驚愕!!ふとん叩き引っ越しおばさんの知られざる真実 [社会]
奈良騒音傷害事件を描いた、『驚愕!!ふとん叩き引っ越しおばさんの知られざる真実』(画:桐野さおり/原作:有田万里、ユサブル)を読みました。ワイドショーで、「引っ越し、引っ越し」と大声で叫ぶ騒音おばさんとして何度も放送されて有名になった話です。
奈良騒音傷害事件は、奈良県生駒郡平群町の主婦が、約2年半にわたりユーロビートやヒップホップ、R&Bなど大音量の音楽を流すなどの方法で騒音を出し続けた事件です。
布団叩きだの大音量だのというから、てっきり迷惑防止条例かと思われがちですが、傷害罪で実刑がうたれた(2007年最高裁)事件だったのです。
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ザ・女の事件スペシャル 驚愕!!ふとん叩き引っ越しおばさんの知られざる真実 スキャンダラス・レディース・シリーズ (桐野さおり/有田万里) が、紀伊國屋電子書籍ストアで販売開始されました。https://t.co/Iw3uulB27z
— 紀伊國屋電子書籍Kinoppy新刊情報 (@kinokuniyanew) July 28, 2019
あらすじ
本書は、事件に対して公平に報じたいという新米の週刊誌女性記者の視点でストーリーが進みます。
女性記者は、「騒音おばさん」についての記事執筆を命じられますが、現場の奈良で話を聞こうとすると、「そんなお金と時間はない」と編集長に却下されます。
しかし、「おばさん」の姿をワイドショーが報じるのは、そもそもプライバシーの侵害にあるのではないかと疑問をいだいた記者は、自費で奈良にとんで話を聞くことにします。
ワイドショーは、「おばさん」が一方的に悪く報じられていますが、おばさんの近所の評判は決して悪くなく、事件についてもおばさんを悪く言わない複数の証言を得ます。
実は「おばさん」は、夫や2人の子どもが小脳の萎縮する難病で、子どもたちは早逝しています。
トラブルの「被害者」である相手は、「おばさん」がいうところの「拝み屋」、すなわちカルト宗教の信者でした。本書では「S夫妻」とされています。
相手が、自宅の庭に庭園灯を取り付けたことで、闘病中の娘が「まぶしい」というので、なんとかならないかと「おばさん」が「お願い」したところが争いの始まりでした。
「S夫妻」は、「おばさん」の悪口を近所に言いふらし、仔細なことで揉めるようになりました。
といっても、攻撃するのは「S夫妻」の方です。
人を使って「おばさん」のもとに押しかけ、「出ていけ」と団交まがいのことまで行いました。
本書によると、当初は否定していたものの、公判ではその事実があったことを認めているコマがあります。
団交ってご存知ですか。
学生運動がまだ盛んだった頃、学生たちが、気に入らない教授などを連れてきて、集団で吊るし上げる「交渉」がありました。
私は、主張以前にあのやり方が生理的に苦手で、それだけで自治会の運動などを嫌悪していました。
それでブチ切れた「おばさん」は、2階にベランダを増築して、CDラジカセと布団たたきによる抗議が始まりました。
そこには、闘病中の家族を守りたい、という気持ちがあったのは想像に難くありません。
CDラジカセの大音量も、「S夫妻」の盗み聞き対策だったと「おばさん」は後の公判で述べています。
一方、「S夫妻」は、監視カメラを設置。
そこで撮影したことが、ワイドショーで放送されたわけです。
本書には、こう解説されています。
「マスコミに流布した映像では、美和子がひとりで喚いているように見えるが、実は争うS夫妻の声を編集でカットしていると思われる」
そのさなかの平成15年に闘病中だった次女は早逝
当時の「おばさん」が、「いかに精神的においつめられていたか想像に難くない」
「S夫妻」が「ただ一方的に被害をこうむっていただけかといえば疑問も残り……」
「おばさん」家の「鍵穴にボンドを流し込んだり、車や家の傷や落書きを「おばさん」の仕業に見せかける等の工作があったと聞く」
平成17年には、「おばさん」は「S夫妻」の門柱の留め具を破損した容疑で逮捕。
しかし、それは「おばさん」によると濡れ衣であり、「おばさん」はいよいよ、「自分のケンカは、自分でケリつけたる」と気持ちを硬化。
傷害容疑で逮捕されるまで、孤独な戦いを行いました。
記者はそう記事をまとめましたが、上司は記事をボツにします。
しょせん、近所の人が「実は……」と話してくれたことは、裏付けのない個人的な意見に過ぎないからというのです。
冤罪でもない限り、マスコミは表に出た事実を書くしかない。
裏の事実を暴くなら、時間をかけて調査しなければ、ライターの「偏った主張」と扱われるだけというわけです。
裁判では、「おばさん」は反省を述べず、なんと実刑に。
「おばさん」の孤独な戦いは、「それなりの信念に支えられたものでした。でも市民社会という公共の場では、その行為は公害でしかないのです」と、記者は寂しく記事をまとめました。
孤独に戦わないこと
ということで、個人的に感じたことは
1.マスコミのプライバシーの侵害と編集(?)
2.「わからずや」の土俵に簡単に乗るな
の2点です。
本書のセリフとして、「マスコミは表に出た事実を書くしかない」とありますが、「S夫妻」の撮影動画をセンセーショナリズムから都合よくマスコミが編集したのだとしたら、それは「事実」ではなく「改ざんによる虚偽」であり、許されないことです。
「おばさん」が「拝み屋」と唾棄したそうですが、「S夫妻」の行為が、カルト宗教の行動原理であるかどうかはわかりません。
しかし、「団交」を行ったり、動画を撮影してメディアに渡したりと、自分が有利になるように影で工作する人たちであることは間違いありません。
そういう人と正面から戦うという気持ちはわからないではありませんが、その時間とエネルギーが「おばさん」自身の人生にとって得策かどうか、というとまた別問題です。
「おばさん」は、他人を当てにせず孤独の戦いを行いましたが、今だったら、リアルのご近所だけでなく、ネットで知恵を借りることもできますから、いろいろな人に相談したほうが良いと思いました。
それにしても、「おばさん」には同情の念を禁じえません。
「S夫妻」もそうですが、人望があるとも思えないのに「同調者」を集めることには長けていて、さも多くの人が自分に賛成してくれている、という体裁を作りたがる人っているんですね。
そうすると、印象的には、「孤立」している方が悪いように見えてしまう。
しかし、人間というのは残念ながら欲得と思い込みで動く憾みがあります。
もとより同調者が多いことが、その人が正しいことの証明にはなりません。
「おばさん」が実刑に至ったのは「やり方の間違い」でしたが、家族を守りたい、言いがかりや冤罪には屈しない、という信念は評価したいと思います。
改めて、リアルな真実にアプローチせず、センセーショナリズムで一方的な「悪役」を作るマスコミには困ったものです。
そして、その尻馬に乗って騒いだくせに、あとになって少しずつ本当のことがわかってくると、手のひらを返して「マスゴミ」呼ばわりする連中はもっと困りものだと私は思います。
驚愕!!ふとん叩き引っ越しおばさんの知られざる真実/ザ・女の事件スペシャルVol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)
驚愕!!ふとん叩き引っ越しおばさんの知られざる真実/ザ・女の事件スペシャルVol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)
- 出版社/メーカー: ユサブル
- 発売日: 2019/06/29
- メディア: Kindle版
物事を一方的に捉えず、違う角度からも見て・聞いて判断するべきだなーとこの記事を拝読してつくづく感じます。
by Rinko (2019-10-09 10:04)
「表に出た事」が真実とは限らないんだけどね。
おばさんを悪く言わない人もいたのにそこらへんはスルーな訳でしょ?
いじめはダメとか言いながら報道側が偏った意見流してるんだから洒落になって無い。
by pn (2019-10-09 13:07)
こんにちは!
ごみ屋敷、鳩に餌やりおじさん、違法釣り
色んな輩がいますね!
by Take-Zee (2019-10-09 15:31)
映像の過激さにとらわれてしまう恐さを感じます。
by ハマコウ (2019-10-09 18:57)
そんな出来事もあったんですね。
どちらが悪いのか分からない報道ですね。
by ヨッシーパパ (2019-10-09 19:50)
先日の「林ますみカレー事件」を紹介していただいて、すぐに読み、ついでにこれも読みました。
あのテレビニュースで一部分をみて異常だと思いましたが、隣人の方にも、問題があったかもしれない事には想像もつかなかったです。
by わたし (2019-10-09 20:36)
「引っ越しおばさん」、当時はかなり話題に挙がっていましたよね。
あたかも「引っ越しおばさん」だけを悪者扱いしていた報道、今となってはおかしいなと思います。
by ナベちはる (2019-10-10 00:24)
報道の仕方によっては
「S夫妻」の方が悪いように見えますよね
マスコミは片方を悪く表現して
勧善懲悪な報道をした方が視聴率が良いんでしょうね
by 藤並 香衣 (2019-10-10 00:52)
あのTVの映像だけを見ると、マスコミの悪意を感じます。
by ピストン (2019-10-10 01:24)
一番の加害者はその隣人だったわけですね。
きちんと追求した新米さん、よく頑張りました。
こういうのこそもっと外に向けて発信すべきと思いますけどね。
by なかちゃん (2019-10-10 05:54)
切り取り部分だけを報道するマスコミの取材は問題ありますね! でも本件は裁判でも有罪となったのだから罪はあるのでしょう。
by 我流麺童 (2019-10-11 06:26)
大阪に近い奈良で起こった事件なので、しかも布団たたきおばさんのインパクトが強烈すぎて、誰もがおばさんが悪いと思いましたね。その後は、報道されることもなく知りませんでしたが、そんな裏があったとは驚きです。
by ようこくん (2019-10-11 12:56)
法を犯したら負けですが、相手に法を犯させるよう
追い詰める人が「被害者」というのは
何か解せないですね。
by 犬眉母 (2019-10-14 00:32)