(日本プロレス)から返済してもらったというのは多くの媒体で明らかなので、たぶんそういうやりとりはあったんだろうな、と思わせる裏話です。

もちろん、それを知ったところで、力道山の価値が今更下がるわけではなく、裏でも色々ある人だったんだなあというエピソードとして受け止めることができます。

人間は無謬万能ではありませんから、英雄ついては、逆に弱い部分、悪い部分を知ることで、人間探求としての陰翳を深め、その英雄部分にむしろリアリティを感じることができるのです。

大木金太郎の場合


このブログでも自伝をご紹介したことのある、大木金太郎(1929年2月24日~2006年10月26日)というレスラーがいました。

大木金太郎
Google検索画面より
金一・大木金太郎、“元祖韓流スター”の真実


韓国相撲の横綱で、同胞の力道山に心酔して日本に密入国したものの、すぐさま収容所送りに。

国外退去(韓国に戻される)になりそうだったのに、同胞の力道山が感激して救い出したというエピソードが有名です。

しかし、真実は、たんなる出稼ぎで横浜の魚河岸で働いていたところを、プロレスの話を聞いて「そっちで稼げるのなら」とプロレスに方向転換したに過ぎず、力道山が同胞であることは入門後に知った、と門茂男さんは暴露しています。

そもそも力道山は、自分の出自は徹底的に隠していました。

でも、大木金太郎のレスラー生活を振り返ると、自身が本当に前者のエピソードであると思いこんでいたフシがあり、その「記憶違い」を責めるよりも、そうなりきった生き方をむしろほほえましく感じるのです。

単なる悪口ではなく人間を描いた暴露本を


実は、プロレスファンの間でも当初、門茂男さんは“夢を壊す”苦々しい書き屋さんでした。

しかし、門茂男さんが暴露本で論ったレスラーは、逆に愛すべき人たちに見えてしまうことに気づき、今では昭和のプロレスや、プロレスラーを語れる貴重な書籍になりました。

これは、俳優やアイドル歌手の華やかな部分だけに憧れるファンに比べると、異様なことかもしれません。

しかし、ヒューマンインタレスト、という意味では、プロレスファンはその人達よりも奥が深いと思います。

単なる悪口ではなく、どこかに愛嬌とプロレス愛があるからだろうと思います。

そういう意味では、暴露本の鑑といっていいかもしれませんね。

そんな門茂男さんが亡くなって21年。

3年前には、門茂男夫人だった方が、ヤフオクにWWA世界ヘビー級選手権のベルトを出品していました。

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門茂男さんの形見、というより昭和プロレスの形見のようなものです。

今や時代も令和となり、当時の語り部も減り、資料も少なくなっていきます。

プロレスに限らず、一見、悪しざまに書いているようでいて、でも書かれた人に興味を抱かざるを得なくなるような、奥の深い筆力の暴露本を読んでみたいものです。


群狼たちの真実 (角川文庫―門茂男のザ・プロレス (6012))
群狼たちの真実 (角川文庫―門茂男のザ・プロレス (6012))

群狼たちの真実 (角川文庫―門茂男のザ・プロレス (6012))

群狼たちの真実 (角川文庫―門茂男のザ・プロレス (6012))

  • 作者: 門 茂男
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1985/12
  • メディア: 文庫



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コメント 7

扶侶夢

>一見、悪しざまに書いているようでいて、でも書かれた人に興味を抱かざるを得なくなるような、奥の深い筆力の暴露本を読んでみたいものです。

同感です。暴露本のコンセプト自体が昔とは変わってしまったみたいですからね…。以前は確かに人間味がありました。
by 扶侶夢 (2019-11-28 12:23) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

力道山が活躍していた頃のプロレス、人間臭さが横溢していてそれが魅力だったなということ、あらためて思いだしました。

その人間臭い日本人レスラーが、苦戦をしながらも外人レスラーに勝利してゆく姿、そこに戦後復興の道を辿り始めた当時の日本において、私も子供心に英雄の輝きを感じていた、そうした記憶が蘇って来ました。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-11-28 13:00) 

Boss365

こんにちは。
力道山が活躍していた時代は知りませんが、色々な話あり真実どうかも判断出来ない事象が多いですね。「暴露本」の分類も小生の中では「真実ではない」分類になっています。現在では著作の地位も如何わしい?感じで書き手が少ないですね。昔の方が言論の幅・自由があったのかもです!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2019-11-28 17:58) 

pn

プロレスは門外漢なのであまり語れませんが「今のプロレス」に感情移入出来ない心情はよく分かります。
西部劇や戦争物の映画はどんどんリアルに描いて出来は良いんだけど昔の作品に比べて味が無いって言うかなんて言うか。
泥臭さ人間臭さが見え隠れしていたんだと思うんですよ昔の映画って。
by pn (2019-11-28 20:57) 

なかちゃん

昭和40~50年代のプロレス、ボクもそちらの方が断然好きです。
金曜夜の中継を楽しみにしていました。
今のプロレスは、カッコ良すぎてつまらないですね(^^;

by なかちゃん (2019-11-28 23:17) 

ナベちはる

>ヤフオクにWWA世界ヘビー級選手権のベルトを出品
そんなとんでもないものをヤフオクに出品とは、凄すぎて想像できないです…
by ナベちはる (2019-11-29 00:26) 

ヤマカゼ

年末に向けて、お家の片づけで懐かしい本が出てきました。を絵に書いたようですね。
by ヤマカゼ (2019-11-29 07:04) 

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